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2 白い髪の少年

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 どれだけ時間が経ったのかー。

 パイプ椅子に座ったまま、うとうと眠りかけていた僕は、

「そんなとこでうたたねしてると、風邪ひくよ」

 隙間風の音のようなハスキーな声に耳をくすぐられ、

「ん?」

 思わず顔を上げ、眼をしばたたいた。

 すぐ前に、白々しい会場の照明を後光にように背にまとい、見たことのない少年が立っていた。

 年の頃は僕と同じくらいか、少し下。

 ベージュ色のハーフコートに、白いスキニーパンツを穿いている。

 目を引くのは真っ白な髪の毛と赤い目だ。

 顔立ちはフィギュアかアニメの登場人物のように整っていて、まるで人間離れしていた。

「誰?」

 訊き返す僕の声も、掠れていた。

「災難だったね」

 僕の問いには答えず、母の遺影のほうに目をやって、少年が言った。

「わかるよ。お互い、不出来な母親を持つと苦労するよね。いわば親ガチャに外れたってやつ?」

 真面目なのかふざけているのか、わからない。

 何が言いたいのかもさっぱりだ。

 でも、そんなことも気にならないくらい、僕は少年の姿に魅入られてしまっていた。

 ひと言でいえば、美しい。

 男女を問わず、僕の見知っているどんな人間よりも、格段に。

 ふわふわの髪も、瑪瑙のように紅い目も、血の気のない唇も、薄くて形のいい鼻も、尖った顎も・・・。

 それから、細くて長い首も、カモシカみたいにしなやかな脚も・・・。

「き、君は・・・?」

 ようやくのことで、もう一度、それだけを口にした。

「あ、ごめん。自己紹介が遅れたね」

 少年がはにかむように微笑んだ。

「僕は比良坂夜見。島原和夫君、君の異母兄弟さ」

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