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もう少し、このままでⅠ
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レイ様に手を引かれて連れていかれたのは北の宮。
手紙が来たあとの二週間後。
花の開花とレイ様の予定とリッキー様の授業の後でという私のわがままな理由とをすり合わせながら、決まったのが今日でした。
何か良いことでもあったのかしら?
レイ様の端正な横顔に笑みが浮かんでいて、ご機嫌な様子が窺えます。
「んっ? どうしたの。俺の顔に何かついてる?」
あまりにも見つめすぎたのか、レイ様が私の顔を不思議そうにのぞき込みました。
レイ様のきれいな菫色の瞳が視界いっぱいに広がります。
ドキッと心臓が跳ねました。
「あっ。いえ、なんでもありません」
急に至近距離で見つめるなんて反則です。
私は慌てて目をそらしました。ドキドキと高鳴る鼓動を抑えるように何度か息を吐きだします。
レイ様の美貌は破壊力がありすぎます。何度もお会いして少しは慣れたかと思っていたのですが、不意打ちには耐性ができていません。
「そう? 顔が赤いけど、熱でもあるんじゃないの? 具合が悪いとか……だったら、無理せずに今日は」
「大丈夫です。熱はありませんし、元気にピンピンしています」
まさか、レイ様に見惚れてましたって言えませんもの。顔も赤くなっているなんて……
私は握られている手の反対側の手を頬に当てました。心なしか少し熱いような……
ドキドキしすぎて顔が火照ってしまったのでしょうか。恥ずかしいわ。
「本当に大丈夫?」
「はい」
レイ様が心配そうに首をかしげてさらに覗き込んできます。
気遣うように見つめる瞳に、きゅうと胸が締め付けられたような思いが心の中によぎりました。
慣れない感覚に言葉を失っていると急にフワッと体が浮いて、レイ様の腕の中におさまっていました。
「あの……レイ様? 私は大丈夫ですよ。なんともありません」
私が黙っているものだから、具合が悪いと勘違いさせてしまったのかしら?
それは申し訳ないわ。すぐに下ろしてもらわなければ。
「レイ様、すみません。私は元気ですから、一人で歩けますよ」
「ダーメ。怪我でもさせたら大変だからね」
怪我って、そんな大袈裟な……
「過保護過ぎますよ。目の離せない小さな子供でもないのですから、甘やかさないでくださいませ」
「甘やかしてないし、普通の行動だよ」
普通って、お姫様抱っこがですか?
訝し気に見てみれば自信満々に満面の笑み。
それって、なんとなく、あまり信用できないような……
レイ様の普通って、他の人たちにも当てはまるのかしら?
婚約者のいるディアナに聞いてみれば分かる? 相談してみようかしら。
そんなレイ様の常識を疑いつつも、抵抗する手段を持ち合わせていない私には、従う以外は術はないのですよね。
いくら理屈をこねて言ったとしてもレイ様にはかなわない気がします。結局、最後は丸め込まれるのがオチですもの。
「しょうがないですね。今回はレイ様の普通におつきあいします」
ここは早々に降参して白旗をあげる方が得策でしょう。
私の言葉に一瞬目を見開いて驚いた表情をしたレイ様は、満足したのかすぐに相好を崩しました。
その一瞬のにこやかなレイ様にまたもやドキッと胸が高鳴りました。
本当に今日はどうしたのでしょう?
久しぶりに会ったからでしょうか?
戸惑う気持ちを隠したくてレイ様の胸に体を寄せました。
歩くたびに微かに揺れる振動が心地よくて、安心している自分に気づかないまま。
ましてや、抱き着く私を愛おしそうに見つめるレイ様の眼差しが降り注いでいることなど、気づくはずもありませんでした。
手紙が来たあとの二週間後。
花の開花とレイ様の予定とリッキー様の授業の後でという私のわがままな理由とをすり合わせながら、決まったのが今日でした。
何か良いことでもあったのかしら?
レイ様の端正な横顔に笑みが浮かんでいて、ご機嫌な様子が窺えます。
「んっ? どうしたの。俺の顔に何かついてる?」
あまりにも見つめすぎたのか、レイ様が私の顔を不思議そうにのぞき込みました。
レイ様のきれいな菫色の瞳が視界いっぱいに広がります。
ドキッと心臓が跳ねました。
「あっ。いえ、なんでもありません」
急に至近距離で見つめるなんて反則です。
私は慌てて目をそらしました。ドキドキと高鳴る鼓動を抑えるように何度か息を吐きだします。
レイ様の美貌は破壊力がありすぎます。何度もお会いして少しは慣れたかと思っていたのですが、不意打ちには耐性ができていません。
「そう? 顔が赤いけど、熱でもあるんじゃないの? 具合が悪いとか……だったら、無理せずに今日は」
「大丈夫です。熱はありませんし、元気にピンピンしています」
まさか、レイ様に見惚れてましたって言えませんもの。顔も赤くなっているなんて……
私は握られている手の反対側の手を頬に当てました。心なしか少し熱いような……
ドキドキしすぎて顔が火照ってしまったのでしょうか。恥ずかしいわ。
「本当に大丈夫?」
「はい」
レイ様が心配そうに首をかしげてさらに覗き込んできます。
気遣うように見つめる瞳に、きゅうと胸が締め付けられたような思いが心の中によぎりました。
慣れない感覚に言葉を失っていると急にフワッと体が浮いて、レイ様の腕の中におさまっていました。
「あの……レイ様? 私は大丈夫ですよ。なんともありません」
私が黙っているものだから、具合が悪いと勘違いさせてしまったのかしら?
それは申し訳ないわ。すぐに下ろしてもらわなければ。
「レイ様、すみません。私は元気ですから、一人で歩けますよ」
「ダーメ。怪我でもさせたら大変だからね」
怪我って、そんな大袈裟な……
「過保護過ぎますよ。目の離せない小さな子供でもないのですから、甘やかさないでくださいませ」
「甘やかしてないし、普通の行動だよ」
普通って、お姫様抱っこがですか?
訝し気に見てみれば自信満々に満面の笑み。
それって、なんとなく、あまり信用できないような……
レイ様の普通って、他の人たちにも当てはまるのかしら?
婚約者のいるディアナに聞いてみれば分かる? 相談してみようかしら。
そんなレイ様の常識を疑いつつも、抵抗する手段を持ち合わせていない私には、従う以外は術はないのですよね。
いくら理屈をこねて言ったとしてもレイ様にはかなわない気がします。結局、最後は丸め込まれるのがオチですもの。
「しょうがないですね。今回はレイ様の普通におつきあいします」
ここは早々に降参して白旗をあげる方が得策でしょう。
私の言葉に一瞬目を見開いて驚いた表情をしたレイ様は、満足したのかすぐに相好を崩しました。
その一瞬のにこやかなレイ様にまたもやドキッと胸が高鳴りました。
本当に今日はどうしたのでしょう?
久しぶりに会ったからでしょうか?
戸惑う気持ちを隠したくてレイ様の胸に体を寄せました。
歩くたびに微かに揺れる振動が心地よくて、安心している自分に気づかないまま。
ましてや、抱き着く私を愛おしそうに見つめるレイ様の眼差しが降り注いでいることなど、気づくはずもありませんでした。
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