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マイのセーラー服
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寝返りを打ちながら目を開けるとぼんやりとマドカの顔が横にある。私のベッドで二人で仲良く寝てたんだ。一人っ子だから気づかなかったけど姉妹だとこんな感じなのね。
部屋の中にもうひとりいるだけでなんだか安心できるから不思議だ。一人でいる時はたまにふと不安になることもあったけど……。
「おはよー! 朝ごはんパンになるけどいい?」
こんな風に私がマドカを起こすのが日課となっていたら良かったんだけど、マドカはしっかり者で私が起きるよりも前にお母さんのパン屋を手伝っていた。
「ツグミー、朝ごはんですよー!」
マドカの声で私は目を覚まし、眠い目を擦りながらベッドから降りる。「おはよー」と声をかけていたのは夢だったのだ。家族にしっかり者がいると自分ができない人に認定されているみたいで少し悲しくなった。
それでもお母さんは喜んでるし。
「ツグミもマドカちゃんみたいにしっかりしてるといいんだけどね!」
朝食のパンを食べながらお母さんが私に嫌味を言ってくる。こんなことならマドカなんて家に呼ばなければ良かったかなとか最低なことを考えてしまう。だめだ。最近いそがしかったからかな。心に余裕がないのかもしれない。
「だね、マドカ来てくれてほんと助かるよ」
私はこの家では戯けるピエロみたいな役を演じようかと思った。
「いえ、私はツグミさんがいてくれたからこんな幸せに暮らせているんです。朝のパンのお手伝いだって私はパン作りが好きだから苦じゃないんです」
この子は優等生だ。他の人がこんなセリフを口にしたらいい子ぶってる。よく言うよねとか思っていたかもしれないけどマドカだから本心なのだ。
「マドカちゃん。ずっとこの家にいていいからね。ツグミもマドカちゃんを見習いなさい」
お母さんはパン屋の弟子が出来て嬉しそう。私を責めなくてもいいのに。少し嫌になってしまう。
「お腹空いてないからさき学校行くね。いってきまーす」
私は着替えると逃げるように玄関のドアを開けて外に飛び出した。
はあ…。これマドカが悪いわけじゃないし。何だろう。かといって、私は早起きしてお母さんのパン屋を手伝いたいとは思えない。最低なのかな…。
とぼとぼ歩いていると後ろから、
「つぐー、待ってよー!」
「マドカごめんねー、さき行っちゃって」
「大丈夫です。私の方こそ少し嫌な女みたいでした。ツグミのこと傷つけてるんじゃないかって、ほんとごめんなさい」
「ううん。私の方こそ変なことちらっと考えてたかも、でもマドカだから大丈夫だよ」
「子供の頃私のお母さんが作ってくれたにんじんケーキが好きでつぐのお母さんと重ねて見てたのかも……」
「大丈夫だから」
「つぐが大丈夫って言う時って、大丈夫じゃない時が多いじゃない。ほらあの時も」
学校で調合の素材が盗まれてマドカが庇ってくれた時のことを思い出した。マドカは最後まで言わないけど気遣ってくれる。
「ほんと私のことよく分かってるよね」
悔しいけどこれほど私のこと分かってるのはマドカぐらいしかいない。
「マドカいいよ。パン屋好きなんでしょ。私のことは気にしなくていいから。お母さんに色々学んでいいよ!朝作ることが多いから教えて貰うといいよ。私は食べる方が好きだから作るのは正直ちょっとね」
「ありがとう。ツグの許しを貰わないと心配だったの。前の祖父の家があんなだったから私も他の家に来て心配してたんです」
まーそうだよね。友達と言っても本当の家族ではないんだから。あれ? 私の亡くなったお父さんとお母さんてよくよく考えたら赤の他人だよ。どんな信頼関係があって一緒に暮らしているんだろう。それは愛? 朝から何考えてるの?
「マドカ心配しなくていいよ。私達は親友だから。まあ家族だよ」
「家族…」
そう言ってマドカは満面の笑顔になり、私にお弁当を渡してきた。
「お昼にこれ食べましょ。私が教えてもらって作ったの。つぐの好きなクリームメロンパン」
「わー! なんで知ってるのよー!」
私はマドカの背中に向かってジャンプするとマドカはひょいと私の脚を掴んでおんぶする。
そうやって戯れながら学校へと向かった。くだらない嫉妬や贔屓とかそんなものどうだっていい。
正門まで来るとゆうきが仕留めたカメレオンを持ってたっていた。
「ツグミー! とったどー!」
「やめてよ! どっかで聞いたセリフだよ」
「ツグミもしかして変身粉作るの? 私も手伝います」
「それじゃ、図書室行って作戦会議なのです」
私はピエロになろうと決めた。まずは話し方から変えてみよう。まどかに協力してもらえばゆうきやマイが私の代わりに学園生活してても何とかなるかもしれない。そんな事を考えながら三人で図書室へと向かう。
まだ午前の授業が始まるまで1時間ほどある。
図書室を開けるとマイがピチピチのセーラー服をきて机に突っ伏して寝ていた。
マジかい…マイ凄く楽しみにしてたんだ…
部屋の中にもうひとりいるだけでなんだか安心できるから不思議だ。一人でいる時はたまにふと不安になることもあったけど……。
「おはよー! 朝ごはんパンになるけどいい?」
こんな風に私がマドカを起こすのが日課となっていたら良かったんだけど、マドカはしっかり者で私が起きるよりも前にお母さんのパン屋を手伝っていた。
「ツグミー、朝ごはんですよー!」
マドカの声で私は目を覚まし、眠い目を擦りながらベッドから降りる。「おはよー」と声をかけていたのは夢だったのだ。家族にしっかり者がいると自分ができない人に認定されているみたいで少し悲しくなった。
それでもお母さんは喜んでるし。
「ツグミもマドカちゃんみたいにしっかりしてるといいんだけどね!」
朝食のパンを食べながらお母さんが私に嫌味を言ってくる。こんなことならマドカなんて家に呼ばなければ良かったかなとか最低なことを考えてしまう。だめだ。最近いそがしかったからかな。心に余裕がないのかもしれない。
「だね、マドカ来てくれてほんと助かるよ」
私はこの家では戯けるピエロみたいな役を演じようかと思った。
「いえ、私はツグミさんがいてくれたからこんな幸せに暮らせているんです。朝のパンのお手伝いだって私はパン作りが好きだから苦じゃないんです」
この子は優等生だ。他の人がこんなセリフを口にしたらいい子ぶってる。よく言うよねとか思っていたかもしれないけどマドカだから本心なのだ。
「マドカちゃん。ずっとこの家にいていいからね。ツグミもマドカちゃんを見習いなさい」
お母さんはパン屋の弟子が出来て嬉しそう。私を責めなくてもいいのに。少し嫌になってしまう。
「お腹空いてないからさき学校行くね。いってきまーす」
私は着替えると逃げるように玄関のドアを開けて外に飛び出した。
はあ…。これマドカが悪いわけじゃないし。何だろう。かといって、私は早起きしてお母さんのパン屋を手伝いたいとは思えない。最低なのかな…。
とぼとぼ歩いていると後ろから、
「つぐー、待ってよー!」
「マドカごめんねー、さき行っちゃって」
「大丈夫です。私の方こそ少し嫌な女みたいでした。ツグミのこと傷つけてるんじゃないかって、ほんとごめんなさい」
「ううん。私の方こそ変なことちらっと考えてたかも、でもマドカだから大丈夫だよ」
「子供の頃私のお母さんが作ってくれたにんじんケーキが好きでつぐのお母さんと重ねて見てたのかも……」
「大丈夫だから」
「つぐが大丈夫って言う時って、大丈夫じゃない時が多いじゃない。ほらあの時も」
学校で調合の素材が盗まれてマドカが庇ってくれた時のことを思い出した。マドカは最後まで言わないけど気遣ってくれる。
「ほんと私のことよく分かってるよね」
悔しいけどこれほど私のこと分かってるのはマドカぐらいしかいない。
「マドカいいよ。パン屋好きなんでしょ。私のことは気にしなくていいから。お母さんに色々学んでいいよ!朝作ることが多いから教えて貰うといいよ。私は食べる方が好きだから作るのは正直ちょっとね」
「ありがとう。ツグの許しを貰わないと心配だったの。前の祖父の家があんなだったから私も他の家に来て心配してたんです」
まーそうだよね。友達と言っても本当の家族ではないんだから。あれ? 私の亡くなったお父さんとお母さんてよくよく考えたら赤の他人だよ。どんな信頼関係があって一緒に暮らしているんだろう。それは愛? 朝から何考えてるの?
「マドカ心配しなくていいよ。私達は親友だから。まあ家族だよ」
「家族…」
そう言ってマドカは満面の笑顔になり、私にお弁当を渡してきた。
「お昼にこれ食べましょ。私が教えてもらって作ったの。つぐの好きなクリームメロンパン」
「わー! なんで知ってるのよー!」
私はマドカの背中に向かってジャンプするとマドカはひょいと私の脚を掴んでおんぶする。
そうやって戯れながら学校へと向かった。くだらない嫉妬や贔屓とかそんなものどうだっていい。
正門まで来るとゆうきが仕留めたカメレオンを持ってたっていた。
「ツグミー! とったどー!」
「やめてよ! どっかで聞いたセリフだよ」
「ツグミもしかして変身粉作るの? 私も手伝います」
「それじゃ、図書室行って作戦会議なのです」
私はピエロになろうと決めた。まずは話し方から変えてみよう。まどかに協力してもらえばゆうきやマイが私の代わりに学園生活してても何とかなるかもしれない。そんな事を考えながら三人で図書室へと向かう。
まだ午前の授業が始まるまで1時間ほどある。
図書室を開けるとマイがピチピチのセーラー服をきて机に突っ伏して寝ていた。
マジかい…マイ凄く楽しみにしてたんだ…
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