闇の記憶

姫川 林檎

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記憶喪失の少年

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春陽は悲鳴を上げて気を失ってしまった。

「博賢・・・何故お前が・・・。」

(ヒロタカ?)

「二人がこそこそ何かをしていたのでね何かあると思って付けて来たんですけど、まさか未だこんな出来損ないを気に掛けていたなんて思いもよりませんでしたよ。とっくに死んでいると思ってましたし。」

死んで?

「何て事を言うだ!!お前はもう俺達の子じゃないんだお前には関係ないだろう!」

「実の子より出来損ないを選ぶなんて・・・そこまで気がおかしくなっているのが俺は悲しいね。」

全く悲しみを感じない笑顔で実の親を見下しているこの男が春陽が自分の事を忘れても覚えていた男と思うと余計に腹が立つ。

「失礼ですがお客様、親子ケンカなら他所でお願いします他のお客様のご迷惑になりますので。」

感情を押さえ店主として諫めるがこの男周りに迷惑を掛ける事を気にしないみたいだ。

「それは失礼。・・・そのゴミを拾ったのはあなたですか?安心してください、そんな物いりませんので好きにして下さい。こちらに迷惑だけは掛けないでくださいね・・!何ですか!?」

春陽を‟出来損ない”呼ばわりだけでも腹立しいのに‟ゴミ”だと!!
感情に任せてこの男に威圧を掛けると一瞬怯んだが直ぐに威圧し返して来たがランクは俺の方が上だ。

「何だ!?お前は俺が誰だか解っているのか!!」

「勿論。今泉議員の孫だろ?今泉議員は素晴らしい方だが後継者には恵まれなかったらしい。」

「!?馬鹿にするな!幸一郎こういちろう伯父さんは使えないが俺は違う!!」

俺も感情的になってしまったがこいつはそれ以上に感情を抑える気がないらしい。全力で俺に威圧してくるがなっていない。

「博賢いい加減にしろ!他のお客さんが怯えているだろう!!止めなさい!」
「はっ!Ωやβや出来損ないのαが怯えようが俺には関係ないですね。第一威圧ならこいつだってしているだろうが!」

「彼が威圧しているのはお前にだけで俺達には何も感じない。お前では彼には勝てないから諦めろ。」

確かに俺が威圧しているのはこいつだけだ。
こいつの威圧も他のαの方が緩和する様にΩやβを守ってくれているので、実際怯えているのはランクがこいつより低いαだけだ。αだから自分でどうにかしてもらおう。まぁ、うちの客は高位のαが多いのでそこまで怯えた人は居ない。ご両親位だろう。

こいつは頭は良いみたいだがバカだろ、いくらここが選挙に関係のない地域といえどもネット社会の現代で他の地域でも何かすれば拡散される事を忘れているのか?これからの社会で性別格差なんて無くなって行くそうすれは今みたいな発言は命取りになる。今泉議員に同情する本当に素晴らしい方なのになぁ。

「あなたはもう彼には興味がないんでしょ?だったらもうお引き取りください。」

更に威圧して言えば尻込みしながら虚勢を張りながら

「ふん!そんな物には興味がない!!2度と俺の前に姿を出すな!」

見事なまでに負け犬の遠吠えで出て行った。
それと同時に店内の緊張も解れると「ふぅ」とあちこちから聞こえて来た。

「「「「「・・・・・」」」」」

「お騒がせして申し訳ございません。お詫びにサービス券を配布致しますので帰りにお受け取り下さい。」

春陽を抱えたまま謝罪する。

「眞一が悪い訳ではないから気にするな。それにしても彼は思っていた以上に残念だね、今泉議員が本当に可愛そうだね早めにまともな後継者を選んだ方がいいだろうね。」

多くの国会議員と面識のある大学病院の院長は少し寂しそうに呟くと何人かの社長達は頷いていた。

「眞一、春陽を休ませておいでそれと・・・。」

あの男のご両親を見る。
彼等と話して来いって事だろう。俺だって聞きたい事は山とある。

「すいません、宜しければ奥で話を伺いたいのですが。」

「あっはい。勿論です。」

春陽を抱え2人を奥に案内する。
2人にはリビングで待っていてもらって春陽を部屋に連れて行く。

ベットに寝かせ涙を拭う。
今でも・・・記憶がない今でも彼の顔を見れば判るのか・・・
それだけ彼を思っていたいう事か・・・。

「ジョン、愛、春陽を頼むな。」

クゥ~

暑くなって来ているがそれでもジョンは春陽にくっ付いて横で眠り、愛も同じ様に顔の側で眠る。目が覚めても淋しくはないだろう。
春陽を2匹に任せて下に降りて行く。


「お待たせしました。」

「いえ。」

お茶を出し向かいの席に座ると旦那さんが自己紹介をしてくれた。

「突然お邪魔してすいません。私は勝利の隣に住んでいた森下 博一もりした ひろかずと申します、それと妻のはなです。」

涙を拭いながら奥さんも会釈する。

「あの子は、勝利は名前を三島 勝利みしま かつとしといいまして高校1年生です。」

「今はもう本当なら2年生よ。」

下手したら小学生かと思っていたが高校生みたいで安心した犯罪者にならずに済んだ様だ。しかし、春陽はここに来てから背も伸び始めてはいるが未だ未だ小さい今まで栄養が足りていなかったのだろう。

「あの子は小さい時からご両親に愛されずに育って、ある日博賢が家に連れて来たんだ。あの子にそんな人を思いやられる心があるのだと安心していたんだが・・・。」

「かっちゃんは徐々に笑う様になって来たのになのに!あの子は!!」

それからお2人から詳しく話を聞いて連絡先を交換して今日は帰って貰って日を改めて春陽が落ち着いている時に合せる約束をした。

部屋に戻り寝ている春陽の横に眠り抱き締める。
春陽は俺が想像していたよりも厳しい生活をしていた。今日の事をきっかけに何を思い出しどうするかは春陽次第・・・。


どんな未来を選んでも春陽が幸せであります様に・・・。



        - 続く -


 
★☆★☆★

ここで一旦終わります。
次章【勝利の人生】はある程度書き溜めてから連載を再開したいと思います。
少し間が空いていますかと思いますが出来るだけ早く開始出来たらと思っています。

姫川林檎


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