バナナの皮を剥くように ～薔薇色の少年～

38 写真集の秘密⑤

　危ないところだった。

　放出寸前に、僕は包皮で亀頭を包み込み、精液の飛散を食い止めた。

　これは、仮性包茎であることに感謝する唯一の瞬間だ。

　余った包皮が袋になって、僕ら”皮かぶり”は自慰の時、余計に部屋を汚さず済むというわけだ。

　幸い、テーブルの隅にはティッシュの箱が置いてあった。

　無造作に数枚を引き抜き、性器から右手を離すと同時に左手に持ったティッシュで先っぽを包む。

　絞り出すように指を動かすと、熱い糊状の液体がティッシュの中に流れ込むのが感触と匂いで分かった。

　外に漏れないように何重にもティッシュで包み、団子みたいにしてから居間の隅のごみ箱に捨てた。

　証拠隠滅は完璧にしておかないと･･･。

　ビキニショーツを上げ、半勃起状態の性器をしまい、ジーンズを穿き直してから、ほうっと太い息をつく。

　やばかった。

　こんなところをヨミや希京に見られたら･･･。

　そう思うと、冷や汗が出た。

　いつもなら、射精直後には、”賢者タイム”といって、すべての欲望から解放されたひと時が訪れる。

　僕ら男は、精液とともに頭の中の妄念も一気に流れ出したかのように、静謐な境地に達すことができるのだ。

　ところが、今はそうではなかった。

　モヤモヤしたものが頭の中を渦巻き、股間のアレもまだ半分硬くなったままだった。

　原因の一つが、テーブルの上に開きっ放しになっているあの写真集であることは明白だ。

　後ろ髪を引かれる思いで本を閉じ、なるべく見ないようにして本箱の元の位置に戻した。

　持って帰って自分のものにし、何度も”使い”たい。

　その強烈な誘惑を振り切るのが大変だった。

　本の中に収められた幾つかの写真を思い出すだけで、またぞろ股間が反応し、下着が濡れてきてしまうのだ･･･。