欲望のままに

姫川 林檎

文字の大きさ
上 下
14 / 96

忠犬ハチ公 2

しおりを挟む
「おはようございます!」

「「えっ?」」

なんで八木君が駅に居るの?彼は確か自転車通学のはずでは?

「どうしてお前が居る?」

「えっと・・・その、自分は学年も違うし電車通学でもないので少しでも一緒に居たくて・・・迷惑ですか?」

うぅ、
その顔やめろ!まるで俺が悪いみたいじゃないか犬を虐待してるみたいな気分になるから本当にやめて欲しい。

「何時からここに居たんだ?」

「あっでも10分前からです。昨日先輩方が学校に着いた時間と駅からの距離を考えてこの時間かな?って思って、これ以上は朝の支度とかあるので来れなかったので合ってて良かったです。」

名探偵!ってか怖い!
昨日は告白で緊張してたのでは?そんな計算をしている余裕があったなら意外と冷静だったんだね。俺の方が緊張してたかも・・・。

「っぷ。ガハハハ!!駅で主人が来るのを待ってるとか、マジではハチ公じゃん。彦でハチ公!アハハハお前今日からハチ公な!」

「っえ?っあはい。ありがとうございます?」

「智治、人にハチ公とか失礼だろ!!」

「いいじゃん。ハチ公嫌がってないし、お前だけの忠犬だぞ良かったな。ぷぷぷ。」

確かに犬は欲しかったけど、俺より大きい超大型犬は要らない。大き過ぎる、ってか犬じゃないし!危ない流される所だった。ニコニコしながらこっちを見るな。犬扱いされてるんだから怒れよ。

「ふぅ、とりあえず此処に居ても邪魔だから行こうぜ。ハチも行くぞ。」

「はい。」

「苦しいからこれやめろよ!」

又こいつは肩を組みたがる。っというよりほぼ首を絞められてる気がする。俺を連れて行く時は手を引くよりこうやって首を絞められてる。苦しいのにやめてくれない。普通に言えば付いて行くのに・・・。こいつの中での俺の立ち位置ってなんんだろう。おもちゃかな?・・・考えるの止めよう。





「先輩、お弁当持って来ました。お口に合うと良いんですが・・・」

「本当に持って来たの?じゃあ、お代は明日持って来るよ。」

「いつでも大丈夫です。はい、布巾手を拭いてください。」

「くくく。至れり尽くせりだね。忠犬ってより下僕だね。」

「下僕は可哀想だよ。せめて奴隷とか?」

「いやいや。どっちも変わんねーって、せめて執事だろ。」

皆で面白がってやられる方は凄く恥ずかしいんだぞ。けど、布巾まで持って来るとは・・・本当に至れり尽くせりこんなにやってもらっていいんだろうか?俺凄く偉そうなんだけど。

俺の記憶違いじゃなければ、俺は八木君を振ったはず。なのにこれ。
あれじゃ伝わらないのかな?告白された事ないし、振った事もないから解んないよ・・・。

んーやっぱり美味しい。昨日食べた厚焼き玉子も美味しかったけど今日のも美味しい。

「先輩?お口に合いますか?」

「・・・っえ?あっうん、美味しいよ。一つ聞いてもいいかな?この唐揚げは冷凍食品だよね?」

「おかずも炊き込みご飯も全部手作りですよ?冷凍食品って結構高いんですよ。なので手作りの方が安あげりなんです。」

「「「唐揚げまで作れるの!?」」」

マジかぁ。・・・まぁ人には向き不向きがあるから、うん。自分に出来る事をしよう、無理して周りに迷惑をかけてはいけないよね。言っておくが別に俺の料理は殺人料理ではないぞ!ただ美味くも不味くもないだけだ。

「妹さん幼稚園児って言ってたけど、キャラ弁とかも作るの?」

「作りますよ。ただ凄く時間がかかるので週に1回しか作れませんが・・・。周りのママさん達が凄いので全く作らないのは可哀想なので。」

「もはや子供の為というより自分のプライドだろうなぁ。」

「それはあるかも。誰々くんのママさんには負けない!みたいな?」

「くだらねー。」

「先輩方・・・それはあるかもしれませんが子供たちは純粋に嬉しいし楽しみみたいなので。」

今時のママさん達も色々あって大変だなぁ。頑張ってください。





「今日は先輩が好きなエビチリを入れて来ました♪どうぞ。」

話の流れで軽く『俺もエビチリ好き』って言っただけなのに覚えてたのか。一瞬俺がエビチリ好きって言ったっけって思った位なのに。記憶力いいなぁ、最近物忘れが多くて羨ましい。年かな?


ブーブーブー


「誰?」

「あっ俺だ。・・・真、今日母さん飲み会らしいから夕飯どうする?」

「珍しいね。適当に食べるから大丈夫だよ。」

おばさんは滅多に外食をしない、会社の飲み会もあまり参加しない。忘年会や歓送迎会位だから何でもないこの時期に呑むのは珍しい。

「後輩に相談されたみたい。」

成程。それなら納得、でもお茶でなく呑みなんだからきっと深刻な相談なんだろう。おばさんは色々な人に相談される。明白な答えが出る訳ではないが兎に角聞き上手なのだ、俺も昔愚痴った事があるけど聞いてもらうだけでも楽になるから。

「?田中先輩のお母さんの飲み会と川島先輩がどう関係あるんです?」

「えっ?あぁ、今うちの両親イタリアに出張中なの。父さんは何も出来ない人だから母さんも一緒に行ってる。兄さんはもう独り立ちしてて、俺一人だから夕食一緒に食べてるんだ。」

「先輩一人暮らし何ですか?」

「そう。夕飯は一緒に食べてるけど朝は自分で作ってるし、他の家事もちゃんとやってる。」

そう。ちゃんと掃除洗濯してます。じゃないと週末におばさんのチェックが入ってさぼると母さんに報告されてしまうのだ。なのでやる。じゃなければ多分やらなかっただろうなぁ。流石母さん俺の性格を良くご存じで・・・。

「朝は何を作ってるんです?」

「別に普通にご飯と味噌汁に玉子や納豆とか?そんなもんだよ。」

母さんは料理が出来ないから、俺が作れるのは家庭科の授業で作った物位。
ちなみに、料理が出来ない母さんには月に一度大量のレトルト食品、ラーメン・ご飯・缶詰等ただ温めるだけとかの物を送っている。近所の奥様方に大人気らしい。

俺達親子にはこんな美味しい料理は逆立ちしても出来ません。
見た目だけでなく栄養まで考えられてる。八木君の家族は幸せ者だね。


あぁ、美味しい。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

処理中です...