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奇楽 ( kill-luck )

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第七章

相談役

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 ルークは一通りランのここまでの話しを聞いた。そして深くため息をついて発した。
「多分、ダスターだね、君は……」
「そのダスターって何ですか?」
 ルークは言葉に詰まった。
「『自由の丘』の友だちも、そのトウゲンキョウってとこで出会ったベティっていう中世の女性も教えてくれなかったんだよね」
 ランは黙って頷いた。ルークはしばらく考え込んだ。
「知らない人には伝えにくいんだよね。確かに……」
 ルークは小声で「よし」と言った。
「相談役のところ行ってくるよ」
「相談役?」
「さっきも言ったと思うけど、これらのオブジェを作った人だよ」
 そう言って、ルークは夜空に浮かぶエンタープライズを指した。しかし、ランは、話しをほとんど上の空で聞いていたので、何のことなのか分からなかったが、取りあえず「うん」と小声で返事をした。
ルークはポケットからスマホを取り出し、どこかに電話をした。長めのコールが続いた。やがて、相手が出たようだった。
「もしもし、何だよ。寝てたの?」
 スマホを耳にあてながら、ルークはチラッとランを見て、親指を立てた。
「あのさ、ジョンのところへ行きたいんだけど……うん、……今すぐに……分かった。じゃあ、頼むね。」
 タクシーでも呼んでいるのか、知り合いの車でも来るのか、会話を終えた、ルークはスマホをポケットにしまった。
「そういうことだから、このままちょっと待っててね。と言っても、どこにも行けないか……」
 すると、ルークの姿は、忽然と消えた。まったく消えた。
 驚いたランは、悲鳴に似た声をだした。腰が抜けて動けないとは、こういうことをいうのだと思った。そして、可能であれば、自分の意志で気を失いたかった。
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