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223 喘ぐ人肉キャンドル⑩
しおりを挟む ゴクリとつばを飲み込んで、あとを追いかけた。
すばるが奥へ入ったのを確認して、倉庫の中をそっとのぞく。
中は、小さな窓があるが薄暗い。外に比べたらひやっとして、土のような臭いがする。
柄のついた農具がいくつか立ててあって、小さなスコップやバケツが棚に置いてある。
コンクリートの床には野菜・花用園芸土と書かれた袋や肥料が山積みだ。
大小いろいろな鉢やプランターもたくさん置いてある。
研究施設かもしれないな。確かめる必要があるぞ。
思い切って、一歩中に入ったら、
ヌッ。
急に人影が私の前に出てきた。
「ひいいっ」
思わず後ずさったら、足を段差にとられて体が後ろに傾いた。
……あ、やばい。このままだと後頭部を強打コースだ。
と、思ったら、背中に誰かの手がまわって、支えられた。
赤茶色の髪が私の頬にかかる。
長い前髪の下は見えないけれど、目が合った感じがした。
そのまま背中に添えられた手にぐっと力を入れられ、体を引き起こされる。
「……ありがとう、風斗」
お礼を言うと、背中を支えてくれていた手がゆっくりと離れた。
「どういたしまして」
風斗は氷がとけるような、か細い声で答えると、ニッとくちびるを上げた。
「あ、里依ちゃん! ぼく、片付けるから外にいてくれて良かったのに」
奥からすばるがひょっこり出てきた。
「風斗、鉢の整理してくれてありがとう。じゃあ、今から植えようか」
すばるが言うと、風斗がうなずき、土が入った袋を持ち上げて倉庫を出て行った。
「里依ちゃん、今から一緒に苗を植えよう」
「苗?」
「うん。校長先生が今朝持ってきてくれたんだ。行こう」
すばるに引っ張られて倉庫を出る。
風斗がスコップという道具でザクザクと土を掘ってる横で、すばるが立ち止まった。
「じゃあ、里依ちゃん。赤玉土をプランターに入れてくれる?」
すばるが畝の近くに置いてあった袋をよいしょと引っ張った。
近くにあったプランターという入れ物とスコップを渡される。
ふむ。この袋の中をこっちのプランターに入れればいいんだな。
ざばーっ!
勢いよくすべて入れると、すばるがぎょっとした。
「うわあっ、里依ちゃん! 入れすぎだよ! 百パーセント赤玉じゃダメ!」
すばるがあわてて、私の手を止める。
「え、全部入れるのでは?」
「いや……他に土も入れるから……じゃあ、里依ちゃんにはこっちをしてもらおうかな。こっちにはもう土を入れてるから……」
すばるが土が入ったプランターと、黒い小さな入れ物に入った植物を持ってきた。
「里依ちゃん、ミニトマト気になってたよね。ちょうど一ポット残ってるんだ。植える?」
「え……あ、うん」
渡された苗をじいっと見つめる。
これが毒々しい赤い実がなる植物だな……
ふわっと香る独特のにおい。
まだ花も実もなってないのに、こんなにおいがするのか。
「まずは、このミニトマトに水分をあげて……」
すばるの言う通りにじょうろで水をあげ、苗と同じくらいの穴を土にあけ、そっとミニトマトの苗を入れる。
最後に小さい支柱を立てて茎をひもで結んだ。
緑の葉っぱに細い茎。
なんだか頼りない。
強風が吹いたら、折れてしまいそうだ。
こんなか弱い植物が、今からどんな風に育っていくんだろう。
ちょっと興味が出てくるな。
「葉っぱが大きくなって、茎がぐんっと伸びて、花をつけて実がなって。想像するだけでわくわくするよね」
すばるがうれしそうに言って、スコップを置く。
「大きくなってね」
そう言って、すばるが葉っぱをさわると、返事をするように水滴がはねた。
すばるが奥へ入ったのを確認して、倉庫の中をそっとのぞく。
中は、小さな窓があるが薄暗い。外に比べたらひやっとして、土のような臭いがする。
柄のついた農具がいくつか立ててあって、小さなスコップやバケツが棚に置いてある。
コンクリートの床には野菜・花用園芸土と書かれた袋や肥料が山積みだ。
大小いろいろな鉢やプランターもたくさん置いてある。
研究施設かもしれないな。確かめる必要があるぞ。
思い切って、一歩中に入ったら、
ヌッ。
急に人影が私の前に出てきた。
「ひいいっ」
思わず後ずさったら、足を段差にとられて体が後ろに傾いた。
……あ、やばい。このままだと後頭部を強打コースだ。
と、思ったら、背中に誰かの手がまわって、支えられた。
赤茶色の髪が私の頬にかかる。
長い前髪の下は見えないけれど、目が合った感じがした。
そのまま背中に添えられた手にぐっと力を入れられ、体を引き起こされる。
「……ありがとう、風斗」
お礼を言うと、背中を支えてくれていた手がゆっくりと離れた。
「どういたしまして」
風斗は氷がとけるような、か細い声で答えると、ニッとくちびるを上げた。
「あ、里依ちゃん! ぼく、片付けるから外にいてくれて良かったのに」
奥からすばるがひょっこり出てきた。
「風斗、鉢の整理してくれてありがとう。じゃあ、今から植えようか」
すばるが言うと、風斗がうなずき、土が入った袋を持ち上げて倉庫を出て行った。
「里依ちゃん、今から一緒に苗を植えよう」
「苗?」
「うん。校長先生が今朝持ってきてくれたんだ。行こう」
すばるに引っ張られて倉庫を出る。
風斗がスコップという道具でザクザクと土を掘ってる横で、すばるが立ち止まった。
「じゃあ、里依ちゃん。赤玉土をプランターに入れてくれる?」
すばるが畝の近くに置いてあった袋をよいしょと引っ張った。
近くにあったプランターという入れ物とスコップを渡される。
ふむ。この袋の中をこっちのプランターに入れればいいんだな。
ざばーっ!
勢いよくすべて入れると、すばるがぎょっとした。
「うわあっ、里依ちゃん! 入れすぎだよ! 百パーセント赤玉じゃダメ!」
すばるがあわてて、私の手を止める。
「え、全部入れるのでは?」
「いや……他に土も入れるから……じゃあ、里依ちゃんにはこっちをしてもらおうかな。こっちにはもう土を入れてるから……」
すばるが土が入ったプランターと、黒い小さな入れ物に入った植物を持ってきた。
「里依ちゃん、ミニトマト気になってたよね。ちょうど一ポット残ってるんだ。植える?」
「え……あ、うん」
渡された苗をじいっと見つめる。
これが毒々しい赤い実がなる植物だな……
ふわっと香る独特のにおい。
まだ花も実もなってないのに、こんなにおいがするのか。
「まずは、このミニトマトに水分をあげて……」
すばるの言う通りにじょうろで水をあげ、苗と同じくらいの穴を土にあけ、そっとミニトマトの苗を入れる。
最後に小さい支柱を立てて茎をひもで結んだ。
緑の葉っぱに細い茎。
なんだか頼りない。
強風が吹いたら、折れてしまいそうだ。
こんなか弱い植物が、今からどんな風に育っていくんだろう。
ちょっと興味が出てくるな。
「葉っぱが大きくなって、茎がぐんっと伸びて、花をつけて実がなって。想像するだけでわくわくするよね」
すばるがうれしそうに言って、スコップを置く。
「大きくなってね」
そう言って、すばるが葉っぱをさわると、返事をするように水滴がはねた。
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