バナナの皮を剥くように ~薔薇色の少年~ 

ヤミイ

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74 虚ろな虜囚④

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 眼窩から半ば飛び出た希京の眼には、あからさまな侮蔑と憎しみの色が浮かんでいる。

 僕は肩を震わせ、うずくまるしかなかった。

 言いたいことは、わかる。

 息子の僕が言うのもなんだが、母はそういう人だったのだ。

 妻とか母親という社会的役割にはまるでそぐわない、欲望のままに生きる女。

 最期の時もそうだった。

 母の死に場所は、駅裏のラブホテルのSMルーム。

 しかも、顧客である男性の腹の上。

 男の腹上死というのは下ネタで聞いたことがあるけれど、女の腹上死なんてシャレにもギャグにもなりはしない。

 だが、そいつを身をもってやってのけたのが、僕の母なのだ。

「まあ、明子だけを責めるのも酷というものかもな。その後、嫁にした涼子も同類だった。涼子というのは、ヨミの母親だ。ヨミにつけた家庭教師と浮気したんで、5年前に追い出してやったよ。考えてみれば、ヨミのやつも、おまえに似たところがあるようだ。あれがおまえを気に入ったのも、そこかもしれぬ。同類の女から生まれた変態性欲者同士、惹かれ合うものがあるのだろう」

 希京は相変わらずのだみ声だが、そこに過去を懐かしむような響きが混ざり始めている。

 明子、涼子というふたりの悪妻のことを思い出し、懐かしさを感じているのだろうか。

 ともあれ、これでわかった。

 通夜の夜、ヨミの発した言葉の意味が。

 家庭教師と不倫して家を追い出されたというヨミの母、涼子。

 その性向は、確かに死んだ僕の母に似ているようだ。
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