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プロローグ 「自助努力には限界があります」
第二十四話 「緊急搬送」
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秋彦のあの重たい巨体を、駆け付けた救急隊員が手際よく担架に乗せる。さすがプロ。いい仕事をしている。
パンツすら穿かせてもらうことも叶わず、大事な息子を露出させたまま救急車に運ばれていくのはこの際致し方ないだろう。事態は急を要する。
そして救命処置をしていた俺も、なぜか同伴させられる羽目になった……っていうか、実は俺もワンピースの下はノーパンなんだが……。
これは痴女の範疇に入るのか? いや…不可抗力なんだからねっ!
救急隊が玄関に到着したタイミングで、取り合えずワンピだけ着て応対したものだから、行方不明の下着なんて探している時間がなかったのだ。
その後はもうドタバタしちゃって、取りあえず現金の入ったトートバッグだけを引っ掴んで外に出たわけだけど。
(うっ…夜は結構冷えるな)
まあ汗が急に冷えたのとノーパンだからっていうのもあるが、そろそろ冬物のコートも用意しないとな……くそっ出費がかさむ。
(皮下脂肪が無いデメリットが、こんな形で出るとはっ!)
夜の寒さで少しだけ震えながら、そのままマンションの前に停車していた救急車に乗り込む。
するとすぐに、救急車はけたたましいサイレン音とともに発車。
おぉ、交差点も信号無視で突っ走ってるぞ。さすが救急車。これ、なんだかちょっと楽しいね。
そして救急車の中で、隊員からどういった状態で奴が昏睡状態に陥ったのかを聞かれる。
恐らく病院に付く前に情報を集めておいて、到着後にすぐに処置できる体制を考える必要があるのだろう。
ちなみに症状としては心停止していたので恐らく心臓麻痺なのだが、それに至った具体的な状況を知りたいとのこと。
――うーん…なんというか、実に応えにくいなぁ…。
まぁエロい事してたら、急に倒れたって言うしかないよなぁ。
それで仕方なくそう説明したら、質問してきた救急隊員に気まずそうに顔を逸らされてしまった。
そしてその後は、何も聞かれることはなかった……というか話しかけられることもなくなった。
聞かれたから説明してやったのに! 何なんだこの仕打ちはっ!?
秋彦の自宅がたまたま総合病院に近かったこともあり、救急車に乗ってから病院へは数分で到着する。
最近は病床が埋まっていて、受け入れを拒否する病院もあるみたいだからな。これは素直に、ラッキーだったと言える。
そして病院につくとすぐに、担架ごと秋彦はガラガラと集中治療室の方へと運ばれていく。
きっと心臓麻痺の原因が分からないから、色々と検査されるんだろうな。
無駄にドナドナな気分だな。
それで俺の方はというと救急隊員からその場で待つように言われたので、総合病院の広いロビーで所在なく長椅子に座る。
きっと面会時間もすでに終わってしまっているのだろう。人の気配も全く無い。
どうでもいいけど、誰もいない病院のロビーってちょっとだけ怖いよね。
しばらくすると、女医さんらしき人が、周囲をキョロキョロと見回すようにロビーに入ってくる。
そしてすぐにこちらに気が付くと、小走りで近づいてきたので思わずこちらもサッと長椅子から立ち上がる。
「北山と申します。朝比奈さんですね?」
「はい」
救急隊員には俺の名前を伝えていたので、恐らくその誰かから名前を聞いたのだろう。
北山と名乗った女医さん(俺の中では)は、見た感じは清楚な雰囲気を醸し出している、理系女子な感じの美人さんだ。
表情はちょっとだけ疲れた感じだけど、年齢もかなり若そうだし胸も結構大きい感じだ。
(女医さんかぁいいなぁ…せめて、男の時にお近づきになりたかったなぁ)
そして美人女医の北山さんは、軽く目を伏せながら遠慮がちに聞いてくる。
「桜井さんの倒れられた時の状況をお伺いしたいんですが…」
……おい。これは何の罰ゲームだ。なぜ清楚系美人な女医さんに、エロい濡れ場の話をせにゃならんのだ。
それにズコバコやって、中にドピュッと出したら、意識を失っちゃったんですよーあははっ…なんて、どうやって状況を説明しろっていうんだっ!!
ちっくしょう! 無理過ぎるぞ…これは…まったく正解が分からん。誰か選択肢をくれっ!
それとも、これは誰かの仕組んだご褒美イベントなのかっ!? 不正解はないタイプなのか!?
「えっとーあのー…そ、その…エッチしてたら…」
取りあえず何か応えないと怪しまれると思った俺は、シドロモドロになりながらも言葉を選びながら説明を試みる。
何が知りたいんだ? ゴムの使用有無か? 体位か? 精子の量か? それとも出した場所か? 外か中かの違いか? プレイの内容か?
「あっ…救急隊員から話は聞いてます……ので、その30分前とか特に異常はなかったかとか」
ですよねー。本番ドピュッで、心臓麻痺になったとか、そんな曖昧な情報聞きたかないですよねー。
ははは。いや、なーんだ。てっきり、その時の体位とか知りたいのかと思っちゃったよ。ほら、圧迫してたりとかだとちょっとは関係するかなーって。
まあ、圧迫されていたのは、むしろこっちの方で、秋彦はその時は上だったんだけどね。
そうだよねーって……それならそれで……早く言えっ! 真剣に考えちゃったぞ!! 滅茶苦茶恥ずかしいじゃないか!!!
「あ…いえ、特に異常はなかったです」
「そうですか。胸の痛みとかも、訴えてなかったですか?」
「はい。無かったです」
「呼吸が苦しいとか。そう言ったことも無かったですか?」
「無いです」
むしろ苦しかったのはこっちの方だ。上に乗られた挙句、散々奥までズッコンバッコン突っ込まれたんだからな。
「では、薬は何か服用されていたようでしたか?」
「いえ。それも無かったと思います」
大体、秋彦とは、今日初めて会ったのだし、そもそも病気持ちかだったなんて知るわけもない。
まあ少なくとも、夕方から夜までの間に薬を飲んでいる感じはなかった。
ただ浩太の時の状況も含めて考えると、十中八九、原因は俺のせいであって恐らく病気とかじゃないんだろうけどな。
「そうですか…」
そう言ったきり、北山さんは考え込むように黙ってしまう。
実際調べたところで、原因は分からないだろうな。でも、もし分かっちゃったら、俺、警察に逮捕されるのかな。
いやでも元はと言えば、秋彦が強姦紛いな事をしてきたからいけないわけであって、ある意味、正当防衛と言えなくもないよな。
どちらにせよ殺意は無かったわけだし、散々やめてくれって言ったし、俺には全く非はない…よしっ大丈夫だ。問題ないっ!
パンツすら穿かせてもらうことも叶わず、大事な息子を露出させたまま救急車に運ばれていくのはこの際致し方ないだろう。事態は急を要する。
そして救命処置をしていた俺も、なぜか同伴させられる羽目になった……っていうか、実は俺もワンピースの下はノーパンなんだが……。
これは痴女の範疇に入るのか? いや…不可抗力なんだからねっ!
救急隊が玄関に到着したタイミングで、取り合えずワンピだけ着て応対したものだから、行方不明の下着なんて探している時間がなかったのだ。
その後はもうドタバタしちゃって、取りあえず現金の入ったトートバッグだけを引っ掴んで外に出たわけだけど。
(うっ…夜は結構冷えるな)
まあ汗が急に冷えたのとノーパンだからっていうのもあるが、そろそろ冬物のコートも用意しないとな……くそっ出費がかさむ。
(皮下脂肪が無いデメリットが、こんな形で出るとはっ!)
夜の寒さで少しだけ震えながら、そのままマンションの前に停車していた救急車に乗り込む。
するとすぐに、救急車はけたたましいサイレン音とともに発車。
おぉ、交差点も信号無視で突っ走ってるぞ。さすが救急車。これ、なんだかちょっと楽しいね。
そして救急車の中で、隊員からどういった状態で奴が昏睡状態に陥ったのかを聞かれる。
恐らく病院に付く前に情報を集めておいて、到着後にすぐに処置できる体制を考える必要があるのだろう。
ちなみに症状としては心停止していたので恐らく心臓麻痺なのだが、それに至った具体的な状況を知りたいとのこと。
――うーん…なんというか、実に応えにくいなぁ…。
まぁエロい事してたら、急に倒れたって言うしかないよなぁ。
それで仕方なくそう説明したら、質問してきた救急隊員に気まずそうに顔を逸らされてしまった。
そしてその後は、何も聞かれることはなかった……というか話しかけられることもなくなった。
聞かれたから説明してやったのに! 何なんだこの仕打ちはっ!?
秋彦の自宅がたまたま総合病院に近かったこともあり、救急車に乗ってから病院へは数分で到着する。
最近は病床が埋まっていて、受け入れを拒否する病院もあるみたいだからな。これは素直に、ラッキーだったと言える。
そして病院につくとすぐに、担架ごと秋彦はガラガラと集中治療室の方へと運ばれていく。
きっと心臓麻痺の原因が分からないから、色々と検査されるんだろうな。
無駄にドナドナな気分だな。
それで俺の方はというと救急隊員からその場で待つように言われたので、総合病院の広いロビーで所在なく長椅子に座る。
きっと面会時間もすでに終わってしまっているのだろう。人の気配も全く無い。
どうでもいいけど、誰もいない病院のロビーってちょっとだけ怖いよね。
しばらくすると、女医さんらしき人が、周囲をキョロキョロと見回すようにロビーに入ってくる。
そしてすぐにこちらに気が付くと、小走りで近づいてきたので思わずこちらもサッと長椅子から立ち上がる。
「北山と申します。朝比奈さんですね?」
「はい」
救急隊員には俺の名前を伝えていたので、恐らくその誰かから名前を聞いたのだろう。
北山と名乗った女医さん(俺の中では)は、見た感じは清楚な雰囲気を醸し出している、理系女子な感じの美人さんだ。
表情はちょっとだけ疲れた感じだけど、年齢もかなり若そうだし胸も結構大きい感じだ。
(女医さんかぁいいなぁ…せめて、男の時にお近づきになりたかったなぁ)
そして美人女医の北山さんは、軽く目を伏せながら遠慮がちに聞いてくる。
「桜井さんの倒れられた時の状況をお伺いしたいんですが…」
……おい。これは何の罰ゲームだ。なぜ清楚系美人な女医さんに、エロい濡れ場の話をせにゃならんのだ。
それにズコバコやって、中にドピュッと出したら、意識を失っちゃったんですよーあははっ…なんて、どうやって状況を説明しろっていうんだっ!!
ちっくしょう! 無理過ぎるぞ…これは…まったく正解が分からん。誰か選択肢をくれっ!
それとも、これは誰かの仕組んだご褒美イベントなのかっ!? 不正解はないタイプなのか!?
「えっとーあのー…そ、その…エッチしてたら…」
取りあえず何か応えないと怪しまれると思った俺は、シドロモドロになりながらも言葉を選びながら説明を試みる。
何が知りたいんだ? ゴムの使用有無か? 体位か? 精子の量か? それとも出した場所か? 外か中かの違いか? プレイの内容か?
「あっ…救急隊員から話は聞いてます……ので、その30分前とか特に異常はなかったかとか」
ですよねー。本番ドピュッで、心臓麻痺になったとか、そんな曖昧な情報聞きたかないですよねー。
ははは。いや、なーんだ。てっきり、その時の体位とか知りたいのかと思っちゃったよ。ほら、圧迫してたりとかだとちょっとは関係するかなーって。
まあ、圧迫されていたのは、むしろこっちの方で、秋彦はその時は上だったんだけどね。
そうだよねーって……それならそれで……早く言えっ! 真剣に考えちゃったぞ!! 滅茶苦茶恥ずかしいじゃないか!!!
「あ…いえ、特に異常はなかったです」
「そうですか。胸の痛みとかも、訴えてなかったですか?」
「はい。無かったです」
「呼吸が苦しいとか。そう言ったことも無かったですか?」
「無いです」
むしろ苦しかったのはこっちの方だ。上に乗られた挙句、散々奥までズッコンバッコン突っ込まれたんだからな。
「では、薬は何か服用されていたようでしたか?」
「いえ。それも無かったと思います」
大体、秋彦とは、今日初めて会ったのだし、そもそも病気持ちかだったなんて知るわけもない。
まあ少なくとも、夕方から夜までの間に薬を飲んでいる感じはなかった。
ただ浩太の時の状況も含めて考えると、十中八九、原因は俺のせいであって恐らく病気とかじゃないんだろうけどな。
「そうですか…」
そう言ったきり、北山さんは考え込むように黙ってしまう。
実際調べたところで、原因は分からないだろうな。でも、もし分かっちゃったら、俺、警察に逮捕されるのかな。
いやでも元はと言えば、秋彦が強姦紛いな事をしてきたからいけないわけであって、ある意味、正当防衛と言えなくもないよな。
どちらにせよ殺意は無かったわけだし、散々やめてくれって言ったし、俺には全く非はない…よしっ大丈夫だ。問題ないっ!
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