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第5章:英雄の街でアルバイト!
25.英雄の街・アンゼリカ
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「資金がない」
その一言で始まった。
「は?」
「資金がない」
もう一度言うと、ダミ子はマースにこっち、と手招きした。
机上に広げられた世界地図を見せる。
「ていうか凄い隈ですよダミ子さん」
「昨夜フワワ亭のご主人に最新版の地図を貰ったんだ。グゥスカで貰った地図は旧版でわかりにくいんでね。見て。ここが、私たちの、現在地」
指をさす。
地図上では南西の位置。
「んで、【スカピー火山】がここ」
ついー~~っ。
指の線が引かれ、さされたのは地図上でも最も上に記された遥か北の方。
「うわ遠っ」
「遠いでしょ。でも、私たちはここへ行かなくてはなりません」
「なぜ敬語。あ、でもだったらスカピー火山を後にして、先に【イバラの森の魔女の涙】を集めるのもありなんじゃ」
ところがどっこい!
ダミ子は寝不足の目をカッと見開く。寝不足による情緒不安定。
「【イバラの森】なんだが……どこ探しても載ってないんだよ。あれか? 秘境の地ってヤツ? まーだからこっちが後。行く先の人々に聞いてみるしかない状態」
「うへぇー。一つは場所不明、もう一つはめっちゃ遠い場所……」
「消去法でとりあえず場所がわかる【スカピー火山】が先。で、冒頭に戻る」
「資金が、ないと?」
「問題がこれだ」
【スカピー火山】の位置にのった指を手前にスライド。そこにはもう一つデッカイ山があった。
「この手前のコックリ谷を越えてかねばならない。ここは歩いてくのが難解で馬車が必要になる」
『コックリ谷を越えるには馬車を使うのが定石だよ~』とフワワ亭ご主人談。
だが。
「馬車の料金が高くてこのままでは一人も乗れない」
「ええぇー」
「ということで働くぞ」
「ええぇ……?」
「大都市まで行って資金を稼ぐ。今日から私たちはアルバイターだ!」
「ええぇー!?」
薬剤師(とその助手)、フリーターになる。
ということでダミ子たちが数日かけて着いたのは、南西から東へ進んだ先にある大都市。
【英雄の街・アンゼリカ】だった。
「ここなら働き口の一つや二つあるだろう」
「完全に脇道それた感がありますね僕ら」
「賑わってるなー(無視)。さすが大都市。グゥスカ王国と変わらん」
道行く人々の数はかなり多く、どこも活気を見せている。喧騒に包まれながらも陽気な音楽や色鮮やかな建物、立ち込める美味しそうな香りはこの場に立ってるだけで愉しさを感じる。
「しかし、」
さっきからやたらと目に入るものがあった。
英雄や救世主、伝説といったキーワード。
路の上り旗に店の看板にお土産にやたらとその言葉が目立っている。
「看板にも英雄の街と書かれていたが、なにか凄い街なんだろうか」
「英雄ロールパンに伝説クレープ、勇者のジャケットに聖女の香水……これでもかというくらい英雄ワード推してますね」
「薬の研究ばかりしてたせいかこういう歴史モノにうんと弱いからこういう時のアウェー感がヤバい」
「同じく」
「なんだいお嬢さんたち知らないのかい!? この街の伝説を!」
突然声をかけられた。
「「誰なんだあんた一体!?」」
「通りすがりの街の伝説を説明をするオッサンさ!」
なんて便利!
ということで伝承を聞くことに。
~アンゼリカの英雄伝説~
ちょうど百年前。
この世界には百年間続く大きな戦争があった。
【魔の百年戦争】と呼ばれ、魔物を統べた魔王軍が人々を恐怖で脅かし各地で魔物による被害がたくさん出た。
……しかし二人の救世主が現れたことより魔王は倒された。
“勇者・トグルマ”と“聖女・ローズマリー”。
この二人によって百年続いた戦争が終わりを告げた。
世界に平穏が訪れたのだった。
~完!~
「……へぇーそんな伝説が」
「僕らの生まれる前にそんな大きな戦いがあったんですね」
百年前。確かに祖父さんも生まれてない。
「魔物は名残として残っているものの、魔王を失って然程強くなくなった。我々でも頑張れば倒せるくらいにな」
話し終わるとオッサンはうんうん、と首肯く。
「勇者殿と聖女様のおかげで世界は平和になった。英雄の街と唱われるこの街はそんなトグルマ勇者とローズマリー聖女の生まれ故郷なのさ。トグルマ殿とローズマリー様。二人は我々の誇るべき英雄だ。平和になった現在は観光名所として、二人にちなんだお土産や商品が多く売られている」
「なるほどね。だからこんなに英雄や伝説にちなんだ商品が多いんだ」
「ご利益もありそうですしね。良いなあ。僕たちも旅の験担ぎに何か買っていきましょうか」
「だから資金ないんだってば……でもそうだね。少し買ってみる?
私、聖女のシャンプー気になってたんだよね」
伝説を聞き二人で盛り上がっていると、
「くだらない……」
「え?」
「ダミ子さんどうしました?」「いや今声が……」
気のせいか? ぽそっと呟くような声が聞こえた気がしたような。
? まあいいか。
「そうだ。それよりバイト先探さなきゃ」
ダミ子たちは最もお店が多い通りに出向いていった。
その一言で始まった。
「は?」
「資金がない」
もう一度言うと、ダミ子はマースにこっち、と手招きした。
机上に広げられた世界地図を見せる。
「ていうか凄い隈ですよダミ子さん」
「昨夜フワワ亭のご主人に最新版の地図を貰ったんだ。グゥスカで貰った地図は旧版でわかりにくいんでね。見て。ここが、私たちの、現在地」
指をさす。
地図上では南西の位置。
「んで、【スカピー火山】がここ」
ついー~~っ。
指の線が引かれ、さされたのは地図上でも最も上に記された遥か北の方。
「うわ遠っ」
「遠いでしょ。でも、私たちはここへ行かなくてはなりません」
「なぜ敬語。あ、でもだったらスカピー火山を後にして、先に【イバラの森の魔女の涙】を集めるのもありなんじゃ」
ところがどっこい!
ダミ子は寝不足の目をカッと見開く。寝不足による情緒不安定。
「【イバラの森】なんだが……どこ探しても載ってないんだよ。あれか? 秘境の地ってヤツ? まーだからこっちが後。行く先の人々に聞いてみるしかない状態」
「うへぇー。一つは場所不明、もう一つはめっちゃ遠い場所……」
「消去法でとりあえず場所がわかる【スカピー火山】が先。で、冒頭に戻る」
「資金が、ないと?」
「問題がこれだ」
【スカピー火山】の位置にのった指を手前にスライド。そこにはもう一つデッカイ山があった。
「この手前のコックリ谷を越えてかねばならない。ここは歩いてくのが難解で馬車が必要になる」
『コックリ谷を越えるには馬車を使うのが定石だよ~』とフワワ亭ご主人談。
だが。
「馬車の料金が高くてこのままでは一人も乗れない」
「ええぇー」
「ということで働くぞ」
「ええぇ……?」
「大都市まで行って資金を稼ぐ。今日から私たちはアルバイターだ!」
「ええぇー!?」
薬剤師(とその助手)、フリーターになる。
ということでダミ子たちが数日かけて着いたのは、南西から東へ進んだ先にある大都市。
【英雄の街・アンゼリカ】だった。
「ここなら働き口の一つや二つあるだろう」
「完全に脇道それた感がありますね僕ら」
「賑わってるなー(無視)。さすが大都市。グゥスカ王国と変わらん」
道行く人々の数はかなり多く、どこも活気を見せている。喧騒に包まれながらも陽気な音楽や色鮮やかな建物、立ち込める美味しそうな香りはこの場に立ってるだけで愉しさを感じる。
「しかし、」
さっきからやたらと目に入るものがあった。
英雄や救世主、伝説といったキーワード。
路の上り旗に店の看板にお土産にやたらとその言葉が目立っている。
「看板にも英雄の街と書かれていたが、なにか凄い街なんだろうか」
「英雄ロールパンに伝説クレープ、勇者のジャケットに聖女の香水……これでもかというくらい英雄ワード推してますね」
「薬の研究ばかりしてたせいかこういう歴史モノにうんと弱いからこういう時のアウェー感がヤバい」
「同じく」
「なんだいお嬢さんたち知らないのかい!? この街の伝説を!」
突然声をかけられた。
「「誰なんだあんた一体!?」」
「通りすがりの街の伝説を説明をするオッサンさ!」
なんて便利!
ということで伝承を聞くことに。
~アンゼリカの英雄伝説~
ちょうど百年前。
この世界には百年間続く大きな戦争があった。
【魔の百年戦争】と呼ばれ、魔物を統べた魔王軍が人々を恐怖で脅かし各地で魔物による被害がたくさん出た。
……しかし二人の救世主が現れたことより魔王は倒された。
“勇者・トグルマ”と“聖女・ローズマリー”。
この二人によって百年続いた戦争が終わりを告げた。
世界に平穏が訪れたのだった。
~完!~
「……へぇーそんな伝説が」
「僕らの生まれる前にそんな大きな戦いがあったんですね」
百年前。確かに祖父さんも生まれてない。
「魔物は名残として残っているものの、魔王を失って然程強くなくなった。我々でも頑張れば倒せるくらいにな」
話し終わるとオッサンはうんうん、と首肯く。
「勇者殿と聖女様のおかげで世界は平和になった。英雄の街と唱われるこの街はそんなトグルマ勇者とローズマリー聖女の生まれ故郷なのさ。トグルマ殿とローズマリー様。二人は我々の誇るべき英雄だ。平和になった現在は観光名所として、二人にちなんだお土産や商品が多く売られている」
「なるほどね。だからこんなに英雄や伝説にちなんだ商品が多いんだ」
「ご利益もありそうですしね。良いなあ。僕たちも旅の験担ぎに何か買っていきましょうか」
「だから資金ないんだってば……でもそうだね。少し買ってみる?
私、聖女のシャンプー気になってたんだよね」
伝説を聞き二人で盛り上がっていると、
「くだらない……」
「え?」
「ダミ子さんどうしました?」「いや今声が……」
気のせいか? ぽそっと呟くような声が聞こえた気がしたような。
? まあいいか。
「そうだ。それよりバイト先探さなきゃ」
ダミ子たちは最もお店が多い通りに出向いていった。
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