淫美な虜囚

ヤミイ

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628 萎えた器官⑧

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 久しぶりの荒業に、腰の蝶番が軋んだ。

 この体勢は身体の柔らかい僕でさえ、かなりな負担だった。
 
 家でもよほど欲情した時でしかとらない痴態である。

 ただ、翔の下半身を自らの腰で突き上げている分、距離は短縮されている。

 自分のペニスを自分で咥えるよりも、角度からしてやりやすいはずだった。

 が、問題は、やはり翔が萎えたままでいることだ。

 翔のペニスは砂浜に打ち上げられた環形動物の死骸のように、内腿にへにゃりと貼りついてしまっている。

 だから、いくら首を伸ばしても、口が届かないのだ。

 くそっ。

 涙で視界がにじむのがわかった。

 このまま終わらせるわけにはいかない。

 もう一度この手で翔を勃たせて、僕らの愛を証明するのだ。

 たとえそれが、精神的なものを全く含まない、単に性的な快楽だけで結びついたものであったとしても…。

 落ち着け。

 翔の萎えたペニスを咥えるのをあきらめ、僕は深呼吸した。

 もう少し大きくしないと口淫は無理だ。

 でも今の僕に何ができる?

 さ迷わせた視線が、ぐったりと向こう側へ垂れ下がり、後頭部を畳につけた翔の上半身をとらえた。

 細身ながら筋肉質のその裸の上半身は、白い肌に縦横に走る鞭の痕でひどく痛々しい。

 中でも悲しいのは、乳輪に陥没してしまったふたつの乳首だった。

 エノキダケの笠みたいなボタン状の乳頭だけが、ダイヤル型の薔薇色の乳輪に囲まれ、ふたつ、顔を出している。

 これだ。

 また、閃いた。

 最後の手段は、これしかない。

 上向きに反り返った翔の裸体の上にかぶせるようにして、上体を伸ばしていく。

 そうしながら両手をまっすぐ伸ばし、指先で両の乳首をつまんだ。

 親指と人差し指で乳頭の下のくぼみをつまみ、ねじりながら乳輪から引き出していく。

 コリコリコリコリ…。

 こじるスピードをどんどん速めていくと、乳首自身が少しずつ硬さを増し、乳輪の真ん中から勃ち上がり始めた。

 いいぞ!

 これでどうだ!

 今度は手のひらを上に向け、人差し指と中指で乳首を挟み、縊り出した乳頭の先端を親指で撫で回す。

 微小なポツポツのある乳頭の表面をくいくいくいくい撫でていると、

「ハアアア・・・」

 仰のいた翔が、口を半開きにしてかすれた声を漏らすのがわかった。

 やはり。

 心の中で快哉をさけばずにはいられない。

 やはり、翔の最大のウィークポイントは、ここなのだ。

 乳首。

 翔は僕と同じくらい、乳首責めに弱い。

 僕自身、それだけで射精してしまうほど、過敏で繊細な乳首を備えている。

 そして、これまでの経験上、翔も同じはずだった。

「ち、ちくび…」

 翔が喘いだ。

 剥き出しの喉仏がごくりと動き、広げた両脚の内腿の筋肉がぴくりと痙攣する。

「アアア…チ、チクビ、イ、イイ…」

 むくり。

 その瞬間、視界の隅で、何かが動いた。

 ミミズそっくりの翔の器官が少しだけ長くなり、ひくひく起伏する平らな下腹の上でのろのろ頭を振っている。

 あとちょっと。

 僕は両手の指に全神経を集中した。

 そうしながら、翔を乗せた腰をゆっくりグラインドさせにかかった。

 翔の肛門の奥深くで僕の勃起肉棒の亀頭が円を描き、前立腺との境目の壁を刺激する。

「ハアアアアア…」

 翔の両脚が痙攣し、プロレス技のカニバサミのように僕の腰をぎゅうぎゅう挟んできた。

 ゆらり。

 六角筋が浮き彫りになったその下腹の上で、新たな動きが起こった。

 筋肉の格子の表面に影ができ、その上で蛇の頭のような形のものがかすかに揺れている。

 届く!

 僕は心の中で叫んだ。

 今だ!

 きっと、今ならやれるはず!
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