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8話 第二の試験
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「しかしテイマーだとすると魔物を引き連れているのはともかく、突然出現させたり消したりするのはおかしいだろう?
ペットを飼っている飼い主が、そのペットを出したり消したりできるかい?」
「それは確かに」
「本来そんな事をするのは『召喚師』の役目さ。
そこで私ははこ丸の力との辻褄を合わせるため
『召喚調教師』(しょうかんテイマー)という職業を名乗っているんだよ」
「召喚調教師......」
「ハコワンも試験をクリアしたならこれからはその職業を肩書きにするといい。場所によってはかなりの便宜を図ってもらえたりするからね」
その辺りはもう少し後で説明するとしてヨーダさんは話を続ける。
「で、だ。調教師の一番重要な部分は魔物との信頼な訳なんだよ。
私も色々な魔物を使役したものさ。だけど私が限界を感じて後継者を探す段階になって全ての魔物を出会った場所に帰す事にした。
もし私がハコワンに会えなければ彼等もはこ丸の中で時が止まったままになるからね」
「それは......わかります。それで良かったと思いますよ」
「ありがとうハコワン。
力になれる魔物を譲れないのは残念だけど、その中でも一部、ナイトの様に条件次第ではあんたの力になってもいいという魔物達がいたんだ」
「条件次第......ですか?」
(お金じゃないよね?)
(そういう魔物もいない訳ではないが基本は違うな)
「魔物にも心があるから設定した条件は実に多岐に渡るだろう。だが、彼等から信用を得て信頼されればそれは間違いなくハコワンの力になってくれる」
「私は調教師でもなんでもないのにそんな事ができるんでしょうか?」
「私は素質があると思うよ。そしてその階段の先にハコワンを待っている魔物がいる。見事あんたの仲間にしてきてごらん。その結果をもって召喚調教師の肩書きを名乗れるか決めさせてもらうよ」
そう言われて私は薄暗い階段を降りた。
階段の先は個室になっており、部屋の中央に淡く輝く石像っぽいものがある以外なにもないようだ。
「魔物なんて何処にもいないじゃない。ヨーダさんが留守にしている間に逃げちゃったとか?」
私は言いながら部屋の中央に移動する。
はこ丸が何も言ってこないのは試験中という事だからなのかもしれない。とにかく目を引くものがこの石像しかないので目をこらしてよく観察してみる事にした。
石像は変わらずぼうっと輝いている。私は石像に触れてみた。
《我が身を使役しようと望む者は汝か》
突然部屋の中に声が響き渡る。厳かな感じの女性の声だ。
「は、はい。ハコワン=ケノビンと言います」
《我を使役したいと言うのであれば我の質問に答え、我を満足させてみせよ。さすれば汝と共に行こう》
部屋の中の重い空気と厳かな声が相まって私の緊張感を高めてくれる。
大丈夫かな? でもやるしかないよね。
「お、お願いします!」
《......では聞こう。
汝は高い場所が怖かったり苦手だったりするか?》
「......え? いえ、子供の頃から木登りなんかしてたので特に怖いという事はないですけど......」
一瞬何かの引っ掛けかと思ったけど、素直に答える事にした。
《よし。では高い所から見る景色をどう思うか?》
え? また高い所? 高い所に何かこだわりでもあるのかしら?
私は記憶にある高い場所から見回した景色を思い出す。
「うーん。遠くまで見通せる景色は気持ちいいですね。
飛べる訳じゃないので高さと言っても限界がありますけど」
《! そ、そう。じ、じゃあもし空が飛べたりしたらいいなぁ。とか考えたりした事は......?》
あれ? なんか急に声のトーンが変わった? 厳かさが薄れたというか。
「飛べたらいいなっていうのはよく考えますね。
移動の時に便利さを考えたりとか、高い所から景色を見たときにもっと高い所から見てみたいな。 というような時に」
《いいじゃない! じゃあ最後の質問するね。もし空を飛べる魔物が仲間になるとしたらどう思う?》
なんか随分フランクになってきたような気がするんだけど。
それになんだか喜んでる?
すでに最初の雰囲気は完全にどこかに行ってるし。
「空を飛べる魔物かー。いいかも。もし私を連れて飛んでくれたりしたら嬉しいですね」
《!!!》
私が素直に思った事を口にすると一瞬の沈黙の後、
《さ、最高じゃないのあなた! オーケーオーケー! その希望はアタシが叶えてあげますよ! 復活するからちょっと離れててね》
最高って言われちゃった。
言われた様に少し離れると石像の光が強まり表面にヒビが入っていく。そして表面が弾けとんだと思ったら、石像と同じ姿の魔物が現れた。
......違うわね、正しくは石像の方がこの魔物と同じ形をしていた。になるのよね。
「じゃーん! 空を領域とするハーピー姉さん、華麗に復活よ! 貴方がアタシの新しいマスターね。よろしく!」
女性の上半身だけど腕はなくその部分は翼で、下半身は二足歩行の鳥と言えばいいのか、そんな姿をしているハーピーと名乗った魔物が挨拶してくれた。
ペットを飼っている飼い主が、そのペットを出したり消したりできるかい?」
「それは確かに」
「本来そんな事をするのは『召喚師』の役目さ。
そこで私ははこ丸の力との辻褄を合わせるため
『召喚調教師』(しょうかんテイマー)という職業を名乗っているんだよ」
「召喚調教師......」
「ハコワンも試験をクリアしたならこれからはその職業を肩書きにするといい。場所によってはかなりの便宜を図ってもらえたりするからね」
その辺りはもう少し後で説明するとしてヨーダさんは話を続ける。
「で、だ。調教師の一番重要な部分は魔物との信頼な訳なんだよ。
私も色々な魔物を使役したものさ。だけど私が限界を感じて後継者を探す段階になって全ての魔物を出会った場所に帰す事にした。
もし私がハコワンに会えなければ彼等もはこ丸の中で時が止まったままになるからね」
「それは......わかります。それで良かったと思いますよ」
「ありがとうハコワン。
力になれる魔物を譲れないのは残念だけど、その中でも一部、ナイトの様に条件次第ではあんたの力になってもいいという魔物達がいたんだ」
「条件次第......ですか?」
(お金じゃないよね?)
(そういう魔物もいない訳ではないが基本は違うな)
「魔物にも心があるから設定した条件は実に多岐に渡るだろう。だが、彼等から信用を得て信頼されればそれは間違いなくハコワンの力になってくれる」
「私は調教師でもなんでもないのにそんな事ができるんでしょうか?」
「私は素質があると思うよ。そしてその階段の先にハコワンを待っている魔物がいる。見事あんたの仲間にしてきてごらん。その結果をもって召喚調教師の肩書きを名乗れるか決めさせてもらうよ」
そう言われて私は薄暗い階段を降りた。
階段の先は個室になっており、部屋の中央に淡く輝く石像っぽいものがある以外なにもないようだ。
「魔物なんて何処にもいないじゃない。ヨーダさんが留守にしている間に逃げちゃったとか?」
私は言いながら部屋の中央に移動する。
はこ丸が何も言ってこないのは試験中という事だからなのかもしれない。とにかく目を引くものがこの石像しかないので目をこらしてよく観察してみる事にした。
石像は変わらずぼうっと輝いている。私は石像に触れてみた。
《我が身を使役しようと望む者は汝か》
突然部屋の中に声が響き渡る。厳かな感じの女性の声だ。
「は、はい。ハコワン=ケノビンと言います」
《我を使役したいと言うのであれば我の質問に答え、我を満足させてみせよ。さすれば汝と共に行こう》
部屋の中の重い空気と厳かな声が相まって私の緊張感を高めてくれる。
大丈夫かな? でもやるしかないよね。
「お、お願いします!」
《......では聞こう。
汝は高い場所が怖かったり苦手だったりするか?》
「......え? いえ、子供の頃から木登りなんかしてたので特に怖いという事はないですけど......」
一瞬何かの引っ掛けかと思ったけど、素直に答える事にした。
《よし。では高い所から見る景色をどう思うか?》
え? また高い所? 高い所に何かこだわりでもあるのかしら?
私は記憶にある高い場所から見回した景色を思い出す。
「うーん。遠くまで見通せる景色は気持ちいいですね。
飛べる訳じゃないので高さと言っても限界がありますけど」
《! そ、そう。じ、じゃあもし空が飛べたりしたらいいなぁ。とか考えたりした事は......?》
あれ? なんか急に声のトーンが変わった? 厳かさが薄れたというか。
「飛べたらいいなっていうのはよく考えますね。
移動の時に便利さを考えたりとか、高い所から景色を見たときにもっと高い所から見てみたいな。 というような時に」
《いいじゃない! じゃあ最後の質問するね。もし空を飛べる魔物が仲間になるとしたらどう思う?》
なんか随分フランクになってきたような気がするんだけど。
それになんだか喜んでる?
すでに最初の雰囲気は完全にどこかに行ってるし。
「空を飛べる魔物かー。いいかも。もし私を連れて飛んでくれたりしたら嬉しいですね」
《!!!》
私が素直に思った事を口にすると一瞬の沈黙の後、
《さ、最高じゃないのあなた! オーケーオーケー! その希望はアタシが叶えてあげますよ! 復活するからちょっと離れててね》
最高って言われちゃった。
言われた様に少し離れると石像の光が強まり表面にヒビが入っていく。そして表面が弾けとんだと思ったら、石像と同じ姿の魔物が現れた。
......違うわね、正しくは石像の方がこの魔物と同じ形をしていた。になるのよね。
「じゃーん! 空を領域とするハーピー姉さん、華麗に復活よ! 貴方がアタシの新しいマスターね。よろしく!」
女性の上半身だけど腕はなくその部分は翼で、下半身は二足歩行の鳥と言えばいいのか、そんな姿をしているハーピーと名乗った魔物が挨拶してくれた。
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