バナナの皮を剥くように ～薔薇色の少年～

109 耐え難き誘惑⑲

「これ、なんて言うか、知ってる？」

　軽く右手に力を込めて、ヨミが訊いてきた。

「･･････」

　僕は答えなかった。

　その答えを知らないからというより、気持ち良さのあまり、一時的に口がきけなくなってしまったのだ。

　自分以外の人間に手に性器を委ねる。

　しかも、勃起したまま、もう一本の性器と一緒に、握られて･･･。

　それはむろん、僕にとって、初めての経験だった。

　これまで味わったことのない、異様な感触とでもいえばいいのだろうか。

　あああ･･･。

　思わず、うっとりしてしまう。

　異様は異様でも、それは明らかに、快感の一種だった。

「兜合わせ、って言うんだよ」

　ゆっくり右手を前後に動かしながら、ヨミが言った。

「く･･･」

　僕は呻いた。

　動かされることで摩擦が生まれ、快感が一気に倍増したのだ。

　包皮が剥けて、濡れた亀頭の裏筋が露出し、ヨミの勃起ペニスに擦られる。

　そいつが、涙が出るほど、気持ち、いい。

「ほら、亀頭ってさ、真横から見ると、兜に似てるでしょ？　だからそう呼ばれてるんだと思うけど」

　兜合わせ･･･。

　言われてみれば、ぴったりのネーミングだ。

　それにしても、この世にここまで背徳的な行為が、存在したなんて･･･。

「僕ら、お似合いのペニスだね」

　ヨミが扱きを止め、手のひらを開いてみせた。

　寄り添った二本の肉棒が、目に入る。

　あまりにいやらしいその眺めに、僕は赤面した。

　薄い薔薇色をした美しいヨミの器官に、浅黒く、黒光りした僕の器官がめり込んでいる。

　長さや太さは双子のように同じなのに、見た目がずいぶん違うのだ。

　まるでそうー。

　天使と悪魔。

　美女と野獣のようにー。