欲望のままに

姫川 林檎

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あまい誘惑 3

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「ごめんなさい。俺、先輩の事「いいんだ!」・・・」

「聞いてくれただけで、OK貰えるとは思ってなかったし・・・ありがとう。じゃっ!!」

「先輩!・・・」



「失礼します。歩?どうしたの?」

「京一せんぱ~い。」

京一先輩に抱きつき頭を撫でて貰う。少し落ち着いてきたかも・・・流石!俺の癒しスポット。

「何があったの?・・・また告白されたの?」

コク。

「そっかぁ」

「先輩もう少し早く来てれば見れたのに。教室で告白勇気ありますよね!そうだ!聞いてください!篠原君これで全運動部の部長・キャプテン制覇したんです!完全制覇です。」

完全制覇嬉しくない・・・。何で俺なんだよ・・・

「そうかぁ。どうしようかな未だ言うつもりはなかたんだけど・・・」

「?」

俺を抱き締めながらブツブツ言ってるけどよく聞こえないが何か悩んでいるみたい。
京一先輩の腕の中から見上げると先輩と目が合った。すると何かを決心したのか、俺を離し手を握って来る。いつになく真剣な眼差しにドキドキしながら先輩が何かを言うのを待った。

合っていた視線を外し、ゆっくり息を吐くと見た事もない熱い眼差しで見つめて来た。

「歩、君が好きだ。僕と付き合って欲しい。」

「「「「「!?」」」」」」

先輩が俺の事を好きなのは知っていた。けど、それは被写体として友としてだとずっと思っていた。
この告白が他の人に告白されない為のものではなく、真剣に俺の事を思って言ってくれてる事は解る。

俺は・・・

俺は先輩の事は嫌いではないむしろ好きだ。先輩は俺の話をちゃんと最後まで聞いてくれる。俺の嫌がる事はしない。俺の事を甘やかしてくれるしちゃんと叱ってもくれる。人として男として尊敬してる、これが恋愛感情かは判らないけど、先輩以外の人と付き合いたいとも思わない。なら、俺の答えは一つだ!

「はい。よろしくお願いします。」

笑顔で答えた。

先輩は強く俺を抱き締めると俺の肩に顔を埋め大きく息を吐いた。

「良かった・・・。断られるとは思わなかったけど、本当にOKしてくれるとは・・・良かった。」

本当に安心したそんな声だ。
この京一先輩の腕の中は癒されるし安心する。これで頭を撫でられたら完璧だ。
俺達が幸せにしたっていると、菅が質問してくる。

「篠原って男NGじゃないの!?」

「それは違うよ。確かに歩は女の子の方が好きだけど、性別はあまりこだわってないかな。今まで断っていたのは、だからだよ。」

「知らない人って言っても殆んどが個人成績の良い運動部の人気部長やキャプテンとか学年首席とか、有名人ばかり・・・」

「歩にはだね。そういうのに興味ないからね。だから断った。けど、歩の話を最後まで聞けば結果は変わってかもしれないけどね。」

「どうゆう事ですか?」

二人の話をクラス中が注目している。廊下の人までもが・・・。余りの恥ずかしさに先輩の胸に顔を埋めながら話を聞いていた。

「菅君もいきなり知らない人から告白しても『君の事知らないからごめんね。』って断るでしょ?だから、まず友達でもいいですか?って聞く前に皆居なくなっちゃうから、もし、友達からでもいいと言っていれば今ここで歩を抱き締めているのは他の人かも知れないね。」

「つまり、知らないから断った。けど、友達になって仲良くなれば答えは違ったかも知れないって事ですか?」

先輩は苦笑いで頷いた。
そうかも知れない。告白してくれた人達の中に仲良くなれた人もいたかも知れない。けど、だからと言ってその人と付き合っただろうか?確かに好きになれば性別はあまり気にしないけど、出来れば男より女の子の方が好ましい。そう考えるとやっぱり・・・

「京一先輩、それでも俺は先輩を選ぶと思う。京一先輩が俺の顔を好き過ぎて恋愛感情があるとは思えなかったからそんな風に考えた事なかったけど、俺から抱き着くのは将人と京一先輩だけだし。将人は家族みたいなもんだし、そう考えると無意識の内で京一先輩を好きだったんだと思う。」

そうなのだ、俺は最初から京一先輩に頭を撫でられるのが好きだったし、先輩を見付けると直ぐに抱き着いていた。勿論慰めて欲しいってのもあるけど、その慰める事だって他の人ではなく京一先輩に甘えていた。俺は早い段階から俺に甘く厳しい京一先輩が好きだったんだ。

「顔真っ赤、可愛い・・・。あぁ、午後の授業なんて出ないでずっと歩を描いて居たい。」

先輩は俺の頬を挟んで恍惚とした顔で見つめて来る。先輩に見つめられるのは慣れているけど、この顔は恥ずかしい。「授業は出てください。」と言うのがやっとだった。

「けど、これからセ○ムと別行動だと危険じゃないか?」

よく痴漢に会う俺を心配して聞いて来た。
痴漢によく会うから今までは将人の朝練の時間に合わせて一緒に通っていた。何人か捕まえたのも将人だ。けど、これからは彼氏が居るならあまり一緒に居ると不安にさせると思ったんだろうけど、先輩は将人と俺の関係を正しく理解しているにで多分疑わないと思う。それに、

「京一先輩は合気道の有段者。」

そう、将人の言う通り歩き始めた頃からやっているらい、高2で師範という実力の持ち主。

「京一先輩は強い。今までに何回も仕掛けようとしたがこちらの殺気に気付かれる。『ここでは危ないよ。』と言われたから俺の気持ちには気付いてたと思う。」

「お前は何をしてるんだ・・・。」

菅に同意。お前は俺の知らない所で勝負を挑むな・・・。
「強い人とはやってみたい。」とふてくさりながら呟いている。こいつは確実に負ける相手でも強い相手には挑みたがる。だから京一先輩とやりたがるのは当然か・・・。

将人達がそんな話をしている間に先輩が覚醒したのか、さっきまでとは違い優しい笑顔で頬を挟んでいた手を外し、左手で腰を抱き寄せ右手で俺の顎をクイっと上げると今まで見てきた優しい笑顔と違い、初めて見る男らしく格好良い色気のある笑顔で、

「歩、これからは俺がお前を守るから。」

「「「「「「!?」」」」」」」

キーンコーンカーンコーン

「あっ、時間だね。じゃあ又放課後部室でね。チュッ。」

俺の額にキスをして何事もなかったかの様に教室を出て行った。

まるで乙女の様に真っ赤な顔で腰が砕けてその場に座り込んでしまっても何ら不思議はないはず。


誰だあいつは!!??


「先輩ってあんなに格好良かったっけ?凄いドキドキした!」  
「好きになっちゃいそう。速攻失恋?」
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