18 / 83
💛18 美少女エルフを放置プレイ⑭
しおりを挟む ロボットスーツを着脱装置に戻すと、程なくして『以下の部品を補充して下さい』というメッセージが表示された。
見ると、通信機の部品だ。
「香子さん。ごめんなさい。通信機は治りそうにありません」
済まなそうに頭を下げる芽衣を、香子はねぎらった。
「芽衣ちゃんが無事だっただけ十分よ。気にしないで……」
「でも……」
「壊れちゃった物はしょうがないわよ。それに、送信はダメだけど、受信機能は生きているのでしょ?」
「はい。それはなんとか。でも、私があの魔法使いの挑発にさえ乗らなかったら……」
「挑発に乗らなかったら、相手の実力も分からなかったわ」
香子はモニター画面の方に視線を向けた。
そこには、ロボットスーツ搭載カメラが撮ったエラの様子が映っている。
それを眺めているのは、中年のナーモ族男性ター・メ・リック。薬師を生業としている男で、魔法にも詳しい。
リックが香子の方を向いた。
「雷魔法ですね。それもかなり強力な」
「雷魔法? 帝国は魔法の軍事利用に踏み切ったという事でしょうか?」
「そのようです。帝国は今まで火薬を使った武器で有利な立場にいたので、扱いにくい魔法など使おうとはしなかった。しかし、日本人から我々に火薬の製法が伝わってしまったために、そうも言っていられなくなったのでしょう」
「こちらに、対抗できる魔法使いはいますか?」
「魔法使いは何人かいるが、これと戦える力のある者はいません。いたとしても、肝心の回復薬がない。シーバ城の方へ回してしまって、こちらの在庫が空なのです」
「作れないのですか?」
「材料さえあれば……レッドドラゴンの肝以外は揃っています。今、それを取り寄せているのです」
となると、自分たちの持ち込んだ武器で戦うしかない。
しかし、すでにヘリコプターは飛べない。
ヘリに積んであった武器は、ショットガンと化学レーザーと芽衣のロボットスーツ。
そして、ドローンが三機。
死んだ海斗のロボットスーツもあるが、これを動かせる者はいない。
カルカシェルターでプリンターが動いていた時代に作られたドローンで、飛べる物は一機もなく、その三機を貸し出していたのだが、うち一機はすでに落とされた。
これ以上ドローンを失いたくないので、エラ攻撃には使いたくない。
しかし、あの魔法使いにはショットガンが効かなかった。カルカシェルターで生産しているライフル銃も通用するか分からない。レーザーは?
いや、あの魔法使いの周りを守っていたのがプラズマの壁なら、レーザーだって吸収されてしまう。
頼みの綱は、芽衣のロボットスーツ。
しかし、ロボットスーツの装甲でも、あの光球に耐えられるだろうか?
「大丈夫です。香子さん」
「芽衣ちゃん。大丈夫って……さっきは通信機だけで済んだけど、あれの直撃を受けたら、ロボットスーツだって、ただでは済まないわよ」
「大丈夫です。当たらなければ、どうという事ありません」
「当たらなければって……」
「さっきの戦いで分かったのですけど、あの光球ってすごく遅いです。空中を素早く飛び回っていれば当たりません」
「そうなの? でも、こっちの攻撃も通じないわよ」
「ですから、攻撃はしません。挑発して撃たせ続けるのです」
「え?」
「リックさんの話では、雷魔法は魔力消費が激しいそうです。無駄撃ちさせていれば、そのうち魔力が尽きます。魔力が尽きたところを見計らって攻撃に転ずれば勝機はあります」
「そう、うまく行くといいけど……」
その時、ドアがノックされて楊美雨が入ってきた。
「ちょっと、確認したいのですが、その魔法使いの名前はエラ・アレンスキーで間違えないかしら?」
芽衣が頷くと、楊美雨はタブレットを差し出した。
「これは私のオリジナルが、日本留学中に読んでいた雑誌の記事なのだけど」
それを見て、芽衣は顔を輝かせる。
「わあ! 『ウー』じゃないですか。私も大好きでした」
香子はため息をついた。
(なんでこの子、リケ女のくせに、こんなオカルト雑誌が好きなのだろう?)
「そうなの? まあ、その話は置いといて、ここにエラ・アレンスキーという人物の記事が載っているの」
そこには『驚異の電気人間』というタイトルの記事が載っていた。その中に、手で電球を持っただけで点灯させる男とか、身体が磁石になっている男とかの記事に混じって、手が触れるだけで相手を感電させる電撃少女が紹介されている。少女の名前は、エラ・アレンスキー。
「記事が書かれた二〇××年の時点で、この少女の年齢は十二歳。この時に、この少女の三次元データが取られたとして。帝国の船を私たちが破壊したのは三十年前。それ以降、帝国はコピー人間を作れない。だとすると、彼女のコピーが作られたのは三十年より前になる。現在は四十代のはず」
芽衣は記事の写真に写っている少女の顔を見つめた。
確かに、さっき会った女の面影がある。
「では、あの魔法使いはコピー人間?」
「おそらく。映像を見ると四十代くらいだから、年齢的には合っているわ」
そこへ香子が疑問を挟んだ。
「でも、この記事だと精々スタンガン程度の能力ですよ。芽衣ちゃんが戦った女が使っていたのは、高温のプラズマボールです」
「香子さん。未来ちゃんの事を覚えていますか?」
「え? 未来ちゃんがどうしたの?」
「あの子、電脳空間で式神が使えると言っていましたね。誰も、本気にしていなかったけど」
「ええ」
「でも、プロクシマ・ケンタウリbという惑星で、未来ちゃんを再生したら、本当に式神を使いだしたと……」
「その話は、私も知っているけど……」
「超能力というべきか魔法というべきか、地球ではこういう不思議な力が発動するのを抑制する何かがあるのではないかと言われています」
「じゃあ、エラ・アレンスキーも、この惑星で再生されて、能力が強くなったというの?」
「そうじゃないかと思うのです」
香子は考え込んだ。だが、なにもいいアイデアは浮かばない。
「ちょっと、それを見せてもらっていいですか?」
「どうぞ」
芽衣は、楊美雨からタブレットを受け取った。
記事に目を通すと、エラへのインタビュー記事もあった。そこには、日本の時代劇や特撮ヒーロードラマが好きだと書いてある。
「やはり、同一人物だと思います」
「そうだとして、そこに付け入る隙はないかしら?」
「ちょっと返して」
楊美雨は芽衣から、タブレットを返してもらって操作した。
「エラ・アレンスキーは、二十代になってから逮捕されているわ。罪状は暴行傷害拉致監禁。そうとうの性格異常者だったようよ」
「性格異常? 確かに変な人だな、とは思いましたけど……」
芽衣は、エラと会った時の事を思い浮かべながら言った。
「それなら、挑発に乗りやすいかもしれないですね」
見ると、通信機の部品だ。
「香子さん。ごめんなさい。通信機は治りそうにありません」
済まなそうに頭を下げる芽衣を、香子はねぎらった。
「芽衣ちゃんが無事だっただけ十分よ。気にしないで……」
「でも……」
「壊れちゃった物はしょうがないわよ。それに、送信はダメだけど、受信機能は生きているのでしょ?」
「はい。それはなんとか。でも、私があの魔法使いの挑発にさえ乗らなかったら……」
「挑発に乗らなかったら、相手の実力も分からなかったわ」
香子はモニター画面の方に視線を向けた。
そこには、ロボットスーツ搭載カメラが撮ったエラの様子が映っている。
それを眺めているのは、中年のナーモ族男性ター・メ・リック。薬師を生業としている男で、魔法にも詳しい。
リックが香子の方を向いた。
「雷魔法ですね。それもかなり強力な」
「雷魔法? 帝国は魔法の軍事利用に踏み切ったという事でしょうか?」
「そのようです。帝国は今まで火薬を使った武器で有利な立場にいたので、扱いにくい魔法など使おうとはしなかった。しかし、日本人から我々に火薬の製法が伝わってしまったために、そうも言っていられなくなったのでしょう」
「こちらに、対抗できる魔法使いはいますか?」
「魔法使いは何人かいるが、これと戦える力のある者はいません。いたとしても、肝心の回復薬がない。シーバ城の方へ回してしまって、こちらの在庫が空なのです」
「作れないのですか?」
「材料さえあれば……レッドドラゴンの肝以外は揃っています。今、それを取り寄せているのです」
となると、自分たちの持ち込んだ武器で戦うしかない。
しかし、すでにヘリコプターは飛べない。
ヘリに積んであった武器は、ショットガンと化学レーザーと芽衣のロボットスーツ。
そして、ドローンが三機。
死んだ海斗のロボットスーツもあるが、これを動かせる者はいない。
カルカシェルターでプリンターが動いていた時代に作られたドローンで、飛べる物は一機もなく、その三機を貸し出していたのだが、うち一機はすでに落とされた。
これ以上ドローンを失いたくないので、エラ攻撃には使いたくない。
しかし、あの魔法使いにはショットガンが効かなかった。カルカシェルターで生産しているライフル銃も通用するか分からない。レーザーは?
いや、あの魔法使いの周りを守っていたのがプラズマの壁なら、レーザーだって吸収されてしまう。
頼みの綱は、芽衣のロボットスーツ。
しかし、ロボットスーツの装甲でも、あの光球に耐えられるだろうか?
「大丈夫です。香子さん」
「芽衣ちゃん。大丈夫って……さっきは通信機だけで済んだけど、あれの直撃を受けたら、ロボットスーツだって、ただでは済まないわよ」
「大丈夫です。当たらなければ、どうという事ありません」
「当たらなければって……」
「さっきの戦いで分かったのですけど、あの光球ってすごく遅いです。空中を素早く飛び回っていれば当たりません」
「そうなの? でも、こっちの攻撃も通じないわよ」
「ですから、攻撃はしません。挑発して撃たせ続けるのです」
「え?」
「リックさんの話では、雷魔法は魔力消費が激しいそうです。無駄撃ちさせていれば、そのうち魔力が尽きます。魔力が尽きたところを見計らって攻撃に転ずれば勝機はあります」
「そう、うまく行くといいけど……」
その時、ドアがノックされて楊美雨が入ってきた。
「ちょっと、確認したいのですが、その魔法使いの名前はエラ・アレンスキーで間違えないかしら?」
芽衣が頷くと、楊美雨はタブレットを差し出した。
「これは私のオリジナルが、日本留学中に読んでいた雑誌の記事なのだけど」
それを見て、芽衣は顔を輝かせる。
「わあ! 『ウー』じゃないですか。私も大好きでした」
香子はため息をついた。
(なんでこの子、リケ女のくせに、こんなオカルト雑誌が好きなのだろう?)
「そうなの? まあ、その話は置いといて、ここにエラ・アレンスキーという人物の記事が載っているの」
そこには『驚異の電気人間』というタイトルの記事が載っていた。その中に、手で電球を持っただけで点灯させる男とか、身体が磁石になっている男とかの記事に混じって、手が触れるだけで相手を感電させる電撃少女が紹介されている。少女の名前は、エラ・アレンスキー。
「記事が書かれた二〇××年の時点で、この少女の年齢は十二歳。この時に、この少女の三次元データが取られたとして。帝国の船を私たちが破壊したのは三十年前。それ以降、帝国はコピー人間を作れない。だとすると、彼女のコピーが作られたのは三十年より前になる。現在は四十代のはず」
芽衣は記事の写真に写っている少女の顔を見つめた。
確かに、さっき会った女の面影がある。
「では、あの魔法使いはコピー人間?」
「おそらく。映像を見ると四十代くらいだから、年齢的には合っているわ」
そこへ香子が疑問を挟んだ。
「でも、この記事だと精々スタンガン程度の能力ですよ。芽衣ちゃんが戦った女が使っていたのは、高温のプラズマボールです」
「香子さん。未来ちゃんの事を覚えていますか?」
「え? 未来ちゃんがどうしたの?」
「あの子、電脳空間で式神が使えると言っていましたね。誰も、本気にしていなかったけど」
「ええ」
「でも、プロクシマ・ケンタウリbという惑星で、未来ちゃんを再生したら、本当に式神を使いだしたと……」
「その話は、私も知っているけど……」
「超能力というべきか魔法というべきか、地球ではこういう不思議な力が発動するのを抑制する何かがあるのではないかと言われています」
「じゃあ、エラ・アレンスキーも、この惑星で再生されて、能力が強くなったというの?」
「そうじゃないかと思うのです」
香子は考え込んだ。だが、なにもいいアイデアは浮かばない。
「ちょっと、それを見せてもらっていいですか?」
「どうぞ」
芽衣は、楊美雨からタブレットを受け取った。
記事に目を通すと、エラへのインタビュー記事もあった。そこには、日本の時代劇や特撮ヒーロードラマが好きだと書いてある。
「やはり、同一人物だと思います」
「そうだとして、そこに付け入る隙はないかしら?」
「ちょっと返して」
楊美雨は芽衣から、タブレットを返してもらって操作した。
「エラ・アレンスキーは、二十代になってから逮捕されているわ。罪状は暴行傷害拉致監禁。そうとうの性格異常者だったようよ」
「性格異常? 確かに変な人だな、とは思いましたけど……」
芽衣は、エラと会った時の事を思い浮かべながら言った。
「それなら、挑発に乗りやすいかもしれないですね」
1
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。



こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる