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7話 最初の試験とヨーダの職業
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「とりあえずそこの本棚を横にずらしてくれるかい?」
ヨーダさんが唐突にそう言う。これをずらすのか。本がたくさん収まっていて重さはありそうね。まず試してみて動かないなら本を全部取り出して軽くすればいけるかな。
私はすぐさま計画を立て本棚の『横』に移動する。
「う、ううーん!」
「え? ちょっとハコワン?」
力を入れて押してみると最初少し動いたもののすぐに動かなくなった。やっぱり無理ね。
じゃあ次の計画の方で......私は本棚の『正面』に回り本を抜き出そうとした。
「ち、ちょっとお待ちハコワン。なにをする気だい?」
「え? 本を全部出して本棚を軽くしようかと......」
自分で本棚を移動させろって言ったのに変なヨーダさん。
「いやいやいや。これは別に家事のテストじゃないんだから。......むしろ最初動いちまうのかと焦ったじゃないか」
本棚をずらす事が家事になるのかしら?
(いや、問題はそこじゃない)
私の疑問にはこ丸が突っ込みを入れてきた。
「頼み方が悪かったね。言い直そう。ハコワンは本棚に触らずに本棚をずらしてくれるかい?」
え? 何その謎かけみたいな内容。そんな事できる訳がないじゃない。ヨーダさんは私に何をさせたいのかしら。
魔法が使える訳でもない私は部屋の中に使えそうなものがないか見回す。殺風景な部屋なので本当に何もない。
本棚にイスやテーブルをぶつけてずらそうとしたらさすがに怒られるかしら? 怒られるよね。
......大体この手の作業を女の私にやらせる? そこのナイトさんなんかイスとテーブルをそれぞれ片手で持ち上げてたんだからナイトさんに頼めばいいのに......
「......! まさか......」
私はナイトさんを見つめたまま固まる。これは多分......そういう事?
「ナイトさんお願い。あの本棚を横にずらしてもらえませんか?」
「かしこまりました。マスター」
片膝をついていたナイトさんが立ち上がる。
そのまま本棚の『正面』に移動し......引き戸を開けるかの如く片手で見事に本棚を横にずらした。
「うわ、すごいよナイトさんありがとう!」
「いえ、これくらいお安いご用です」
ナイトさんが戻ってくる。本棚が元々あった後ろの壁には穴があいており、階段が下に続いているのが見えた。隠し部屋があるなんて!
「見事だよハコワン」
あ、やっぱりこれで正解だったんだ。
「じゃあ次だ。けどその前にナイトを戻してやってくれるかい?」
「ええと......ありがとうナイトさん。戻っておいてください」
「いつでもまたお呼びください。それと、私に敬語は不要ですマスター」
その瞬間ナイトさんはアイテムボックスの中に入っていた。
「上出来だ。ハコワンははこ丸ともナイトとも相性が悪くないようだ。
私の目に狂いはなかったようで嬉しいよ」
「ありがとう......ございます?」
「さて、はこ丸もナイトも魔物である事は理解したね」
「はい。それは」
「じゃあその魔物を使役する私の職業はなんだと思うね?」
「魔物を......好きな......お婆さん?」
「......それは職業じゃあないだろう」
(あながち間違いでもないと思うが)
はこ丸の突っ込みはヨーダさんには聞こえていないようだ。あっ、別に駄洒落じゃないのよ?
「いいかい、私は本来魔物を使役する『調教師(テイマー)』なのさ」
(魔物好きが高じてな)
(あー、なるほどね)
はこ丸が補足してくれて私も納得する。
ヨーダさんが唐突にそう言う。これをずらすのか。本がたくさん収まっていて重さはありそうね。まず試してみて動かないなら本を全部取り出して軽くすればいけるかな。
私はすぐさま計画を立て本棚の『横』に移動する。
「う、ううーん!」
「え? ちょっとハコワン?」
力を入れて押してみると最初少し動いたもののすぐに動かなくなった。やっぱり無理ね。
じゃあ次の計画の方で......私は本棚の『正面』に回り本を抜き出そうとした。
「ち、ちょっとお待ちハコワン。なにをする気だい?」
「え? 本を全部出して本棚を軽くしようかと......」
自分で本棚を移動させろって言ったのに変なヨーダさん。
「いやいやいや。これは別に家事のテストじゃないんだから。......むしろ最初動いちまうのかと焦ったじゃないか」
本棚をずらす事が家事になるのかしら?
(いや、問題はそこじゃない)
私の疑問にはこ丸が突っ込みを入れてきた。
「頼み方が悪かったね。言い直そう。ハコワンは本棚に触らずに本棚をずらしてくれるかい?」
え? 何その謎かけみたいな内容。そんな事できる訳がないじゃない。ヨーダさんは私に何をさせたいのかしら。
魔法が使える訳でもない私は部屋の中に使えそうなものがないか見回す。殺風景な部屋なので本当に何もない。
本棚にイスやテーブルをぶつけてずらそうとしたらさすがに怒られるかしら? 怒られるよね。
......大体この手の作業を女の私にやらせる? そこのナイトさんなんかイスとテーブルをそれぞれ片手で持ち上げてたんだからナイトさんに頼めばいいのに......
「......! まさか......」
私はナイトさんを見つめたまま固まる。これは多分......そういう事?
「ナイトさんお願い。あの本棚を横にずらしてもらえませんか?」
「かしこまりました。マスター」
片膝をついていたナイトさんが立ち上がる。
そのまま本棚の『正面』に移動し......引き戸を開けるかの如く片手で見事に本棚を横にずらした。
「うわ、すごいよナイトさんありがとう!」
「いえ、これくらいお安いご用です」
ナイトさんが戻ってくる。本棚が元々あった後ろの壁には穴があいており、階段が下に続いているのが見えた。隠し部屋があるなんて!
「見事だよハコワン」
あ、やっぱりこれで正解だったんだ。
「じゃあ次だ。けどその前にナイトを戻してやってくれるかい?」
「ええと......ありがとうナイトさん。戻っておいてください」
「いつでもまたお呼びください。それと、私に敬語は不要ですマスター」
その瞬間ナイトさんはアイテムボックスの中に入っていた。
「上出来だ。ハコワンははこ丸ともナイトとも相性が悪くないようだ。
私の目に狂いはなかったようで嬉しいよ」
「ありがとう......ございます?」
「さて、はこ丸もナイトも魔物である事は理解したね」
「はい。それは」
「じゃあその魔物を使役する私の職業はなんだと思うね?」
「魔物を......好きな......お婆さん?」
「......それは職業じゃあないだろう」
(あながち間違いでもないと思うが)
はこ丸の突っ込みはヨーダさんには聞こえていないようだ。あっ、別に駄洒落じゃないのよ?
「いいかい、私は本来魔物を使役する『調教師(テイマー)』なのさ」
(魔物好きが高じてな)
(あー、なるほどね)
はこ丸が補足してくれて私も納得する。
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