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(……あぁ~ダルい。帰りたぁい。早くこんな奴らとは別の場所でスイーツ食べたい)
メルトは味のしないスイーツを一口、紅茶を一ミリずつ吸いながらメルトはそんなことばかり考えていた。
先ほどから高笑いに加え自分に対する攻撃的な言葉が増えてきた。言葉の弾丸はメルトの右耳から左耳へ、あるいは左耳から右耳へ突き抜けていく。
突き抜けているので対してダメージは受けてないがそれにしたって気が滅入る空間だ。
そもそも同年代のかしましい集まりがメルトは一番苦手だ。
「フィナンシェあと今何分」
「三時二十分です。メルト様まだ始まったばかりですよ」
「地獄すぎる」
「あと二時間の辛抱です。どう過ごしたって時は平等、お茶会も必ず終わります」
「だから死ぬほど長く感じるのが苦痛なんだってば……」
あーやっぱり来るんじゃなかった。
こういう時あいつのバカな顔が浮かぶ。ビターとの訳もない憎まれ口の応酬がどれ程気楽か。
「やっぱビターたちについて来てもらえばよかった、なんてことは絶対思わないけど」
あいつらのことだ。メルトがお願いすれば例え制限ありの会場でも草むらに隠れてでも潜入してくれただろう。
「あいつらが来たらろくなことにならないもん」
ふ、とメルトが鼻で嗤った先に、
「遅れてごめぇんあそばァせェェぇ~ッ!」
なんか走ってきた。
金髪縦ロールに厚化粧がヤバい出で立ちの姫らしき者と不自然なくらいくるくるパーマのかかる牛乳の瓶底眼鏡(髭つき)をかけた燕尾服を着た執事らしき者がやって来た。
「待たせたな! 俺たちトッピング王国の」
「俺たちって言うなバカ者!!」
執事が金髪ロールの頭をぶった。
「いでェ! テメー姫に向かって何すんだアア!?」
「バカか貴様は! どこにそんな挨拶する姫君がいるのだ!!」
あ。ビターとカヌレだ。
メルトは不審者が変装した二人であることに秒で気づいた。
「なにこの不審者たち!?」
「怪しすぎるわ!」
「貴方たち何者ですの!?」
またもや阿鼻叫喚の姫たちにビター(金髪ロール)は怯まない。
「あァ~らご存じなくて?」
明らかに不自然な膨らみを持つ胸の部分をぶるんッと震わせて金髪ロールの姫(ビター)は裏声で高らかに叫ぶ。
「私《ワタクシ》たちデコレート王国と親交のある由緒正しき離島にある島国【トッピング王国】の者ですわ!」
『はあ? トッピング王国?』
その場にいる者たち全員が首を傾げる。
「そう! 私はトッピング王国姫“ヌガー”。隣にいるのは執事の“クグロフ”よ!」
ぺこりとクグロフと呼ばれた方が一礼する。
「そんな国聞いたことないわ!」
「どこにそんな国があるのよ! でっち上げじゃないの!?」
強気に言い返すホイップ姫とアラザン姫に、
「あァらぁぁ? 貴方たち一国の姫なのにトッピング王国の存在を知らないなんてさすが小国。井の中の蛙でげすわねぇ」
語気も時々怪しいが、プライドをつつかれた姫たちはそれどころでなく、
「は? し、知ってるわよ。ト、トッピング王国でしょ」
「あぁ! そんな国あったわね!」
チョロかった。とんでもなくチョロいわこの人たち。
姫たちはまんまとビターのノリにのってしまっていた。
「そしてお待たせ、これが私たちトッピング王国の自慢の品【ギリギリシャヨーグルト】ですわ」
ドーン!
でっかい容器にただ盛っただけのヨーグルトを出す。僅かにジャム。明らかに市販のヨーグルトにジャムをのせただけだった。
「ちょっと! 何がギリギリシャヨーグルトよ! ただのヨーグルトじゃないの!」
「適当なこと言わないでちょうだい!」
「オーホッホッホ! 食べてみたらこの美味しさ分かるんじゃなくて? これが市販と思うなら一国の姫の舌もたかが知れてますわね」
そう言ってスプーンを渡す。
「そ、そう言われれば」
「市販よりも美味しい気もしなくもないわ……」
本当に扱いやすい人たちで助かった。プライドが高すぎるのも問題だなとメルトは彼女らを見て学んだ。
「ということで私たち途中からですがお茶会に参加することになったので夜露死苦ゥ!!」
「「「ひいいぃぃぃ!」」」
がに股でテーブル席まで足を運ぶビターに姫たちは一歩退いた。
***
よし成功成功!
姫たちや執事たちの目は怪しんではいるもののなんとか潜入には成功した。
「よ、元気か」
一番隅に座るメルトの隣に椅子を持ってきて腰かけると、隣のメルトに「アホが」と冷たい目で睨まれた。ええぇー。
「同じ島国なのに存在知らなくてゴメンヨー。仲良くしようナ」
「お、おう」
グラニュー島の王女がこちらへ来て握手を求めてきた。やべ、こいつも島国だった。
ほんわかしてるがいまいち油断できない相手だな。敵意がないようだが要注意。
メルトは味のしないスイーツを一口、紅茶を一ミリずつ吸いながらメルトはそんなことばかり考えていた。
先ほどから高笑いに加え自分に対する攻撃的な言葉が増えてきた。言葉の弾丸はメルトの右耳から左耳へ、あるいは左耳から右耳へ突き抜けていく。
突き抜けているので対してダメージは受けてないがそれにしたって気が滅入る空間だ。
そもそも同年代のかしましい集まりがメルトは一番苦手だ。
「フィナンシェあと今何分」
「三時二十分です。メルト様まだ始まったばかりですよ」
「地獄すぎる」
「あと二時間の辛抱です。どう過ごしたって時は平等、お茶会も必ず終わります」
「だから死ぬほど長く感じるのが苦痛なんだってば……」
あーやっぱり来るんじゃなかった。
こういう時あいつのバカな顔が浮かぶ。ビターとの訳もない憎まれ口の応酬がどれ程気楽か。
「やっぱビターたちについて来てもらえばよかった、なんてことは絶対思わないけど」
あいつらのことだ。メルトがお願いすれば例え制限ありの会場でも草むらに隠れてでも潜入してくれただろう。
「あいつらが来たらろくなことにならないもん」
ふ、とメルトが鼻で嗤った先に、
「遅れてごめぇんあそばァせェェぇ~ッ!」
なんか走ってきた。
金髪縦ロールに厚化粧がヤバい出で立ちの姫らしき者と不自然なくらいくるくるパーマのかかる牛乳の瓶底眼鏡(髭つき)をかけた燕尾服を着た執事らしき者がやって来た。
「待たせたな! 俺たちトッピング王国の」
「俺たちって言うなバカ者!!」
執事が金髪ロールの頭をぶった。
「いでェ! テメー姫に向かって何すんだアア!?」
「バカか貴様は! どこにそんな挨拶する姫君がいるのだ!!」
あ。ビターとカヌレだ。
メルトは不審者が変装した二人であることに秒で気づいた。
「なにこの不審者たち!?」
「怪しすぎるわ!」
「貴方たち何者ですの!?」
またもや阿鼻叫喚の姫たちにビター(金髪ロール)は怯まない。
「あァ~らご存じなくて?」
明らかに不自然な膨らみを持つ胸の部分をぶるんッと震わせて金髪ロールの姫(ビター)は裏声で高らかに叫ぶ。
「私《ワタクシ》たちデコレート王国と親交のある由緒正しき離島にある島国【トッピング王国】の者ですわ!」
『はあ? トッピング王国?』
その場にいる者たち全員が首を傾げる。
「そう! 私はトッピング王国姫“ヌガー”。隣にいるのは執事の“クグロフ”よ!」
ぺこりとクグロフと呼ばれた方が一礼する。
「そんな国聞いたことないわ!」
「どこにそんな国があるのよ! でっち上げじゃないの!?」
強気に言い返すホイップ姫とアラザン姫に、
「あァらぁぁ? 貴方たち一国の姫なのにトッピング王国の存在を知らないなんてさすが小国。井の中の蛙でげすわねぇ」
語気も時々怪しいが、プライドをつつかれた姫たちはそれどころでなく、
「は? し、知ってるわよ。ト、トッピング王国でしょ」
「あぁ! そんな国あったわね!」
チョロかった。とんでもなくチョロいわこの人たち。
姫たちはまんまとビターのノリにのってしまっていた。
「そしてお待たせ、これが私たちトッピング王国の自慢の品【ギリギリシャヨーグルト】ですわ」
ドーン!
でっかい容器にただ盛っただけのヨーグルトを出す。僅かにジャム。明らかに市販のヨーグルトにジャムをのせただけだった。
「ちょっと! 何がギリギリシャヨーグルトよ! ただのヨーグルトじゃないの!」
「適当なこと言わないでちょうだい!」
「オーホッホッホ! 食べてみたらこの美味しさ分かるんじゃなくて? これが市販と思うなら一国の姫の舌もたかが知れてますわね」
そう言ってスプーンを渡す。
「そ、そう言われれば」
「市販よりも美味しい気もしなくもないわ……」
本当に扱いやすい人たちで助かった。プライドが高すぎるのも問題だなとメルトは彼女らを見て学んだ。
「ということで私たち途中からですがお茶会に参加することになったので夜露死苦ゥ!!」
「「「ひいいぃぃぃ!」」」
がに股でテーブル席まで足を運ぶビターに姫たちは一歩退いた。
***
よし成功成功!
姫たちや執事たちの目は怪しんではいるもののなんとか潜入には成功した。
「よ、元気か」
一番隅に座るメルトの隣に椅子を持ってきて腰かけると、隣のメルトに「アホが」と冷たい目で睨まれた。ええぇー。
「同じ島国なのに存在知らなくてゴメンヨー。仲良くしようナ」
「お、おう」
グラニュー島の王女がこちらへ来て握手を求めてきた。やべ、こいつも島国だった。
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