バナナの皮を剥くように ~薔薇色の少年~ 

ヤミイ

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4 夜見の提案②

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「ひらさか、ききょう?」

 馬鹿の一つ覚えのように、僕は復唱する。

 小説家?

 聞いたことのない名前だった。

 純文学関係なのだろうか?

 だとしたら、読書好きと言っても、ミステリやSFしか読まない僕にはわからない。

「あー、知らないんだ。そりゃ、知らないよね、あの人の書くのって、めちゃマイナーでカルトだから」

 途方に暮れた僕の表情を見て、天使がくっくと喉の奥で笑った。

 余ったコートの袖口で口を隠して笑うさまが、なんともいえず、コケティッシュだ。

 マイナーでカルト?

 いったいどんな分野なんだろう?

 やはり純文学?

 それとも、最近流行の異世界ファンタジー?

 いやいやそれだったらむしろメジャーだろう。

 正直、ヨミの言葉は謎だらけだった。

 母の遺影を見て口にした、「お互い、不出来な母親を持つと苦労するね」とはどういうことなのか。

 彼と僕とが異母兄弟ならば、母親は別なはずだ。

 ただし、その疑問のほうは、意外に早く、ヨミの次の台詞で氷解した。

 ヨミは母の遺影にもう一度目をやると、ひとり言みたいに、こう言ったのだ。

「でも似てるよね。僕と君の母親は。姉妹でもないのに、どこかエロチックな眼と口元なんかそっくりだよ。やっぱりあの鬼畜の趣味が出てるよね。まあ、5年前に僕の母親が死んでから、彼の性向もだいぶ変わってきては、いるけれど」
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