97 / 166
第九十七回 桃香の才、輝く
しおりを挟む
梁山泊。季節は夏から秋に移ろうとしていた。
王倫が夢で見た出来事は未だ起きておらず、彼は知らないうちにそれを回避する何かがあったのか、それともまだずっと先の話だったのかが見極められないでいた。
一方、軍師の呉用は東亰での一連の動きを孔明から報告されている。
助け出された史進は事情を説明される為に宿元景に引き合わされたが、そこには彼にとってもっと説得力を持つ人物がいた。師匠の王進だ。
史進は硬直、絶句、感激の流れから宿元景、王進、朱武、孔明の話す計画に悉(ことごと)く賛同。率先して参加する意志を見せ、少華山の面々に改めて王進、そして梁山泊からの意見役として孔亮を加えて東京を離れた。
手勢七百を率いそのまま東京を通るのは危険(というか無謀に近い)なので、迂回して梁山泊に進む道を選んだからだ。
東京には宿元景と聞煥章がおり奸臣らの動きを見張っている。孔明はそれらを伝えるため一人で呉用の所に戻ってきていた。少華山の面々は孔明達と繋がりを持った事により、その動きの詳細を知ってしまったが、梁山泊の他の事情を知らない者に対してはそれを話さない事を約束している。
孔明到着の少し前には彼からの手紙を携えた少華山の先遣隊が到着し、王進の母親は現在十三、四歳ほどの外見に見える桃香が療養にあたっていた。彼女は青嚢書(せいのうしょ)に書かれている内容と王進の母親の症状から彼女の病気が肺に関係するものであると判断。
徹底した衛生管理を行い、初期に関してはごく一部の者以外接触を禁じ、母親に接触した可能性のある者まで診断させる念の入れようだった為梁山泊全体に激震が走った。
しかしその結果他人に感染する可能性は低いものとして現在は治療と衛生管理面だけ徹底されている。
桃香だけで対処できたのは単純に運の良さ……彼女と王進の母親、どちらの運なのか、はたまたその両方であったのかは分からない。
しかし獣医の皇甫端(こうほたん)に教えを受けていた事が役に立った。桃香はこの病が他人に強く感染をもたらすものではないとわかると、彼女は胸膜炎(きょうまくえん)であるとの診断結果を出す。次に対処法を考える為身近な所からの感染を疑う。
それはつまり動物でも起き得る事。食事という行為で肺吸虫に寄生され肺吸虫症(はいきゅうちゅうしょう)を引き起こした。
彼女の場合、それで本来なら隙間なく他の部分と接している胸膜腔(きょうまくくう)部分に水がたまり、胸膜炎という症状で現れていたのだ。
皇甫端は獣医として一流の腕を持っていたが、梁山泊に加わってからはその腕前に更に拍車(はくしゃ)をかけていた。その理由は道具の性能の向上にある。
一流の鍛治職人である湯隆(とうりゅう)といい、一流の船大工孟康(もうこう)といい、梁山泊には一流とつく者が事欠かない。そんな彼等の持つ技術が一所(ひとところ)に集まると使用される道具にも革新が起きる。そんな道具を一流の者が使い……こんな良い関係の循環が起き、皇甫端は以前では治療出来なかった動物の怪我や病気をも完治させ、その全てを惜しむ事なく教え子の桃香へと注いだ。
桃香はその知識と技術、そして道具の応用で見事王進の母親にここへ来て良かったと感謝される事となる。
息子(王進)が希望を持たそうとしていた気持ちは伝わってきたが、自身は既に高齢という事もあり、本音は半ば諦めていたのだという。しかしそれは表に出さず、いつか来る息子との別れに毅然として対応しようと心に決めていたらしい。それが本当に希望が抱けるようになった、と。
この出来事はまた旅人を通じて梁山泊の外にも広まり、やがて宋国で神医(しんい)とあだ名される男の耳にも届く事になる。
王家村では白秀英がいる一座が遂に三国志を題材にした公演を開始し、村の者達や旅人達に好評を博していた。
少華山の史進達が合流を果たす為には、彼等が到着するまでに梁山泊と一座の関係を修正しておく必要がある。
未だそれに対し有効な動きはないままであったが、果たして史進達や二竜山の魯智深達は無事に梁山泊に合流する事が出来るのであろうか。
王倫が夢で見た出来事は未だ起きておらず、彼は知らないうちにそれを回避する何かがあったのか、それともまだずっと先の話だったのかが見極められないでいた。
一方、軍師の呉用は東亰での一連の動きを孔明から報告されている。
助け出された史進は事情を説明される為に宿元景に引き合わされたが、そこには彼にとってもっと説得力を持つ人物がいた。師匠の王進だ。
史進は硬直、絶句、感激の流れから宿元景、王進、朱武、孔明の話す計画に悉(ことごと)く賛同。率先して参加する意志を見せ、少華山の面々に改めて王進、そして梁山泊からの意見役として孔亮を加えて東京を離れた。
手勢七百を率いそのまま東京を通るのは危険(というか無謀に近い)なので、迂回して梁山泊に進む道を選んだからだ。
東京には宿元景と聞煥章がおり奸臣らの動きを見張っている。孔明はそれらを伝えるため一人で呉用の所に戻ってきていた。少華山の面々は孔明達と繋がりを持った事により、その動きの詳細を知ってしまったが、梁山泊の他の事情を知らない者に対してはそれを話さない事を約束している。
孔明到着の少し前には彼からの手紙を携えた少華山の先遣隊が到着し、王進の母親は現在十三、四歳ほどの外見に見える桃香が療養にあたっていた。彼女は青嚢書(せいのうしょ)に書かれている内容と王進の母親の症状から彼女の病気が肺に関係するものであると判断。
徹底した衛生管理を行い、初期に関してはごく一部の者以外接触を禁じ、母親に接触した可能性のある者まで診断させる念の入れようだった為梁山泊全体に激震が走った。
しかしその結果他人に感染する可能性は低いものとして現在は治療と衛生管理面だけ徹底されている。
桃香だけで対処できたのは単純に運の良さ……彼女と王進の母親、どちらの運なのか、はたまたその両方であったのかは分からない。
しかし獣医の皇甫端(こうほたん)に教えを受けていた事が役に立った。桃香はこの病が他人に強く感染をもたらすものではないとわかると、彼女は胸膜炎(きょうまくえん)であるとの診断結果を出す。次に対処法を考える為身近な所からの感染を疑う。
それはつまり動物でも起き得る事。食事という行為で肺吸虫に寄生され肺吸虫症(はいきゅうちゅうしょう)を引き起こした。
彼女の場合、それで本来なら隙間なく他の部分と接している胸膜腔(きょうまくくう)部分に水がたまり、胸膜炎という症状で現れていたのだ。
皇甫端は獣医として一流の腕を持っていたが、梁山泊に加わってからはその腕前に更に拍車(はくしゃ)をかけていた。その理由は道具の性能の向上にある。
一流の鍛治職人である湯隆(とうりゅう)といい、一流の船大工孟康(もうこう)といい、梁山泊には一流とつく者が事欠かない。そんな彼等の持つ技術が一所(ひとところ)に集まると使用される道具にも革新が起きる。そんな道具を一流の者が使い……こんな良い関係の循環が起き、皇甫端は以前では治療出来なかった動物の怪我や病気をも完治させ、その全てを惜しむ事なく教え子の桃香へと注いだ。
桃香はその知識と技術、そして道具の応用で見事王進の母親にここへ来て良かったと感謝される事となる。
息子(王進)が希望を持たそうとしていた気持ちは伝わってきたが、自身は既に高齢という事もあり、本音は半ば諦めていたのだという。しかしそれは表に出さず、いつか来る息子との別れに毅然として対応しようと心に決めていたらしい。それが本当に希望が抱けるようになった、と。
この出来事はまた旅人を通じて梁山泊の外にも広まり、やがて宋国で神医(しんい)とあだ名される男の耳にも届く事になる。
王家村では白秀英がいる一座が遂に三国志を題材にした公演を開始し、村の者達や旅人達に好評を博していた。
少華山の史進達が合流を果たす為には、彼等が到着するまでに梁山泊と一座の関係を修正しておく必要がある。
未だそれに対し有効な動きはないままであったが、果たして史進達や二竜山の魯智深達は無事に梁山泊に合流する事が出来るのであろうか。
0
あなたにおすすめの小説
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
徳川慶勝、黒船を討つ
克全
歴史・時代
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
尾張徳川家(尾張藩)の第14代・第17代当主の徳川慶勝が、美濃高須藩主・松平義建の次男・秀之助ではなく、夭折した長男・源之助が継いでおり、彼が攘夷派の名君となっていた場合の仮想戦記を書いてみました。夭折した兄弟が活躍します。尾張徳川家15代藩主・徳川茂徳、会津藩主・松平容保、桑名藩主・松平定敬、特に会津藩主・松平容保と会津藩士にリベンジしてもらいます。
もしかしたら、消去するかもしれません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる