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191 現実

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「ルネ、一寸いいか?」

「はい。」

夜の勉強前にアルが急に真面目な顔で俺呼ぶ。
勉強道具を取りに行こうとしていた足を止めソファーに戻りアルの隣に座る。

アルは俺を呼び戻し座らせても少し怖い顔をして黙っている。
俺はアルを怒らせる様な事をした?又は困らせる様な事をしただろうか?

俺が思い付かないで悩んでいるとやっとアルが口を開いた。

「ルネ。・・・・。」

「・・・はい。」

少し黙り意を決した顔で俺を見つめ「少し待っててくれ。」そう言うと執務室に行ってしまった。アルが何を言いたいのか又悩んでいるとアルは見覚えのある物を手に持って戻って来た。

『・・・それ・・・・。』

「ルネが持っていた物だ。」

俺の隣に戻ったアルはそれを俺に渡した。
それは確かに旅行最終夜の夕飯を食べに行く時に持っていた物、俺がこの世界に来た時に持っていたはずの物。俺はそれどころではなかったから忘れていた。吸い込まれた時に向こうに落として来たと思っていたから気にも留めてなかった。

震える手でそっと開ける。
中には確かに入れていた財布・手ぬぐい・ポケットティッシュ・金平糖・カメラそして、携帯電話が入っていた。

1月以上充電していなかったから点かないと思いながらも電源を入れる点けと祈りながら・・・。
すると意外な事に電源が落ちていたからか無事に起ち上がった。無理と解っていても父さんに電話するがお決まりのアナウンスが流れた「電源が入っていないか電波が届かない為繋がりません」

解っていた。
ここはどう考えたって異世界。
電波が届いている訳がない。

アルバムを開き最後に撮った家族写真を見る。
誰もが笑顔で楽しそうな顔で映っている写真。

こんな事になるとは全く考えてなかった楽しい時間。
休み明けを考えて一寸億劫になっていた時間。
忙しい父さんを心配していた時間。


俺は生まれて初めて大声を出して泣いた。
2度と逢う事の家族をおもって・・・。


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