258 / 659
257 禁断の秘密パーティ②
しおりを挟む
冬の日暮れは早く、西の空は下のほうから茜色から藍色に変わり始めていた。
タクシーを降りると、僕と姉さんは、ホテルの自動ドアをくぐった。
「秘密パーティーっていうから、すごくいかがわしい場所を想像してたけど、ちゃんとしたホテルだね」
ロビーを見回して、僕は言った。
「でも、ここで間違いない。このどこかに、あいつもいるはずだわ」
スマホに目を落とし、姉さんが答える。
一階ロビーは、大勢の人でにぎわっていた。
椅子やソファはほぼ埋まっていて、喫茶スペースは満席だ。
正月らしく、みんな着飾っている。
初詣の帰りなのか、和服姿の若者や、着物姿の若い女性の姿も多い。
礼服の男性、ドレスの女性の姿が目立つのは、ここが結婚式の披露宴の会場も兼ねているからだろう。
吹き抜けのはるか高みの天井では巨大なシャンデリアが輝き、幼児たちが歓声を上げて広い階段を駆け上ったり駆け下りたりして遊んでいる。
僕は慣れないネクタイを気にしながら、姉さんの後を影のようについて歩いた。
仕事柄、こういう場所にも慣れているのか、姉さんの足取りには微塵の躊躇もない。
細身の肢体に余所行きのスーツ姿がピシッと決まっていて、ついさっきまでのSM女王様スタイルが嘘のようだ。
「こっちね」
時折スマホの画面をチラ見しながら、姉さんは人気のないほうへと進んでいく。
どうやら地階に降りるエスカレーターに向かっているようだ。
僕はロビーで目にした案内板を脳裏に浮かべてみた。
披露宴やパーティの会場は、すべて2階以上だったように思う。
こんなほうに来ても、何もないはずだ。
いや、でも、と思い返す。
そこが秘密パーティーたる所以かもしれない。
分厚い絨毯は、ほとんど足音がしない。
あたりもシーンと静まり返っていて、階上のざわめきが遠くかすかに潮騒のように聞こえてくるだけだ。
案の定、エスカレーターを下りて、塵一つ落ちていない通路を更に奥へと進むと、正面に大きな扉が現れた。
プレートも何もない、両開きの頑丈そうな扉である。
「ここね」
顏を上げて扉を睨み、姉さんが言った。
「この向こう」
どくん、と心臓の鼓動が高まった。
脳裡に、いつか誤送信されてきた、翔のあられもない姿を映した画像がフラッシュバックした。
いよいよだ。
ごくりと喉が鳴る。
いよいよ僕らは、アレをナマで見られるのだー。
タクシーを降りると、僕と姉さんは、ホテルの自動ドアをくぐった。
「秘密パーティーっていうから、すごくいかがわしい場所を想像してたけど、ちゃんとしたホテルだね」
ロビーを見回して、僕は言った。
「でも、ここで間違いない。このどこかに、あいつもいるはずだわ」
スマホに目を落とし、姉さんが答える。
一階ロビーは、大勢の人でにぎわっていた。
椅子やソファはほぼ埋まっていて、喫茶スペースは満席だ。
正月らしく、みんな着飾っている。
初詣の帰りなのか、和服姿の若者や、着物姿の若い女性の姿も多い。
礼服の男性、ドレスの女性の姿が目立つのは、ここが結婚式の披露宴の会場も兼ねているからだろう。
吹き抜けのはるか高みの天井では巨大なシャンデリアが輝き、幼児たちが歓声を上げて広い階段を駆け上ったり駆け下りたりして遊んでいる。
僕は慣れないネクタイを気にしながら、姉さんの後を影のようについて歩いた。
仕事柄、こういう場所にも慣れているのか、姉さんの足取りには微塵の躊躇もない。
細身の肢体に余所行きのスーツ姿がピシッと決まっていて、ついさっきまでのSM女王様スタイルが嘘のようだ。
「こっちね」
時折スマホの画面をチラ見しながら、姉さんは人気のないほうへと進んでいく。
どうやら地階に降りるエスカレーターに向かっているようだ。
僕はロビーで目にした案内板を脳裏に浮かべてみた。
披露宴やパーティの会場は、すべて2階以上だったように思う。
こんなほうに来ても、何もないはずだ。
いや、でも、と思い返す。
そこが秘密パーティーたる所以かもしれない。
分厚い絨毯は、ほとんど足音がしない。
あたりもシーンと静まり返っていて、階上のざわめきが遠くかすかに潮騒のように聞こえてくるだけだ。
案の定、エスカレーターを下りて、塵一つ落ちていない通路を更に奥へと進むと、正面に大きな扉が現れた。
プレートも何もない、両開きの頑丈そうな扉である。
「ここね」
顏を上げて扉を睨み、姉さんが言った。
「この向こう」
どくん、と心臓の鼓動が高まった。
脳裡に、いつか誤送信されてきた、翔のあられもない姿を映した画像がフラッシュバックした。
いよいよだ。
ごくりと喉が鳴る。
いよいよ僕らは、アレをナマで見られるのだー。
0
お気に入りに追加
282
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる