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マッチング酒場にて
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「勇者を罠に嵌めるの?」
短い沈黙が流れ、キョウコが不安げに上目遣いで私を見てくる。上目遣いに弱い男がいるって聞いたことがある。この女もしかしてユウキを落とすために。
それにしても、この僧侶の身なりは一般的な冒険者と違う。おそらく勇者の好みなのだろう。漆黒の下着がチラつく白のミニスカートに、網タイツで上着は胸元が大きく開いた白のレース付きの服を着ている。ブローチが左右に揺れている。
大抵僧侶というものは聖職者なのだから、露出のないローブ姿が普通なのに。でも、勇者パーティの一人がこちらの味方になれば、これ程心強いことは無いから、身なりとか気にしては居られない。一人でも味方が増えてくれることにこしたことはない。
どこまで信用していいのかはまだ分からないけど。
話を聞いて分かったのは、キョウコも好きで勇者パーティにいたわけじゃなさそうだってこと。
「こんな噂があるんだけど、本当なの? 勇者が女性物の下着を盗んでるって」
私はボソリと口にした。よくよく考えると、勇者ともあろうものがそんな行動をとるとは思えない。勇者は国中の憧れの的で特に子供達からの人気が非常に高いのだ。
それは街の雑貨屋に入れば子供向けの勇者グッズ(マントや服、剣等)が売られていて売上もいいことや、冒険者の中でも国王陛下のお墨付きが貰えて冒険の多額の費用も援助してもらえることからも他の冒険者とは全く待遇が異なっている。
キョウコは目を大きく見開くと。
「えっ、今まで一緒にいるけど、そんな話聞いたことないわ。あの男はリアルの女にしか発情しないし。それに、女性物の下着なんてただの布切れぐらいにしか思ってないはずよ。どこからそんな噂が出たのかしら。もしかしたら私だけが知らないだけ?」
だったら、うちのお母さんのパンツを盗んだのは誰っ? 他に犯人がいるんだろうか? そのパンツの話は紛らわしいから一旦置いて置くことにした。
決めた。
「罠を仕掛けることにする。勇者の行いは許せないし。まず俺が変身粉で勇者になって、街に向かう。民家に侵入し、干してある女性物の下着を盗むから、キョウコに手伝ってもらいたい」
「まってよ。いくらなんでもやり過ぎじゃない?」
「相手はまともじゃないんだ。だったらこっちだってまともなやり方じゃ通用しないだろ。いや待てよ。その民家の人に」
「何か考えがあるのね? 分かったわ。そこに本物の勇者と衛兵を連れてこればいいのね?」
キョウコは心配そうに顔を強ばらせて答える。そんな作戦上手くいくのか分からないといった感じ。
「二人も連れてくるのはきついでしょ。勇者だけ頼める?」
「厳しいわ。アイツは私の言うことなんて聞かないのよ」
「なら、誰の話なら聞くの? そもそもあの勇者はどんなことに興味があるの? アイツの好物から作戦を練り直さないといけないわ」
「そりゃあねー、夜になると酒場に出掛けて、半分酔っぱらいの女をおんぶして宿屋にって……そんなだらしのないことばかりしてるわよ」
私たちは笑顔で顔を見合わせる。それ使えるかもしれない。
「それと、だいたい決まってるの? どこのお店とか」
「今泊まってるホテルの近くの酒場『マッチング酒店』よ。アイツはお気に入りの酒場を見つけるとそこしか行かないわ。多分今晩も行くはずよ」
「それなら話は早い。友達に衛兵を連れてきてもらうから、私が……いやっ俺がっ、女性物のブツを盗んだらその酒場に行く。そこで俺がキョウコに渡すから、それを勇者の上着に入れるってことでどう? 後は時間だけ決めとこう」
「時間は夜8時でいいと思うわ」
「それじゃ頼んだ!」
私は親指と人差し指で丸を作りOKのサインをキョウコに送る。
「それじゃあ、友達にも協力してもらわないとだから、今日はこの辺で」
「あ、うん……また、会えるよね?」
不安げな野うさぎのような表情のキョウコがきいてくる。
「きっと会えるよ」
私はそう優しく答える。正直心が痛む。そして伏し目がちな表情をしたキョウコと別れた。
短い沈黙が流れ、キョウコが不安げに上目遣いで私を見てくる。上目遣いに弱い男がいるって聞いたことがある。この女もしかしてユウキを落とすために。
それにしても、この僧侶の身なりは一般的な冒険者と違う。おそらく勇者の好みなのだろう。漆黒の下着がチラつく白のミニスカートに、網タイツで上着は胸元が大きく開いた白のレース付きの服を着ている。ブローチが左右に揺れている。
大抵僧侶というものは聖職者なのだから、露出のないローブ姿が普通なのに。でも、勇者パーティの一人がこちらの味方になれば、これ程心強いことは無いから、身なりとか気にしては居られない。一人でも味方が増えてくれることにこしたことはない。
どこまで信用していいのかはまだ分からないけど。
話を聞いて分かったのは、キョウコも好きで勇者パーティにいたわけじゃなさそうだってこと。
「こんな噂があるんだけど、本当なの? 勇者が女性物の下着を盗んでるって」
私はボソリと口にした。よくよく考えると、勇者ともあろうものがそんな行動をとるとは思えない。勇者は国中の憧れの的で特に子供達からの人気が非常に高いのだ。
それは街の雑貨屋に入れば子供向けの勇者グッズ(マントや服、剣等)が売られていて売上もいいことや、冒険者の中でも国王陛下のお墨付きが貰えて冒険の多額の費用も援助してもらえることからも他の冒険者とは全く待遇が異なっている。
キョウコは目を大きく見開くと。
「えっ、今まで一緒にいるけど、そんな話聞いたことないわ。あの男はリアルの女にしか発情しないし。それに、女性物の下着なんてただの布切れぐらいにしか思ってないはずよ。どこからそんな噂が出たのかしら。もしかしたら私だけが知らないだけ?」
だったら、うちのお母さんのパンツを盗んだのは誰っ? 他に犯人がいるんだろうか? そのパンツの話は紛らわしいから一旦置いて置くことにした。
決めた。
「罠を仕掛けることにする。勇者の行いは許せないし。まず俺が変身粉で勇者になって、街に向かう。民家に侵入し、干してある女性物の下着を盗むから、キョウコに手伝ってもらいたい」
「まってよ。いくらなんでもやり過ぎじゃない?」
「相手はまともじゃないんだ。だったらこっちだってまともなやり方じゃ通用しないだろ。いや待てよ。その民家の人に」
「何か考えがあるのね? 分かったわ。そこに本物の勇者と衛兵を連れてこればいいのね?」
キョウコは心配そうに顔を強ばらせて答える。そんな作戦上手くいくのか分からないといった感じ。
「二人も連れてくるのはきついでしょ。勇者だけ頼める?」
「厳しいわ。アイツは私の言うことなんて聞かないのよ」
「なら、誰の話なら聞くの? そもそもあの勇者はどんなことに興味があるの? アイツの好物から作戦を練り直さないといけないわ」
「そりゃあねー、夜になると酒場に出掛けて、半分酔っぱらいの女をおんぶして宿屋にって……そんなだらしのないことばかりしてるわよ」
私たちは笑顔で顔を見合わせる。それ使えるかもしれない。
「それと、だいたい決まってるの? どこのお店とか」
「今泊まってるホテルの近くの酒場『マッチング酒店』よ。アイツはお気に入りの酒場を見つけるとそこしか行かないわ。多分今晩も行くはずよ」
「それなら話は早い。友達に衛兵を連れてきてもらうから、私が……いやっ俺がっ、女性物のブツを盗んだらその酒場に行く。そこで俺がキョウコに渡すから、それを勇者の上着に入れるってことでどう? 後は時間だけ決めとこう」
「時間は夜8時でいいと思うわ」
「それじゃ頼んだ!」
私は親指と人差し指で丸を作りOKのサインをキョウコに送る。
「それじゃあ、友達にも協力してもらわないとだから、今日はこの辺で」
「あ、うん……また、会えるよね?」
不安げな野うさぎのような表情のキョウコがきいてくる。
「きっと会えるよ」
私はそう優しく答える。正直心が痛む。そして伏し目がちな表情をしたキョウコと別れた。
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