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47 選択⑥

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「そんなこと言っていいのか?」

 希京の眼が陰湿な光を帯びた。

「きさまが先ほど居間で何をしようとしたのかも、俺にはわかってるぞ」

「え…?」

「見ただろう」

「・・・・・・」

 僕は顔を伏せた。

「写真集だよ」

 希京のだみ声が耳に痛い。

 来た。

 やっぱりあのことか。

 でも、どうして・・・?

「あれは、ヨミの18歳の誕生日を祝って作ってやったものだ。知り合いの出版社に頼んでな。それを盗み見て、きさまはどうした?」

「べ、別に、どうも…」

 ペニスを握る手が震えた。

 精液でグチョグチョになった手のひらの中で、僕のその部分はまだガチガチに硬直したままだった。

 ウソだった。

 あの時僕は、我慢できず、誰もいないのをいいことに、下半身を露出させ、写真集をオカズにして…。

 そうだった。

 僕は、あの時も、射精してしまったのだ。

 希京の言葉が正しいとすると、気絶する前に一回出していて、あれが二回目・・・。

 そして今、またしても僕は出してしまったということに・・・。

 希京が驚くのも無理はない。

 ああ、なんということだろう。

 わずか二時間ほどのあいだに、僕は三度も射精してしまい、しかもまだ、今も勃起し続けているのだ・・・。

「しらばっくれてもダメだ。きさまがあの時、ヨミの写真集を見ながら何をしたのか、証拠は、ここにある」

「え?」

 反射的に顏を上げた僕は、ウっと喉の奥で息を詰まらせた。

 希京が袂から取り出し、掲げて見せたのは、くしゃくしゃに丸められたティッシュである。

 まだ生乾きらしく、中に大量のクリーム色の液体が包まれているのが、電灯の明かりに透けて見えている。

「居間のゴミ箱に捨ててあった。これは、きさまのだな?」

「・・・・・・」

「なんなら、今漏らしたばかりのそのザーメンと、ここに包まれている臭い液を、比べてみてもいいのだぞ?」

「や、やめて…」

 僕はペニスを握りしめたまま、力なくその場にくず折れた。

「このザーメンが、自分のものだと認めるか? ヨミの写真をオカズにオナった時に漏らしたものだと、そう認めるんだな?」

 しばしの逡巡の後、小さく、うなずいた。

 僕にはもう、そうするしかなかったのである。

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