バナナの皮を剥くように ～薔薇色の少年～

72 虚ろな虜囚②

　どこだ？

　ヨミはどこへ行った？

　そして、蒲団の中に潜んでいた、もうひとりの、アイツは･･･？

　よろめきながら、乱れた寝具に近寄った。

　めくれた掛布団。

　皺になった敷布団のシーツ。

　触ってみると、まだ温かかった。

　そして、ほのかに薫る、花のような匂い･･･。

　僕は確信した。

　やっぱり、あれは現実だったのだ。

　僕の妄想なんかじゃない。

　ヨミは確かにここで、今さっきまで誰かと痴態を演じていたのだ。

　誰かー。

　写真集の中の一枚の写真が、脳裏にフラッシュバックした。

　ヨミそっくりの、雪石膏色の肌と、銀の髪を持つ美少年。

　ふたりで、互いの性器を咥え合っていた･･･。

「くそっ」

　思わずそう悪態をついた時だった。

「哀れだな」

　突然、廊下側の襖が引き開けられたかと思うと、耳障りな嗄れ声が耳朶を打った。

「あ」

　振り返った僕は、蒼ざめた。

　月光を背に、土偶みたいな形の黒い影が仁王立ちになっている。

「しょうこりもなく、また射精してしまったのか。ここへ来てから、もう何度目だと思っている？　まったく、呆れたものだ。さすが、あの売女の産んだ子だけのことはあるというものだ」

「こ、これは･･･」

　僕は両手で股間を押さえ、その場にうずくまった。

「隠してもダメだ。匂う、匂うぞ、精液の匂いが、な」

　中に踏み込んでくると、全裸でうずくまる僕を見下ろし、からかうような調子で、比良坂希京が言った。