上 下
74 / 184

73 虚ろな虜囚③

しおりを挟む
 希京の言う通りだった。

 見る間でもなく、感触と匂いで分かる。

 握った右手の隙間から、糊のような液体がにじみ出ていた。

 生温かい、べとべとする体液だ。

 自分でも、閉口するほどの量だった。

 ーいったい、何度出せば気が済むのだー

 その言葉が、耳に痛い。

 しかも、漏らしたばかりだというのに、勃起はいっこうに収まろうとしない。

 握った右手からはみ出た陰茎を、希京は意地の悪い目で見つめている。

「俺がどうして明子とおまえを捨てたか、教えてやろうか」

 股間を押さえて震える全裸の僕をじろじろ眺めながら、希京が言った。

「それは、あいつがとんでもない淫乱女だとわかったからだ。おまえが生まれてすぐだった。あいつは、アパートの隣の部屋に住んでいた大学生の男を部屋に連れ込んで、こともあろうに真昼間から、真っ裸で上に乗っかり腰を動かしていた。赤ん坊のおまえが寝ているすぐ傍でな。それでも俺は3年我慢した。まだおまえは幼かったし、明子のことを愛していたからだ。だが、あいつは何度でも同じ過ちを繰り返した。別れさせてもすぐに、とっかえひっかえ男に手を出して、アパートで、ラブホテルで、相手の家で、情事を繰り返した。今思えば、あれは病気だったのかもしれない。そして15年前のことだ。ついにあいつは、当時俺が勤めていた会社の上司にまで手を伸ばし、不倫関係に陥った。関係は相手の妻にばれ、裁判にもなった。俺があいつに心底愛想を尽かしたのはその時だよ。示談金を全額肩代わりしてやる代わりに離婚を承諾させた。まあ、おかげで、その後、あいつをモデルにして書いた官能小説で新人賞をとれたのだから、満更悪い経験でもなかったかもしれんがな。とにかく、おまえの母親が身をもって教えてくれたのは、女の性は底なし沼みたいに恐ろしいものだということだ。正直、あれ以来、俺は女という生き物が怖くなった」
 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

恋人契約~愛を知らないΩがαの愛に気づくまで~

BL / 完結 24h.ポイント:6,283pt お気に入り:830

デンマが走る!

BL / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:0

不感症の僕が蕩けるほど愛されちゃってます

BL / 完結 24h.ポイント:340pt お気に入り:1,186

回々団地

BL / 連載中 24h.ポイント:547pt お気に入り:15

魔女の弟子≪ヘクセン・シューラー≫

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:29

欲深い僕たち。

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:67

【BL】紅き月の宴~Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。

BL / 連載中 24h.ポイント:2,997pt お気に入り:653

聖獣王~アダムは甘い果実~

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:132

狂ったアトラクションは少年達に笑いを届ける

BL / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:13

処理中です...