バナナの皮を剥くように ~薔薇色の少年~ 

ヤミイ

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190 募る恋情⑯

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 そうして、どれほどの時が流れたのか…。

 めくるめく快感の波に飲み込まれ、いつしか気を失っていた僕。

 その僕が次に気づいたのは、誰もいない脱衣所の床の上だった。

 部屋の隅に置かれた扇風機が回る音だけが聴こえる空間の中、僕は全裸で床に横たわっていた。

 躰は濡れたままで、股間から太腿にかけては、自ら放出した精液がこびりついている。

「ヨミ…?」

 上体を起こし、見回してみても、ヨミの姿はなかった。

 まだ浴場の中にいるのだろうか?

 よろめく足で仕切りのすりガラスの壁に辿り着き、扉を上げて、中を覗いてみた。

 が。

 やはり、どこにも人影はなかった。

 中央にある瓢箪型の湯船の水面は穏やかで、誰かが中に潜んでいる気配もない。

 失望のあまり肩を落として脱衣場に戻った時だった。

 廊下側の扉が乱暴に開き、Tシャツにショーパン姿の若い女が姿を現した。

 この屋敷で若い女と言えば、むろん、アヤカである。

 アルバイトで希京の秘書をしているというが、住み込みなのだろうか。

「いつまで入ってんの? そろそろ掃除の時間なんだから、早く出てよね」

 上がってくると、僕を足で払いのけるようなしぐさをした。

「ご、ごめん」

 飛び下がり、精液にまみれた下半身をあわててタオルで隠す。

 とー。

「あんた、また出しちゃったの? さっきあんなに射精させられたっていうのに、信じられない」

 くさそうに鼻を指でつまんでアヤカが言った。

「ヨミは?」

 話題を変えるためにも、おそるおそる聞いてみた。

「ついさっきまで、一緒だったんだけど」

「お風呂の中でもやってたってわけ? 道理でね」

 僕のふくらはぎを伝う白濁液を軽蔑のまなざしで一瞥し、アヤカが言う。

「でも,残念でした。夜は主人にご奉仕する時間なの。あんたみたいな新人の出る幕じゃない」

「ご奉仕って…」

 ドキリとした。

 苦いものが口の中に溢れてくるのがわかった。

「誰が、誰に…?」

「決まってるでしょ? ヨミが、旦那様によ」

「奉仕って、な、何を…?」

「そりゃあ、色々じゃない? 男同士の気持ちいいこと、色々」

 意地悪い笑みを口元に浮かべて、アヤカが上目遣いに僕を見た。

「妬ける?」

「い、いや、そういうんじゃ、なくって」

 懸命にとぼけようとしたけど、無理だった。

「じゃあ、なあに? ふたりなら、たぶん今頃、地下室だよ? 鍵は開いてるから、見たけりゃ見られるけど」

「ち、地下室…?」

 いつぞやのことを思い出す。

 偶然迷い込んだ地下室で見た、全裸で悶えるヨミ。

 あれは、希京にされていたということなのか…?

「行くの?」

 アヤカが興味津々といった口調で訊いてきた。

「い、いや、ま、まさか…」

 横を通り過ぎようとすると、いきなり腰に巻いたタオルをはぎ取られた。

「うそつくなよ。あんた、また、立派に勃ってるじゃないか、そのくされチンポコが」

「や、やめろよ…」

「ヨミのこと、好きなら、悪いことは言わない。見ない方がいいよ」

 アヤカはにやにや笑いをやめようとしない。

「ど、どうして…?」

 嫌な予感に、頬が引きつるのがわかった。

 怯える僕を脅すように、顔を寄せてきて、アヤカがささやいた。

「だって、あいつに何されてるか見たら、あまりの下劣さに、きっとヨミのこと、嫌いになっちゃうからさ」
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