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第3章:【世界で一番働き者の爪の垢】

20.【世界で一番働き者の爪の垢】ゲット!そして……

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「……ん」
「お。起きたか」
机の縁に腰掛けたディルがこちらを覗いていた。
「今何時……?」
「朝七時。タン・トーはもう原稿持ってったよ。ぐっすりお休みになられたようで」

どうやら机に向かったまま爆睡してしまったらしい。
隣の机でもマースが顔を突っ伏したまま眠っていた。
「お疲れさん。お前らのお蔭で書類作業進められたし原稿も締切に間に合った」
ありがとう、朝の陽射しのような爽やかな笑みでディルは感謝を伝えた。

机の上を見ると小さな小瓶が置いてある。

「約束通り爪の垢。もってけ」


【世界で一番働き者の爪の垢を手に入れた!】


「さすが仕事が早いな」
「アシスタントたちには俺からお前らが旅立つこと伝えとく」
「アシスタントさんたちは?」
「仮眠室。奴らも身体酷使したからな。俺も仮眠とる。さすがに凄ぇ眠い」
シャツの裾上げ腹をかきながらあくびをする。
「チュー太起こしてさっさと行きな。後は俺たちの仕事だ。どうにかする」

「ディル」
襖に手をかけた彼の名を呼んだ。

「んだよまだ何かあるのか」

「ありがとう」
「!」

感謝の気持ちを伝えた。

「割りと楽しい職場だった。漫画、応援してるよ」

その言葉を聞きディルは照れ臭そうに他所を向いて。
「あっそ」
ぴしゃんと襖を閉めた。
「かわいいヤツ」

ダミ子は知らない。
仮眠室にいるアシスタントたちがこれまでの会話を聞いて顔をニヤけさせ、部屋に入ってくるディルを待ち構えていたこと。
次の作品はラブコメが良いと全員から提案され彼が職場で大暴れしたことを。


マースを起こし二人はテツヤ村を後にした。
草原に立つ看板をなぞりマースが言った。

「なんだか変わった村でしたね」
「でも楽しかった」彼は呟く。

朝の爽やかな風が草原の草を光らせ髪をすくった。
なんとなく清々しい気持ちだった。

「私たちの知らない世界がたくさんあるってことだな。いかに自分たちの見聞が狭いかだ」
「そうですね……こうして世界を旅してなければ知ることがなかった」



「“あの国”に居たままでは得られなかった感動だってかい?」



声が空から降りかかってきた。

「そんな白衣ものに袖を通すなんて落ちぶれたものだな。お前には黒が似合うというのに」


「な……人!?」

見上げた空には箒に乗る青年がこちらを見下ろしていた。
黒いマントをひらつかせ登場したのはブロンドの髪が輝く青年。赤い瞳が輝いている。

「!!  お前は」
「やあマース。久しぶり」

「“タイム”!!」


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