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28話 予定変更

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「いらっしゃーい! お泊まりですか? お食事...... って、あれ? あなたは......」

 どうしてこうなったのかしら。 今私がいるのは血溜まり亭、じゃなかった日溜まり亭の一室。

 私は日帰りの予定で計画を立て、そしてその結果宿屋で一泊する事になってしまった。
 だって突然はこ丸が都に留まる事を主張したんだもの。

 ベッドの上に座りはこ丸に呼びかける。

「さあ、きちんと説明してもらうわよ?」
(......)

 はこ丸は黙っているけど、これは言葉を選んでるって感じがするわね。

(上手く説明できるか分からないが...... アイテムボックスの中には直接人を食べる存在がいると言ったのは覚えているか?)
「うん。 まだ見たことないけどね」

 その存在を人知れず狩るのがヨーダさんの...... つまり私の役目とかって。

(箱憑きとはいわば...... その予備軍にあたるとでもいえばいいだろうか)
「予備軍? なんだか曖昧な表現だね」

 はこ丸は少し黙り私に質問してきた。

(あの市場で見かけた人間、あからさまにおかしな点があったとすればなんだと思う?)
「え、なんだろ」

 万引きじゃなくて手品だったから人に披露しない方がおかしかったとかかしら? いやでも予備軍って事なら手品でもないか。

「ん、あれ? 予備軍って事ならアイテムボックスに入れてたって事? ならやっぱり万引きじゃ......」

 あ!?

「アイテムボックス! そうよ。 どう見ても成人してないあんな男の子がどうして!」
(そう。 契約は必ず成人してから行われる。 それ以下の年齢ではまだ精神が熟達していないため使用できないとされている)

 そんな理由が? 深く考えた事なかったけど。

「じゃあ熟達していない精神でアイテムボックスを持つとどうなるの?」
(......)

 はこ丸が更に慎重になった気がした。

(これはあくまで場合によるとしか言えないのだが、未熟な精神が汚染または侵食される可能性がある)
「うん? よく分からない」
(人格が変わるなどの影響が出て、最悪になると存在そのものがアイテムボックスにとって変わられる)

 !? 衝撃が私を襲う。

(アイテムボックスは擬態が得意だが、人間の身体そのものがその容器となってしまうのだ。 そしてアイテムボックスはなに食わぬ顔で人間社会に溶け込み...... 他の人間を食らう)

 というのが箱憑きの基本行動パターンになると説明を加えたはこ丸。

「私は深く考えずに成人するまで持てないものだって思ってたんだけど。 皆もそんな感じだったし」
(こんな理由を説明できると思うか?)
「......できないよね」
(当然これは伝えられていない案件だ。 もしこれを知っているような者がいたとすれば......)
「いたとすれば?」

 はこ丸は少し間をおいて言った。

(国の根幹に関わっているか『我々』と同じ様な事をしているか、だ)
「え!? 私達と同じ様な事?」

 私は驚く。

(監視したり情報を集める役目は必要だろう? こちらとしても行き当たりばったりで遭遇し、それを排除する訳ではない)
「それは...... そっか」

 そりゃそうだよね。 そんなやり方じゃ効率に関して言えば悪い事この上ないし。

「あれ? でもそれ宿屋に泊まった理由にはなってなくない?」
(まぁ...... 泊まる事が目的ではないからな)

 はこ丸の説明により私は夜遅く宿を抜け出す事になった。
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