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第66話

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 僕の剥け亀頭に鼻先をギリギリまで近づけ、ブライトが話し始めた。

「寝物語で、おまえは、これまで相手は亡くなったこの家の主人だけだったと言っていた。それも、入れられたのは指だけで、肛門はまだ処女同然だと。だから俺に犯されてうれしいと。だが、違う。このフェロモンは、あまりにも強烈過ぎる。この分だと、俺たちアルファの男だけじゃなく、ほかの種族にも作用するはずだ。さっきの獣人族に影響しなかったのはなぜかわからないが、少なくとも、人間がこの匂いを嗅いで正気でいられるとは思えない。たとえば、村に住む、ベータの住人たち。彼らもこの匂いに惹かれたんじゃないか? そう。つまり、レム、おまえは、処女どころか、村人たち全員の公衆便所みたいな存在だったのではないのか? 言葉は悪いが、肉便器というような…」

「そ、それは…」

 グサッ。

 そんな擬音すら、聞こえた気がした。

 ブライトの言葉が胸に突き刺さり、開いた傷口からどす黒い記憶が溢れ出す。

 普段は封印している僕のもうひとつの人格。

 黒歴史を一手に背負ったペルソナが、羽根を毟られた小鳥のように振る出す。

 そうだ。

 僕は普段、自分自身にも嘘をついている。

 僕に”用”があると村人の誰かが訪ねてきてマサラおばさんにお金を渡す時、僕はもうひとりの自分と入れ替わる。

 そして裸に剥かれ、相手が満足するまでヤギ小屋で全身を弄ばれた挙句、快感にのたうちまわるのだ。

 まだ未熟な裸体を曝け出し、乳首とペニスを勃起させ、狂ったように、浅ましく…。

 そして、必ず最後には、気が遠くなるような恍惚感と、あの、ドクンドクンという、脈動が…。

 マサラおばさんがそんな僕を毛嫌いするのも無理はない。

 でも追い出されないのは、僕がこの村にとっての必要悪だから。

 ケビンおじさんの調教によって作り出された、村人たちの性欲処理の大事な道具だから―。

 おじさんは、捨て子だった僕がオメガとわかった瞬間から、この用途に使おうと心に決めたに違いない。

 今思えば、あの人は、やさしい養父を装った、とんでもない悪人だったのだ…。

 だからなのか。

 変に醒めた意識で僕は思う。

 だから、こんなふうに村が獣人族に全滅させられても、僕は何も感じないでいられるんだ…。
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