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三十六話『アイカ何でなの?』
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「運営に問い合せたわ。こんなやり方でよかったの? もっといい方法がありそうじゃない? 例えば、ボスの能力を初期のスライム並みにしてもらうのはどうなの?」
俺とエリカはボスに会うために再び螺旋階段を降りていき、そのすぐ後ろをツグミが階段を1段飛ばしでぴょんぴょん跳ねながら軽やかに降りていく。
「それをやるとゲームにならないし、下手したらプレイヤー離れを起こすから運営としてはやれないんじゃないか? もしやるとしても最終手段だと思う」
まず、運営はそんなことはしないと言ったかのような顔でエリカを見る。
「ならどうするの? 私達の命がかかってるのよ。他にも何人かは私たちと同じような人たちもいるんじゃないの?」
エリカはイライラしながら俺の隣を走っている。
「運営に問い合わせたら、ゲームの世界から戻れてないのは10人です。しかも連絡が取れたのはそのうちの5人だけという話です。残りの五人は消息不明なようです」
ツグミは他人事のように淡々と話す。
「もういっそのこと、この世界で暮らすことを考えたらいいんじゃないですか?」
ツグミは恐ろしい事を言い出す。本当に大丈夫なんだろうか。リアルの世界での様子が知りたい。俺とエリカの体はどうなっているんだ。
「アイカにメール送れる? 俺とエリカの体はどうなってる?」
緊張しながらそれとなくエリカに聞く。
「そうね。アイカ、あれから一切連絡取ってないし一度聞いた方が良さそうね。でも時間がないわ。約束の時間までに間に合うかしら」
ジャンヌにはなんて言えばいいのだろうか? あれだけ自信満々に何とかすると言ったのに、ベストなアイディアが浮かんでこない。
最近胃の当たりがチクチクする。どうしたんだろう。ストレスかな。ゲームの世界にそんなストレス症状とかいらないのに。このゲーム本当にリアルに近い世界だよな。
「来たわよ。アイカから。えっと、『──ごめんなさい。もう後二日ぐらいしかもたないと思う。早く攻略して戻ってきて。もう少し早く言えばよかったんだけど、本人には言えなかったの。看護師の仕事をしてると、よくあるんだけど、検査結果で、もしガンだったら教えて欲しい。受け止める準備は出来てるってよく言われるけど、そういう人に限って心が弱いから、私は誰よりも先へと攻略してたの。私はあなた達が少しずつ衰弱する様子をまじかで見ているから気が気じゃなかったの』だって。これってどういうこと……」
エリカは大きなショックを受けたようで視点が定まっていない。少しぼーっとしているような感じだ。頭がいいから状況が鮮明に頭に浮かんでいるのだろう。
──なんてことだ。他のVRMMOのゲームなら医療体制バッチリでそんな風にはならないはずなのに。これが現実なのか? 何としてもエリカだけは助けたい。
俺とエリカはボスに会うために再び螺旋階段を降りていき、そのすぐ後ろをツグミが階段を1段飛ばしでぴょんぴょん跳ねながら軽やかに降りていく。
「それをやるとゲームにならないし、下手したらプレイヤー離れを起こすから運営としてはやれないんじゃないか? もしやるとしても最終手段だと思う」
まず、運営はそんなことはしないと言ったかのような顔でエリカを見る。
「ならどうするの? 私達の命がかかってるのよ。他にも何人かは私たちと同じような人たちもいるんじゃないの?」
エリカはイライラしながら俺の隣を走っている。
「運営に問い合わせたら、ゲームの世界から戻れてないのは10人です。しかも連絡が取れたのはそのうちの5人だけという話です。残りの五人は消息不明なようです」
ツグミは他人事のように淡々と話す。
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ツグミは恐ろしい事を言い出す。本当に大丈夫なんだろうか。リアルの世界での様子が知りたい。俺とエリカの体はどうなっているんだ。
「アイカにメール送れる? 俺とエリカの体はどうなってる?」
緊張しながらそれとなくエリカに聞く。
「そうね。アイカ、あれから一切連絡取ってないし一度聞いた方が良さそうね。でも時間がないわ。約束の時間までに間に合うかしら」
ジャンヌにはなんて言えばいいのだろうか? あれだけ自信満々に何とかすると言ったのに、ベストなアイディアが浮かんでこない。
最近胃の当たりがチクチクする。どうしたんだろう。ストレスかな。ゲームの世界にそんなストレス症状とかいらないのに。このゲーム本当にリアルに近い世界だよな。
「来たわよ。アイカから。えっと、『──ごめんなさい。もう後二日ぐらいしかもたないと思う。早く攻略して戻ってきて。もう少し早く言えばよかったんだけど、本人には言えなかったの。看護師の仕事をしてると、よくあるんだけど、検査結果で、もしガンだったら教えて欲しい。受け止める準備は出来てるってよく言われるけど、そういう人に限って心が弱いから、私は誰よりも先へと攻略してたの。私はあなた達が少しずつ衰弱する様子をまじかで見ているから気が気じゃなかったの』だって。これってどういうこと……」
エリカは大きなショックを受けたようで視点が定まっていない。少しぼーっとしているような感じだ。頭がいいから状況が鮮明に頭に浮かんでいるのだろう。
──なんてことだ。他のVRMMOのゲームなら医療体制バッチリでそんな風にはならないはずなのに。これが現実なのか? 何としてもエリカだけは助けたい。
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