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三十二話 『僕達付き合ってます』

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「私がせっかくシチュー作ったのに、皆何食べてるのよ!」

 ジャンヌのビンタで吹き飛ばされ最終ボス、魔王──夫は後ろの食器棚に頭から激突した。

「うわああああああー」

 ジャンヌは俺とめぐニャンの方を見て睨みつけると、ハイヒールをコツコツいわせながら俺たちの方に向かってくる。

「このクロワッサンは私に対する嫌がらせなの? それともなんなのよ!」

 更年期障害なんだろうか? 人間でも40近い女性はホルモンのバランスが崩れておかしくなるとは言うけど、心があまりにも安定していない。

 ジャンヌはクロワッサンの入ったバスケットを持ち上げてぶん投げようとしたが、一枚の紙を見つけて、視線を泳がせる。

 そこには、今日は家族の皆さんにお会い出来る事を楽しみにしています。仲良くしたいので私はプレイヤーで、ゲームの中では敵かもしれませんが、そんなこと関係なく温かく接して欲しいです。

 と、書かれていた。

 ジャンヌはメグを見て、

「あなた達付き合ってるの? でも分かってる? 一緒にはなれないのよ!」
「そんな事はわかってるよ! めぐがこのゲーム飽きるか運営がこのゲームの管理をしなくなったら全て消えることぐらいわかってるよ。それでも今の二人の関係を大切にしたいんだよ。僕とメグは真面目に付き合ってます。」

 ドラゴは興奮しながら話す。

「どんな結末が待っているのか予想できたとしても、必ずしもそうなるとは限らないだろ?」

 俺も援護してやる。ゲームの管理は運営がプレイヤー状況を見ながら決めるのだから長くても10年。それほど流行ることがなければ半年で打ち切りということも有り得る。

 もしくは運営がデータを変えれば、敵キャラ自体消滅する可能性もある。

「いい方法がある。そのためにはジャンヌの協力が必要だ! エリカの親に頼んでゲームのバックアップをとってもらってはどうだろう。そして管理をすることで未来永劫ずっと生活できるんじゃないのか?」

「ゲームって何の話なの? 分からないわ。私たちからすればあなた達が侵略者なのよ! ある日突然現れてペットやら動物を皆殺しにしてくるあなたたちこそ悪魔じゃないの!」

 そうか、ジャンヌ達からしたら俺たちは発売日と同時に現れたいわば天災みたいなものなのかもしれない。ドラゴはメグから話を聞いてこの世界がゲームだと知ったから少しは分かっているのかもしれないが。

 この大変な状況。どうすればいいんだ。
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