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177 募る恋情③

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 僕はそのまま床にへたりこんだ。
 
 下腹には出したばかりの白濁液が水たまりをつくり、まだ勃ったままの肉棒をも濡らしている。

 空しかった。

 どうしようもない虚無感が、胸の底に広がっていくのがわかった。

 射精直後の時間を、俗に賢者タイムという。

 すべての欲望から解き放たれて、精神が澄み渡るからである。

 確かに燃えるような欲情は生温かいミルクとともにあふれ出た。

 でも、僕の抱えた虚無の底には、熾火のようにくすぶる何かが残っていた。

 それが今さっき暴発したナルシステイックな感情なのか、ヨミに対する恋情なのか、そこのところがわからない。

 もしかして、僕とヨミは似ているのかもしれない。

 ふと、そう思った。

 細マッチョで色黒の僕に対して、ヨミはアルビノで華奢な体格をしている。

 顔つきも、僕がどちらかというと野性的な容貌であるのに対し、ヨミはガラス細工のように繊細で中世的だ。

 でも、その皮膚の下には、どこか相似形の骨格が透けて見えるような気がしないでもなかった。

 なにせ父親は同じなのだ。

 たとえそれがあの蟇蛙に酷似した醜男の遺伝子から来たものだとしても、似ているところがあるのは別におかしくはない。

 そう考えると、先ほどの性欲の暴発もわかる気がした。

 僕は鏡の中の自分自身にヨミを見、そのヨミの中にまた自分を見て、突発的な恋情に襲われてしまったのだ。

 精液まみれになりながらも、股間の生殖器官はまだ猛ったままだった。

 半分剥けかけた包皮を首根っこまでめくり、怒張した亀頭を見やる。

 ハート形をした赤いその部位は粘液に包まれててらてら光り、鼻面の縦の切れ込みからミルクを滴らせている。

 右手で握ったまま立ち上がり、もう一度、鏡に全裸体を映してみた。

 じっと見つめていると、僕自身の逞しい躰の下に、うっすらとヨミの華奢な裸身の輪郭が浮き上がってくるのがわかった。

 ああ、ヨミ…。

 自然に右手が動いていた。

 前駆液と精液でヌルヌルになった亀頭はひどく滑りがよく、力を入れて擦るとすぐに気持ちよくなってきた。

 股が、開いていく。

 いやらしい角度に、腰が突き出された。

 快感が高まるにつれ、嵐の海のように下腹がひくひくと波打ち始める。

 手のひらの中の分身は、血を噴き出しそうなほど怒張し、しかも、熱した鉄の棒並みに熱くなっている。

 左手で胸をまさぐると、分厚い胸板の端と端で乳首がグミのように勃起していた。

 左手の指を口に突っ込み、舐める。

 人差し指と中指をちゅうちゅう吸いながら、獰猛さを取り戻した器官を扱きに扱く。

 僕、まだ、出せそうだ…。

 そう、心の中でつぶやいた、その時だった。

「和夫ったら、まだ足りないの?」

 湯気の向こうから、突然クスクス笑いが聴こえてきた。


 
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