バナナの皮を剥くように ~薔薇色の少年~ 

ヤミイ

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30 奇怪な儀式⑥

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 答えられず、僕はうつむいた。
 
 警官の試験?

 太平洋戦争時の徴兵?

 そんなこと、どうだっていい。

 屈辱的な格好を求められるその理由。

 問題は、それだった。

 はたして、僕自身は、どうなのだ?

 自分の気持ちが、わからない。

 いや、うすうすわかってはいるけれど、自身がない、というべきか。

 15年前に、僕と母を捨てて他の女に走った父。

 その父のもとに、初めて会う異母兄弟とともに、同居する。

 ここに来るまでは、正直、面白半分、怖いもの見たさ、みたいなところがあったことは、否めない。

 母さんが死んだばかりで、すべてに現実感がなかったせいもある。

 自分自身の懐事情からして、すぐにでも引っ越し先を探さねばなるまいと思っていたことも、理由の一つ。

 今更実の父親に会いたいなどとセンチな気分に囚われていたわけではなく、純粋に寝る場所が欲しかったのだ。

 ただ、ヨミと一緒にここに来る途中、想定外の彼の一面を目の当たりにして、僕は正直、揺れている。

 もう少し、ヨミと一緒にいる時間を増やしたい。

 いつのまにやら真剣に、そう考えるようになっていた。

 その気持ちは、虫唾が走るような外観と雰囲気の実父、比良坂希京に出くわしてすらも、変わらない。

 いやむしろ、あの化け物の手元にヨミを残して立ち去ることに、僕は抵抗感さえ覚え始めている・・・。

 -わかりましたよ。

 心の中でそうつぶやき、僕は二人の前のテーブルに右足をかけた。

 そして、バランスを崩さぬよう慎重にその上に立つと、ゆっくりと腰をかがめ、伸ばした手をついて躰を支えた。

 両手をついたところで、躰の向きを入れ替え、後方に両脚を伸ばす。

 最後にうつ伏せに近い姿勢を取り、四肢を突っ張って身を反らした。

 希京に向け、少し足を開き、尻を掲げる体勢である。

 その尻に息がかかるほど顏を近づけ、蟇蛙が命令した。
 
「もっと尻を上げろ。そうして、自分の手で、肛門を開くんだ」
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