闇の記憶

姫川 林檎

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記憶喪失の少年

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あれから春陽は毎日の様に買い物に行っている。毎日少しづつ必要な分だけを買っているみたいで商店街で色々見ながら買うのではなく目的地だけを目指して買って帰って来るを繰り返している。やはり、未だ未だジョンが一緒でも知らない人に会うのは怖いみたいだ。

それでも、毎日顔を出しているので商店街の人達には顔を覚えられ優しく見守られている。ここの人達は優しい人が多い、勿論そうでない人もいるが露骨に何かをする様な人はいない。

春陽が来て1ヵ月が過ぎた。
色々あってあっという間過ぎた様に感じる。

「春陽、寝る前に一寸いいか。」

「はい?」

「春陽も大分ここ来て色んな人に会い慣れたと思うんだけど、もし良ければお店を手伝ってくれないかな?」

「お店ですか?」

「そう、基本的には人は足りているんだけどお昼がどうしても足りないんだよ。新しいバイトの子を雇うにしても基本学校があるからどうしても夕方がメインになって、本当に欲しい昼に入れない事が多いと思うんだよ。だから春陽にお昼手伝ってもらいたいんだけど、どうだろう?」

「・・・でも。」

「あぁ、勿論いきなり忙しいお昼に入ってもらう様な事はしないよ。他の時間帯で慣れてもらってから入ってもらうし、それに春陽には引き続き家事をして欲しいからたまに入ってもらうだけで。慣れる迄最初は続けて入ってもらいたいけど、俺もじぃさんも駿二も居るから何の心配はないよ。何か心配な事ある?」

「「・・・・。」」

「僕は多分バイトをした事がないと思います。・・・だから、その出来るかどうか・・・。」

「春陽、出来るか出来ないかじゃなくて、春陽はやってみたい?やってみたくはない?どっち?」

「みたいかどうか・・・ぼくは、・・・その、やってみたいです。」

段々尻積もりになって聞こえ難かったが春陽はちゃんと自分の気持ちを言ってくれた。これは大きな1歩だ。俺は春陽を抱き締めて頭を撫でながらお礼を言う。

「有難う春陽。春陽が手伝ってくれると助かるよ。お店には多くのαが来るけど皆さん紳士淑女だから心配ないし、俺もじぃさんも店には居るから大丈夫だよ。少しづつ春陽のペースで頑張ればいいから。」

「・・・はい。」

「春陽が居てくれて良かった。明日から宜しくね。おやすみ。ちゅっ」

おやすみの挨拶をして春陽の頭にキスをする。
春陽も照れながら挨拶して布団に潜ってしまった。俺は事務仕事を済ませてしまおう、春陽が来た頃は春陽と一緒に眠り明け方に事務をして春陽の睡眠の邪魔をしない様にしていたが、最近は俺が事務をしていても気にせず眠れるみたいなので先に済ませている。最初は俺が起きているのが不安だったんだろうが俺は危険ではないと理解したのか心地いい寝息が聞こえている。

さて、明日から春陽が店に立つから俺も今日はもう眠ろう。
家に帰って春陽が出迎えてくれるのも嬉しいが、春陽と一緒に働けるのも楽しいだろう。久々にわくわくしながら眠りについた。



昨日の内に2人には話してあるので今日は2人で片付けを済ませる。
洗濯物を干して店に向かう。

「春陽、ここが更衣室で・・・ここが春陽のロッカーね。この制服に着替えてくれるか一応これが1番小さいサイズだけど大きかったら考えよう、着替えたらロッカーに仕舞って鍵を掛けてね俺は外に居るから。」

「・・・はい。」

Ωの子達は全体的に小柄な子達が多いが春陽は未だ幼いので更に小さい、なので制服ではズボンが長かったのでよく似た物を買って来たシャツは制服なので替えが効かないので仕方にけどそのまま着てもらおう。

暫くすると、春陽が着替えて出て来たやはりシャツは大きかった様だ、5分丈の袖が完全に長袖になってしまっていた。袖は捲ればいいか後は特に問題はなさそうだな・・・。

「そうだ、春陽後このエプロンを着けてくれるかな鍵はズボンのポケットに入れておけばいいよ。じゃあ、次はこっち・・・ここでタイムシートを押してカードをここに入れれば大丈夫。はい、春陽のカード。」

恐る恐るカードを受け取りタイムシートを押す。どこか少し嬉しそうだ。

春陽を連れて店内に入る。

「春陽、店内に入る時には軽く会釈してから入ってね。店に入るのは初めてだったね。春陽の仕事はお客さんから注文を聞いてそれを俺達に伝えて出来た物を届けるのが仕事。」

コク

緊張した面持ちで俺の話を聞いている、渡して置いたメモ帳に注意事項やする事を一生懸命に書き込んでいた。そんな俺達を楽しそうにご隠居は見ていた。

「店長さん、その子が春陽くんかな?紹介してくれる。」

「ご隠居おはようございます。春陽、おいで。ご隠居、新しい家族の春陽です。今日から少しづつ店を手伝ってくれるのですが何分初めてなのでご迷惑をおかけすると思いますが・・・。」

「構わないよ、初めてなら仕方ないよ最初の内にいっぱいミスをして慣れたらしない様にすればいい。」

「有難う御座います。春陽、こちらのご隠居はじぃさんの友人で大原太蔵たいぞうさんよく朝に飲みに来てくてる方だ。ご挨拶を。」

「初めまして、春陽といいます。記憶がないので何も覚えていませんので、何か失礼な事を言ったりしたらすいません。」

「ふぉふぉふぉ。それだけしっかり挨拶が出来れば粗相の心配はないだろうよ。ここはスタッフもお客さんもそんなに気難しい人は多くないから気楽にやりなさい。」

「はい。よろしくお願いします。」

「はいはい。では早速注文をお願いしようかね、お願いできるかい?」

春陽は俺を見上げて来るので頷き横からやり方を説明しながら受ける。それをカウンターで駿二とじぃさんに伝える。今日は朝食も未だだったらしくご隠居ブレンド(ご隠居専用ブレンド)とサンドイッチを頼まれた。じぃさんが淹れた珈琲と駿二が作ったサンドイッチを持ってご隠居の所に行き渡す。戻って来た春陽の顔には達成感が現れていて可愛かった。

その後も俺達に聞きながら何とかお昼も乗り越えていた。
春陽は初心者ながら無駄な動きが少ないく丁寧に仕事をこなしていたのには感心した。


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