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162 見世物にされて④

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 指の形に膨張したコンドームの先っちょが、ぷくうっと丸く風船のように膨らんだ。

 コンドームはその多くが先端に精液溜めを備えているのである。

「うひゃあ、すごい量。今にもあふれてきそうだよ」

 嬉しそうにヨミが赤い目を輝かせた。

「何か容れ物くれないかな?」

「これでいい?」

 すかさずアヤカがワイングラスを差し出した。

「OK。ありがとう」

 受け取ったグラスに、ヨミが中身のいっぱいつまったコンドームを近づける。

「いくよ、ほら」

 口の下あたりをつまんでいた指を離すと、

 どぼどぼどぼっ。

 音を立てて白濁液が高級そうなワイングラスの中に滴り落ちた。

 草いきれのような青臭い匂いが、つんと鼻をつく。

 春先に香る沈丁花の花の匂いにも似たそれは、嗅ぎ慣れた僕の精液の臭気である。

「思った通りだ。すごく濃い」

 グラスを掲げ、溜まった精液を電灯の光に透かしながら、感心したようにヨミが言う。

「匂いでわかるよ。こんな強い匂いのザーメン、あたしも初めてだもん」

 手の甲で鼻の頭をこすってアヤカがうなずいた。

「アンモニアと恥垢の匂いも混じってるのは、仮性包茎だから、まあ仕方ないか」

「それはいいっこなし。僕のも最初はそうだったんだから」

「ここに住むなら、矯正してやんないとね」

「いや。こいつはこのままでいい」

 ふいに横から口を出したのは、それまで黙って事の成り行きを眺めていた希京だった。

「皮かぶりにはまた別の楽しみ方もある」

「確かに」

 ヨミの瞳が妖しく光る。

「仮性包茎はとっても感じやすいからね。少しの愛撫ですぐイッチャウから面白い」

 三人の会話に、僕は耳朶まで赤くなった。

 恥ずかしくて、顔が熱い。

 彼らが話題にしているのは、すべて僕のことなのだ。

「ところで父さん、これ、どうする? もし要らないなら、僕、飲んでいいかな?」

 ワイングラスを揺らしながらヨミが希京に言うと、

「好きにしろ」

 蛙男は不機嫌そうにそう答えただけだった。



 

 
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