闇の記憶

姫川 林檎

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記憶喪失の少年

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それから、それぞれの‟番”を紹介されたりしてαとも話をしていた。

やはり未だαには馴れない様だがそれでも頑張って話をしている。俺に気付かれない様にコートの端を握りしめながら、これ以上は春陽の精神的に悪いので皆との会話を終わらせる。

「春陽少し散歩しようか?」

「はい!」

あら、嬉しそう。やはり相当きつかったんだろう、いつにも増して大きな声で返事をして首がもげるそうな位頷いていた。皆さんに断って敷地の端に連れて行く。

「春陽、見てごらん。ここから川の桜並木が見えるよ。」

「綺麗・・・。」

川の両サイドに数十メートルにわたって桜が植わっている、桜の見ごろに合わせて約1週間9時までライトアップされているのである。ここは高台にあるので桜並木全体が良く見える。

春陽の後ろから抱き締めて暖を取る。
風がないからそれ程寒くはないが、それでも未だ未だ寒い。

「春陽、うちの店は水曜日休みつまり明後日休みだから昼間の桜を見に行かないか?」

「・・・行きたいです。」

「うん、行こうな。明後日は天気良いらしいからきっと綺麗だぞ。ここからじゃ見難いけど手前の川辺には菜の花も咲いていて、青い空とピンクの桜そして黄色い菜の花見応えがあるんだよ。楽しみだな♪」

「はい。」

知らない人に囲まれて気疲れしていたが少しは回復したかな?やはり、可愛い子には笑顔で居て欲しいからなぁ。暫く、2人で桜を楽しみ席に戻ると丁度会長の挨拶が始まる所で良かった。

皆で協力して片付けをする。酔払いはその辺に放置しているが毎年のメンバーなので誰も気はせず片付けを進める。俺はドライバーなので呑んでません、ドライバーは専用腕章を着けていて呑みたくても止められます。

荷物を載せて春陽に愛を渡す、ジョンは駿二の横に待機。じぃさんと駿二とジョンはここから歩いて帰る、近いので酔い覚ましには丁度いい距離だ。俺は春陽を助手席にバイト君達は後ろに送って行く順番に乗せて出発する。

ここからだと岩倉さんが一番遠いが駅から近く新しく出来たΩ専用のアパートに住んでいる。次の渡辺君組は高校生だから実家暮らしなので、ついでに挨拶もして行くΩだと心配になるのは仕方ないので少しでも安心してもらえる様にする。2人も送って家に向かう。


風呂を出てリビングに戻ると春陽がソファで船を漕いでいた。
声を掛けると反応はするがこれはもう殆んど寝ている、春陽を抱えて部屋に戻りベットに寝かせると目を覚ました。

「ぅん・・・しんいち・さん?」

「寝てていいよ。今日は大勢の人と話して疲れたでしょ、ゆっくり休んで。」

「ん・・おや・す・みな・・さ・・・Zzz。」

「おやすみ春陽。」

おやすみのキスをして俺も眠りに着く。

夜中に春陽がうなされていた。
声を掛け起こすが泣いていて要領が掴めなかった。頭を撫でてあやすが俺の袖を掴んで泣き続けている。
愛に場所を譲ってもらい布団の中に入り、春陽を抱き締めゆっくり一定のリズムで背中を叩く。次第に泣き止み暫くすると健やかな寝息が聞こえ出した。

沢山のαと話‟番”の話で何かを思い出したのかも知れない。それは辛く悲しい事を・・・
ヒロタカは春陽にどんな酷い仕打ちをしたんだ、春陽は全てを忘れてしまいたい程彼を愛していたのだろうか。命を捨てる程・・・

俺ならそんな思いはさせない!
春陽、頼むから俺を選んでくれ。


「んっぅ・・・!!」

「おはよう春陽。良く寝るれた?」

「えっ?えっ?どうして?」

「昨日お花見に行ったのは覚えてる?久し振りに大勢の人にαにあって怖かったのかな?うなされてて抱き締めたら落ち着いたからそのまま一緒に寝たんだけど、ごめんな?」

「・・・いえ。こちらこそすいません。」

俺が一緒に寝ていて顔が赤くなったが、俺に迷惑を掛けたと思って今度は青くなってしまった。額にキスをして

「気にするな。俺が一緒に寝たくてそのまま居座っただけだから。一緒に寝るのは嫌だった?」

「嫌じゃない!・・・です。」

最後は又小声になってしまったが、それでも全力で否定してくれた。
嬉しくてつい抱き締める腕に力が入ってしまった。

「春陽、今日の散歩どうする?疲れたならこのままもう少し寝てても構わないぞ。」

「行きます。連れってて下さい。」

春陽に‟連れてって”とか言われたら攫ってしまいたくなるではないか!今直ぐにでも監禁したいが我慢だ。


このまま寝ていたいが着替えて、2人一緒にジョンの散歩に行く。
朝焼けがとても綺麗だった。


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