情報屋と絆の友の会

tetudou1014

文字の大きさ
上 下
16 / 18
外伝

外伝~物語の場面設定~

しおりを挟む
「拙者、アカツキと申す。実は先日、こちらの近くに住む巫女の女性と、お見合いをしたのでござる」

 聞けば、相手の機嫌を損ねてしまったとのことです。

 どうやら、ソナエさんのお見合いの相手とは、アカツキさんのようですね。

 隣のソナエさんを、確認します。

 あー、怒っていますねぇ。

 わたしたちは暗がりにいるのですが、ソナエさんの青筋がくっきりと見えますよ。

 ソナエさんの腕を、ヒジで小突きます。
 態度で示すと、相手にも伝わっちゃいますよ。

 ダメですね、これは。話す気がない模様です。

 ソナエさんがここまで立腹している姿は、初めて見ました。

 よほど、腹にすえかねる物言いをされたのでしょう。

「何を話されたんですか?」
「他愛のない話です。どのような酒を好むか、あてはどれか。拙者は、トマトやチーズだけでも楽しめるというと、相手はたいそう喜んでくださいましたぞ。食事の好みも、ほぼ同じだったので、大丈夫だと思うていたのです」

 よかったじゃないですか。なにが不満だったのでしょう?

「発言に失礼があったか、心当たりはありますか?」
「無礼だったのは、両親です」

 初対面だというのに、お母様がやたらとソナエさんに小言を言ってきたとか。
 相手方の両親ができた人で、そのままことなきを得たと言います。
 お父様まで叱り飛ばしたくらいだとか。

「あなたご自身に、問題があったとのお考えは?」
「思い当たるフシが、何も。おそらく、それも怒らせた原因だったのでござろう。なんてことのない会話で、憤慨されたのでしょう」

 反省は、しているようですが。

 あー、もう。
 ソナエさんブチギレじゃないですか。

 これは、早く解決せねば。

「何を話したか、再現はできますか」


「毎朝、あなたの味噌汁が飲みたいと」


「……あー」



 これは、罪深つみぶかい。



 ダメですね。ダメダメです。これはギルティというしかありません。

 実に罪な発言ですよ、これは。

「おサムライさん。あなたは首をハネられても文句が言えません」
「そこまででござるか!?」
「あなたの中では、朝は眠いのにお味噌汁を作るのは、女性だけなのですね」

 まだわかっていないのか、アカツキさんは黙り込みます。

「あなたは、炊事などの家事を奥様一人に押し付けるおつもりで?」
「……っ!」

 アカツキさんが、ハッと息を呑みました。

 わたしの言わんとしていることが、ようやく飲み込めたようで。

「失念していた。これでは、母と同じではないか!」
「では、その旨をお伝えください。きっと、わかり合えるはずですから」


 シスター・エマと一緒に、お粥のお店で休憩をします。

 
「とにかく、指示に従えって注文が多いんだよ。武家だからかねえ」

 わたしは、とかくその「武家」なるワードがひっかかりました。

 どうもブケというのは、こちらでいう「騎士団」のような役職だそうで。

「ブケ、という家系は、そんなにめんどくさいの?」

 エマからの質問に、ソナエさんは「うんうん」とブンブン首を振ります。

「しきたりには、うるさいかな? 考え方が古いから」

 こちらも、騎士や貴族の中には柔軟な考えの人は少ないかも知れません。

「謎マナーが多いぜ。箸の持ちからや食べ方まで、指図してきやがる」

 めんどうな方みたいですね。

「ですが、お料理が上手じゃないですか。結婚のご意思自体はあるのでは?」
「あたしが食べたいから、料理が勝手にうまくなったんだ。伴侶なんて、考えたこともないさ」

 自分がおいしい晩酌を楽しみたいから、料理の腕を磨いたとのこと。

 なるほど、自分のためならいくらでもおいしいものを作るけど、他人のためとなると話は別だと。


 休憩を終えて、再度ザンゲ室へ。

 今度の方は、お歳をめしたおばあさまのようで。


「実は先日、息子の見合い相手にきつくあたりすぎてしまって」


 へ? 

 今度は、お見合い相手のお母様がいらっしゃったと?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のルナリス伯爵家にミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...