淫美な虜囚

ヤミイ

文字の大きさ
上 下
366 / 669

365 絡み合う裸体、迸る熱い液⑤

しおりを挟む
夜の闇の中、商売柄もあってあまりに眠れぬもんだから、
少しだけ蝋燭をつけて、また吸い始めた煙草に火をつける。

そういえばこの可愛い折り紙の鶴も早く燃やしてしまわなければならない。

禿にやれば喜びそうだと思ったけれども、やはりどうしても手放せなかった。

あんまりかわいいもんだから、ちょっと意地悪がしてみたくなって、
掌の上で煙管で突っついて転がしてやった。

赤い鶴の内側になんだかちょっとだけ黒色が見えた気がした。

何かあるのかと気になってちょっと可哀想だが紙を解いていく。

内側に何か書いてあるようだ。

火を近づけて照らして見ると、



「あなたが好きだ」



と書いてある。

手が震える。

こんな単純な言葉なのに、どんな睦言より恋文より胸が苦しくなった。

若い彼の気持ちがその一言に青臭く溢れてくるようだ。

まさかまさか、他の男の元へ行く前夜にこんな気持ちになるなんて。

太夫は小さく声を上げてカラカラと笑って、鶴をそっと火にくべた。

少しずつ灰になる鶴に気落ちした心もとても晴れやかになる。

鼻が少しつまって目元がちょびっと暖かい。

冷えるはずの頬も鶴のおかげで熱くて痒い。



何を自分は迷っていたのか、全て思い通りにならぬなら最期位自由に生きてやろう。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

処理中です...