淫美な虜囚

ヤミイ

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257 禁断の秘密パーティ②

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 冬の日暮れは早く、西の空は下のほうから茜色から藍色に変わり始めていた。

 タクシーを降りると、僕と姉さんは、ホテルの自動ドアをくぐった。

「秘密パーティーっていうから、すごくいかがわしい場所を想像してたけど、ちゃんとしたホテルだね」

 ロビーを見回して、僕は言った。

「でも、ここで間違いない。このどこかに、あいつもいるはずだわ」

 スマホに目を落とし、姉さんが答える。

 一階ロビーは、大勢の人でにぎわっていた。

 椅子やソファはほぼ埋まっていて、喫茶スペースは満席だ。

 正月らしく、みんな着飾っている。

 初詣の帰りなのか、和服姿の若者や、着物姿の若い女性の姿も多い。

 礼服の男性、ドレスの女性の姿が目立つのは、ここが結婚式の披露宴の会場も兼ねているからだろう。

 吹き抜けのはるか高みの天井では巨大なシャンデリアが輝き、幼児たちが歓声を上げて広い階段を駆け上ったり駆け下りたりして遊んでいる。

 僕は慣れないネクタイを気にしながら、姉さんの後を影のようについて歩いた。

 仕事柄、こういう場所にも慣れているのか、姉さんの足取りには微塵の躊躇もない。

 細身の肢体に余所行きのスーツ姿がピシッと決まっていて、ついさっきまでのSM女王様スタイルが嘘のようだ。

「こっちね」

 時折スマホの画面をチラ見しながら、姉さんは人気のないほうへと進んでいく。

 どうやら地階に降りるエスカレーターに向かっているようだ。

 僕はロビーで目にした案内板を脳裏に浮かべてみた。

 披露宴やパーティの会場は、すべて2階以上だったように思う。

 こんなほうに来ても、何もないはずだ。

 いや、でも、と思い返す。

 そこが秘密パーティーたる所以かもしれない。

 分厚い絨毯は、ほとんど足音がしない。

 あたりもシーンと静まり返っていて、階上のざわめきが遠くかすかに潮騒のように聞こえてくるだけだ。

 案の定、エスカレーターを下りて、塵一つ落ちていない通路を更に奥へと進むと、正面に大きな扉が現れた。

 プレートも何もない、両開きの頑丈そうな扉である。

「ここね」

 顏を上げて扉を睨み、姉さんが言った。

「この向こう」

 どくん、と心臓の鼓動が高まった。

 脳裡に、いつか誤送信されてきた、翔のあられもない姿を映した画像がフラッシュバックした。

 いよいよだ。

 ごくりと喉が鳴る。

 いよいよ僕らは、アレをナマで見られるのだー。

 

 
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