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ヤミイ

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「これかしら?」
 塁が壁の隠し戸棚から取り上げたのは、耳かきに似た形をした極細の器具だった。
 艶のある黒色のそれは、塁の指につままれて優雅な曲線を描いている。
「この器具を、尿道に突き刺してやればいいわけね? それで、これはどんな機能を持ってるの?」
「まずひとつは、アナルスティックと同じように、スイッチを入れれば、全体が細かく振動するってこと。振動は10段階に分かれてるし、操作は遠隔だから、相手の状況を見ながら振動の強弱を加減できる。それともうひとつ、大切な機能があってね。ほら、先端を見ると、中が空洞になってるのがわかるでしょう? それは、いわば、ストローの代わりにもなるってわけ。十分に刺激を与え、被験者を絶頂にまで追い込んだら、タイミングよく、その先を咥えるの。そうすれば」
「一滴もこぼさず、新鮮な精液を吸うことができる…」
 ジュリの言葉を引き取った塁は、夢見るような表情をその汗まみれの顔に浮かべている。
 止まった塁の手の中で、僕は先生の勃起ペニスがびくんと反応したことに気づいた。
 先生のペニスの反応は、密着した僕のペニスの裏筋に、ダイレクトに伝わってくるのである。 
 ジュリと塁の会話の内容に、先生が高ぶりを覚えている何よりの証拠だった。
 究極のナルシストでM男の先生は、自分が恥ずかしい目に遭わされれば遭わされるほど欲情する。
 ジュリによると、先生は無痛症と言って、痛みを感じない体質らしい。
 だからよりいっそう、拷問めいた過度な凌辱が好みに合うのだろう。
「けれど、大丈夫なの? いくらふたりが異常性欲者でも、こんなものが本当に尿道に入るのかしら? ホームドクターとしては、あまりおすすめできない気がするのだけれど…」
 興味深そうに手にした尿道スティックを見つめていた塁だったが、ふと己の立場を思い出したのか、そんな怯んだ様子を見せ、僕の肩越しにジュリのほうに目をやった。
「心配いらないわ」
 こともなげに応えるジュリ。
「このふたり、もう、カテーテルオナニーまでしてるもの。しかも、大学の図書館で。あなたの後輩から動画入りで報告をもらってる」
 柚葉だ。
 カテーテルオナニーに協力してくれたのは、図書館で知り合ったあの地味な女子大生、柚葉である。
 なるほど、彼女もジュリの一味だったというわけか。
 僕は、カテーテルを使って、先生とお互いの精液を飲み合ったあのひとときを思い出した。
 ああ、あれをまた、体験できるのだ…。
 しかも、今度は先生とふたり、凌辱される側となって…。
「だから塁、あなたはそれをふたりのペニスにぶっ刺して、二人分の精子を飲めばいい。お口の中で混ぜれば、ネクタルも真っ青な美味を味わえるはずよ」
「ネクタル…神の酒…」
 ジュリのそのひと言を耳にするなり、塁の瞳に、めらめらと淫靡な炎が燃え上がったようだった。

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