バナナの皮を剥くように ~薔薇色の少年~ 

ヤミイ

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39 地下室への扉

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 気分転換に、二人を探すことにして、いったん、廊下に出た。

 庭のほうは暗く、もう何も見えない。

 スマホで時間を確かめると、夜の9時を過ぎていた。

 この双龍邸に住むかどうかは別として、時間的にいっても、今夜はここに泊めてもらうしかない。

 こんな山奥、もうバスの便はないと考えられるからだ。

 双龍邸は、昔の高級旅館か、貴族の屋敷のようなたたずまいの建物だった。

 長い廊下が『コの字』型に続き、枯山水を擁した庭を囲んでいる。

 建物自体は鬱蒼たる森林に覆われ、まるで現実世界の片隅にすっぽりと空いた異界への入口のように見える。

 その廊下を、僕は息を殺しながら、たどっていく。

 廊下に面していくつも襖や障子戸が並んでおり、その向こうに多くの部屋があるのがわかる。

 どの部屋にも煌々と明かりは灯っているが、人の気配はない。

 だからといって、全部の部屋の襖や障子を開けて、中を確かめるわけにもいなかなった。

 とにかく耳をそばだて、中からヨミか希京の声が聞こえるのを待つしかない。

 部屋の数からして、ここは本当に旅館を改装してつくられた建物なのかもしれなかった。

 何の収穫もないまま、『コの字』の縦棒を折り返し、反対側の横棒にかかった。

 磨き上げられた廊下も柱もは黒光りしており、掃除が行き届いているようだ。

 僕はあのアヤカと呼ばれた形の良いお尻をした女性を思い出す。

 アヤカは希京の秘書兼使用人だと言っていた。

 これはすべて彼女がやったということなのだろうか。

 そんなことを考えながら歩いていたら、ついに終点まで来てしまった。

 『コの字』の二番目の横棒の端っこである。

「ん?」

 思わず声を出してしまったのは、目の前が壁ではなく板戸で仕切られていたからである。

 この向こうに、まだ何かあるのだろうか。

 建物のつくりからして、そんなはずはないのだが・・・。

 好奇心に駆られ、取っ手に手をかけて、引いてみる。

 板戸はスライド式で、鍵がかかっていなかった。

 現れたのは、裸電球に照らされた急な階段だ。

 階段の下にはまた板戸があり、隙間から黄色い光が漏れている。

 こんなところに、地下室が?

 狭い階段と突き当りの板戸から洩れる明かりはいかにも不気味な感じである。

 引き返そうと、踵を返しかけた時だった。

 板戸の向こうから、かすかな声が聴こえた気がしたのは。

 -アン・・・ダメ・・・。

 背筋の産毛が一斉に総毛立つのがわかった。

 一気に股間が硬くなる。

 ヨミだ。

 それにしても、なんて淫靡な声なんだろう・・・。

 あの扉の向こうで、いったい、何がー。 
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