闇の記憶

姫川 林檎

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記憶喪失の少年

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今日は昨日より寒く底冷えでアラームより先に目が覚めてしまった。
春陽の寝顔を覗き込み穏やかな顔で寝ているのが嬉しくなる。薬を使わないで済むほど安心していると思うと嬉しいもんだ。

何時までも寝顔を見ていたいが、今日も忙しいので諦めて着替えますか。

今日も着替えが終る頃に春陽が目を覚ました。布団を畳んで春陽の元に行きお早うのキスをほっぺにする。覚醒し始めた春陽が慌て出す。

「お早う春陽。良く眠れた?」

「おっお早う御座います。はい。眠れました。」

「良かった。今日はジョンの散歩どうする?」 

「行きます!行きたい・・です。」

徐々に小さくなってしまったが自分の気持ちを言ってくれた。未だ未だ自分の気持ちを出すのは抵抗があるみたいだが、ジョンの散歩はしたいらしい。愛とも仲良くしているのを見ると、春陽は動物が好きなんだろう。

下に降りて朝ご飯の支度をして春陽を待つ。春陽の後ろからじぃさんも来た、2人が挨拶している内にじぃさんの朝食を並べる、肉食老人との約束通り今日は生姜焼きである。支度が終わったら素早く春陽の肩を抱いて玄関に向かう、後ろでじぃさんが笑っているが気にしない。

昨日の様に片方づつ手袋をして手を繋ぎ散歩に出る。
ジョンはチラチラと春陽を気にしながら歩き、そんなジョンを楽しそうに春陽は見ている。ジョンばかりではなくて俺の方も見て欲しいものだ・・・って犬にヤキモチを焼いてどうする。

「ん?何か?」

「えっ?」

「えっと、手を強く握られたから・・・。」

「ご免。何でもない、えっと一寸寒かったから力が入っちゃったかな?ご免痛かった?」

「いえ、そこまで強くはなかったので。」

無意識に力が入ってたか。情けない感情に振り回されるなんて。
んーしかし困った、恋心これなかなか厄介だぞ。

浜辺に着くと春陽はフリスビーの練習(ジョンと遊びながら)を始めた。今日も最初の一投は斜めに飛んで行ったが何回か飛ばしている内に真っ直ぐに飛び出した、すると1人と1匹は楽しそうに遊びだした。

ここで俺が行ってたら空気が悪くなるんだろうなぁ、春陽は俺に気を遣うだろうしあの笑顔は消えてしまうだろう・・・。大人としては黙って見守るのが正解だろうが、これはなかなかキツイ。いつになったらあの笑顔が俺に向けられるんだろうか・・・。ジョンになりたい。

俺はαらしくはないと思っていたがやはりαだったか・・・。
俺は今までどんなに可愛い女性にも綺麗なΩにも興味はなかった、俺は家族を守る事でいっぱいだったから。皆が女性・Ω異性の話で盛り上がってても、話に入れなかった何故か皆同じに見えたから。だが、俺はモテた。だから告白されれば適当に付き合って、駿二家族を優先しては振られたが気にもしなかった。

だが春陽は違う、春陽を抱き締め俺以外を見ない様に・見られない様に閉じ込めてしまいたいと思う。これはつがいになれば少しはマシになるんだろうか?まともに恋愛して来なかったから良く解らない。情けない・・・。

駿二には‟番”になる気はないと言いながら、1週間もしない内に‟番”になる気満々とは・・・。
側に居て守れればそれで良いと思っていたのに、駿二の時と変わらず守りたいだけだと。けど、側に居てれば春陽が徐々に感情を出してくれると嬉しくて、うちに居ていいのか不安そうにしてたり、何か役に立ちたいと思っている姿を見ると健気で、家が俺が安心出来る場所にしてあげたくなる。

未だ未だ俺にも気を遣っているけど、それでも手を握れば握り返してくてる。
早く俺の前だけでもリラックス出来る様になって欲しい。俺に任せてくれれば、全てから守ってあげるのに。

いかん。いかん。
今日は昨日より寒いから春陽が冷える前に帰らなくては、それに今日も遅くなったら駿二に怒られる。

「春陽貸して。」

春陽からフリスビーを受け取るとジョンが真剣な表情をし構えた、俺が持った事でこれから全力で走れる事が嬉しいのだろう。春陽と遊ぶのも楽しいが思いっ切り走るのも好きだから。

何回か全力で投げ帰路に着く。

ジョンを拭き中に入る。
駿二の食事が終わった所で入れ替わりで食事に着く。TVのニュースを見ながら食事を済ませ、洗い物を春陽に任せて洗濯物を干しに行く。リビングに戻り春陽にゆっくり休む様に伝え、春陽とジョンに留守番を頼み店に行く。


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