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1章

第一話 帝国のせいでうちの領地は全然発展しない

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  大陸歴204年 3月 ロレーヌ地方

辺境伯の跡継ぎのアルヴィン・チャールトンはアテナ王国の王都で貴族学校を卒業し、領地に戻ってきた。
「アルヴィン様おかえりなさいませ。」
出迎えたのは複数人のメイドと父の秘書であった。
「アルヴィン様、帰って来たばかりで申し訳ございませんが辺境伯様がお呼びです。」
「分かった。今すぐ父の部屋に行くよ。」

「父上、入ります。」
「懐かしいな。3年ぶりか。学校は首席で卒業したんだってな。」
「はい、父上の役に立つために努力しました。」
「それは嬉しいことだ。だが私はもう隠居することにする。」
「なっ、どうしてですか。私はまだ学校を卒業したばかり。」
「実はな、私、今の王とは仲が悪い。前代の時は功績を上げてそれなりの地位だったんだが、嫌われているんだ。だから早めに隠居することにした。これからはお前が領地経営するつもりでいてくれ。」
「わかりました。」

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      4月 チャールトン家館
「キース、3年前よりも赤字が膨らんでいるぞ。軍事の出費が多いな。盗賊団の根城でもあるのか。」
「それが、我が領地の北部にある山で金が出まして、それを狙って盗賊団が度々襲うのですが我が軍の兵は盗賊団を見ていないようなのです。兵士が自分の懐に入れているのかと疑いましたがそうではありませんでした。」
「盗賊団が優秀ということか、それはないそこまで優秀なら国に雇われた方が安全で稼げる。帝国の兵士が略奪しているのかもしれない、周辺の調査と守りを強化しておくよう言ってくれ、私もその金山の視察を兼ねて調べたい。」
「はい、では調査をすることも考えたら護衛は100人ほどにしましょうか。」

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「金山までもう少しです。今夜は山の麓にある町に泊めてもらいましょう。」
「わかった、私は市長に話をしてくる。」
山の麓にある町は金が発見された当初こそゴールドラッシュの状態だったが盗賊団の襲撃が多くなり町の発展がしにくくなっている。
「殿下、よく来てくださいました。私は市長のエドガーと申します。」
「アルヴィンだ。よろしく。早速だが盗賊団についての情報を知りたい。」
「盗賊団はここ最近は2ヶ月に一回のペースで襲撃してきます。ですので今週にもまた来ると思います。」
「盗賊団の規模は、何人くらいで構成されているか分かるか。」
「盗賊団はあまり大きな規模ではないと思います。毎回盗まれる金も少ないですし、見つけてもすぐににげられていまうので。」
「そうか、警備はどのようにしている。」
「40人ほどで警備しています。坑道入り口はたくさんありまして、整備されていない入り口もあります。そこまで監視しきれず。」
「わかった。今週中は警備を200人に増やそう。経費は私が持つ。男手を集めてくれ。」
「お金を出してくれるのですか。ありがとうございます。盗賊団をすぐにでも捕まえましょう。」
「そうだな、私はもう寝るとする。」
「それでは部屋に案内させていただきます。」


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