僕は家畜人 ~”連続絶頂” どうせ逝くなら、君の手で~

ヤミイ

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8 ソウルフーズ

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 だけど、いつまでも余韻に浸っているわけにもいかなかった。
 僕は自分の置かれている状況を思い出し、焦って衣服を身に着けた。
 きょうはアルバイト初日なのである。
 多機能トイレを飛び出し、元来た経路を逆にたどって地下鉄の駅に降りた。
 折よく列車がやってきたので飛び乗ると、今度はいい具合に空いていて痴漢被害に遭う危険性はなさそうだった。
 僕のアルバイト先は『ソウルフーズ』なる名前の食品会社である。
 最近伸びてきた新興企業で、人気商品には健康機能飲料の『ネクタル』などがある。
『ネクタル』は”完全栄養飲料水”を謳う、飲むヨーグルトタイプの商品だ。
 小さい割に高価なので飲んだことはないけれど、ネットではその独特の風味が評判になっていた。
 地下鉄を降り、地上に出た。
 『ソウルフーズ』の本社はJR駅前のツインタワーの中に入っている。
 白状すると、僕はまだ正式に採用になったわけではなかった。
 書類選考と面接は通ったのだけど、配属先を決めるテストがまだ残っているのだ。
 『ソウルフーズ』は大手企業なので、工場勤務といってもさまざまな種類があるらしく、作業効率化のための適材適所を徹底するべく、アルバイトの採用にすら、必ず適性検査を行うのだという。
 高速エレベータに乗り、いかにも”できる”といったスーツ姿のサラリーマンやOLたちに囲まれながら、上階まで昇る。
 『ソウルフーズ』はひとつのフロアを独占していて、僕が目指すのは人事課だ。
 下宿を早めに出てきたのに、あの痴漢男のせいで、時間はすでにギリギリだった。
 ピカピカに磨かれたような廊下をドキドキしながら進み、見覚えのあるドアの前に立った。
 こちらからアクションを起こす前に、ガラス壁越しに僕の姿を認めた女性社員のひとりが立ち上がり、
「アルバイトの適性検査の方ですか?」
 にっこり微笑んで事務所の中に導き入れてくれた。
「こちらへ」
 案内されたのは、奥の殺風景な部屋である。
 突き当りの壁に等身大の鏡があり、右手はスチールの棚、左手は手洗い場になっている。
 隅になぜか簡易ベッドが置いてあり、そこに腰かけて待っていると、5分ほどしてドアが開き、
「お待たせしました」
 丸眼鏡をかけたおでこの広い男性が姿を現した。
 僕の躰を眼鏡越しに頭の先からつま先までひと渡り眺めると、やにわに意味不明の言葉を口にした。
「矢風さんですね。私、検査官の鰐部と言います。ではさっそく、服を脱いでいただきましょうか」
 
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