淫美な虜囚

512 地下迷宮⑥

　それにしても、異様な光景だった。
　
　普通、衣装というものは、恥ずかしい部位を隠すために着るべきものであるはずなのに、3人はその逆なのだ。

　最も人目を避けるべき肉体の部分を、わざと強調して曝け出してしまっているのである。

　エナメル製の黒い紐で搾り上げられた姉さんの乳房は、綺麗な紡錘形をしている。

　そしてその滑らかな曲線を描く股間では、第二の唇とでもいうべき二筋の肉の畝が隆起して･･･。

　男である陰と陽に至っては、もっとわかりやすい。

　ふたりとも中性的な細身の体の持ち主なのだが、その肌理の細かい膚を複雑にクロスした黒紐が縛り上げている。

　おかげで薄い胸に咲く一対のピンクの蕾と乳輪が亀甲形の縁取りでひどく強調され、吸いつきたいほど官能的だ。
　
　むろん極めつけは、これまた見事に剃毛された股間の亀甲模様である。

　その六角形の黒紐の枠は、その中心から勃起したペンシル型の陽根を強調しているだけでなく、根元にうずくまる丸い睾丸までをも外に絞り出しているのである。

　鏡に映る後ろ姿は、と見ると、ふたりともちょうどTバックのタンガを穿いたように、白桃を連想させるふたつの尻肉の谷間に、一本の黒紐をきつく食い込ませているのだった。

　これまで、お金で買われた一匹の性奴隷として、翔と姉さんから、数々の凌辱を受けて来た僕である。

　だが、思い返してみると、本格的なSMプレイは、まだ経験していなかった。

　そのせいもあるのだろう。

　自分が緊縛されるという妄想に、M男としてのペルソナが急速に僕の意識を支配しつつあった。

　辱めを受ける翔という対象が目の前から消えたことで、よりいっそう自分自身に意識が向いてきた証拠だった。

「ええと、ただ、彼の場合は、そうは簡単にはいかないのですよ」

　気がつくと、姉さん相手に、陽がしゃべっていた。

「どういうこと？」

　形のいい乳房を威嚇するように突き出して、姉さんが訊く。

「着替えさせる前に、洗浄が必要なのです」

「洗浄？」

　陽の言葉に、姉さんの眼がきらりと光った。

「ええ、腸内洗浄です。さっきも言いましたけど、ショーの途中で漏らされては、翔さまに申し訳が立ちませんから」