淫美な虜囚

ヤミイ

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13 調教②

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 それから数日は、平穏な日々が何事もなく過ぎて行った。

 翔から呼び出しがあったのは、翌週の月曜日のことだった。

 鉛色の空から雪のちらつく寒い朝ー。

 ちょうど学校は冬休みに入っていて、僕は大してすることもなく、ひとり家にいた。

 父と姉は仕事、母はパートに出かけたばかりで、自然と僕が留守番するかっこうになっていたのだ。
 
 居間のソファに寝転がり、文庫本を読みながらスマホで音楽を聴いていると、突然テーブルの上の固定電話が鳴り出した。

 あわてて跳ね起き、受話器を取ると、意外なことに翔からだった。

 あれは悪い夢だったのかもしれない。

 この部屋で行われた、あの翔との密室の出来事は…。
 
 平穏な日々にかまけていつしかそう思い始めていた僕は、その声に心の底からびっくりした。

「そろそろ出勤してもらおうかと思ってね」

 低いがよく通る声で、翔は言った。

「今から出て来られるか? 学校は今日から冬休みなんだろ?」

 夢じゃなかったんだ。

 そう思うと、背筋がぞくぞくした。

 それが嫌悪感からなのか、期待感からなのか、僕にはわからなかった。

「え、ええ。別にかまいません」

 とにかく今は、そう答えるしかなかった。

 翔は表向きはアルバイトと言い、僕には調教だと言った。

 その調教とやらがどんなものか、想像すると、不思議なことに股間が熱くなってきた。

 触ってみなくても、包皮に包まれた分身の先端から、ぬるぬるした汁が滲み出るのがわかった。

 もしかしたら久しぶりに翔の声を聴いたからかもしれなかった。

 けれど、それだけは認めてはいけない気がして、僕は何やら名状しがたい、暗鬱な気分に陥った。

「今、祖父の病院に来ている。君もお見舞いがてら、顏を出さないか? 心配しなくてもいい。きょうは面倒くさい親族たちは来ていない。ここにいるのは俺ひとりだよ」

「あの…それで、お見舞いの後、僕は何を…」

 思い切って訊いてみた。

 何か準備が必要なのだろうか。

 何時間ぐらい、拘束されることになるのだろう。

 聞いてみたいことは山ほどあった。

 それを口にすると、

「見舞いの後は、俺のオフィスに場所を移して調教の下ごしらえをしたいんだ。準備は特に必要ないが、あまり固形物は食べないできてくれないか。後がいろいろ面倒だから」

 翔はそんな意味不明のことを言って、電話の向こうで乾いた笑い声を立てた。

「なんなんだ? 固形物を食べるなって」

 切れた受話器をまじまじと見つめて、思わず僕は、声に出してひとりごちていた。

 天野翔。

 彼は、いったい何を企んでいるのだろう。

 食事制限なんて、まるで、人間ドッグの健康診断じゃないか…。
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