バナナの皮を剥くように ～薔薇色の少年～

3 夜見の提案①

「ひらさか、よみ？　君が、僕の、異母兄弟？」

　信じられない言葉に、僕は絶句した。

　父は僕が3歳の頃、母と僕を捨てて他の女の許に走ったと聞いている。

　母はそんな父について滅多に触れることがなかったが、小学校の高学年の時、僕の問いにそう答えたのだ。

　その父が、どこかでまだ生きていて、他の女との間に子供を･･･？

　それにしても、目の前の少年は、まったくといっていいほど、僕と似ていない。

　近いのは小柄な背丈くらいなもので、外観は僕のほうが全体的に無骨で男っぽい。

　それに比べて少年はとことん中性的で、まんま生きた天使のようなのだ。

「突然のことで驚いたとは思うけど」

　”ヨミ”なる不思議な名前の美少年は、薄く笑うとさらに驚くべきことを口にした。

「僕の父親、つまり君にとっての実の父は、作家の比良坂希京。今度の訃報を聞いて、その作家先生が、ぜひ君に会ってこいって言うんでね」