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優介:暗黒騎士の秘密

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 第二十四話 優介:暗黒騎士の秘密

 セブンは湯に浸かりながら自分の体を眺めていた。
 しなやかな腕に引き締まった体、豊満な胸に長い黒髪。
 姫に仕えていた頃は幼児体形だったが今では大人の女性へ成長していた。
 緑国での戦いで姫を助ける為に瀕死の重傷を負って黒転王に助けられた。
 禍々しい魔力を放つ液体へ浸かって数日。
 白転王のユニークスキル『完全蘇生術』を模して作った魔道具。
 その欠陥品は治癒と引き換えに急速にセブンの老化を進めた。
 その為まだ子供だったセブンは成人の女へ変化していた。

(神父様。)

 今になってもなお、黒転王をそう呼んでしまう自分が居た。
 黒転王は自分を魔道具の実験台にした。
 私は騙され利用されていたのだ。
 そう自分へ言い聞かせれば言い聞かせる程、別の感情が沸いて来る。
 セブンはもう一度、自分の裸体を眺めた。
 あれ程、白かった肌も今ではほどんとが暗黒に染まっていた。

「お前、我の女にならないか。
 何不自由ない暮らしをさせてやるぞ。」

 あの時、黒転王は言った。
 断る私に黒転王は少し驚き考え込んだ後に意外な提案をした。

「では、賭けをしよう。
 我がお前を黒国の暗黒騎士として蘇らせてやろう。
 お前は自由にその力を使い愛する姫を守るがよい。
 だがその強大な力を使う度にお前のその白い肌は黒く蝕まれていく。
 全身が暗黒に包まれた時、お前は我の女となり我を一生愛し続けるのだ。
 どうだ、我の物になりたくなければ力を使用しなければよい。
 お前に損はない賭けだろう?」
 
 あの時、黒転王は私の姫への愛を試すように言った。

 それから私は黒転王の暗黒騎士となった。

 無力で何一つ姫の役に立てなかった私……

 だが今では強大な力を得て白国の天使とも互角以上に戦えている。
 赤転王が青国へ侵攻したと聞いて居ても立っても居られずに
 白国との戦いを放り出して姫の元へ駆けつけた。
 無事に姫は守れたが力を使い過ぎたようだ。
 今では顔以外の全てが暗黒に染まってしまった。
 もう一度戦えば、全身が暗黒に包まれるだろう。

(その時、私はあの人の女になる……。)

 そう思いながら黒い体に湯をかけた。
 私は黒転王が意地悪く微笑む後に時折り見せる寂しそうな表情を思い出していた。
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