【R18】美少女転生

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プロローグ 「自助努力には限界があります」

第十六話 「似た者同士」

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 店内に入ると、俺はそのまま秋彦あきひこと同じフロアに向かう。奴は、最後まで勘弁してくれと嫌がっていたが、そんなの知った事か。
 俺が男だったころは、よく訪れていたフロアだ。まあ、あれだな要するに男向けのエロ本がたくさんあるところな。
 到着して、早速めぼしいものがないか、一人でふらふらと商品を見ていると、すれ違う男性客から白い目で見られる。
 違和感を感じて周りを見ると、場合によっては、コソコソと逃げるように姿を隠す男までいる始末だ。

 ――なんだ…この刺すような視線と、挙動不審の男どもは…。

 女になってからは好意の目でしか見られたことがなかったため、ここに来て妙に居心地の悪さを感じる。
 そして、しばらくそんな感じが続いてからふと思い至る。

 ――俺、無自覚に営業妨害してたな。

 もし自分が男でエロ本売り場を物色しているところに、横に超絶美少女がやってきたらどう思うかと。
 うん。はっきり言って気まずいね。昔の俺なら舌打ちするまである。

 だが俺もエロ漫画が買いたい。そして楽しく物色がしたい。できれば、童顔の幼い感じの女の子がぐちゃぐちゃにやられちゃうやつが希望だ。
 なので、俺は少し距離を置いて歩いていた秋彦あきひこのすぐ隣にトテテと移動して、その腕をギュッと掴む。

「えっ、あ、ひ、ひなさん? ど、どうしました?」
「良かったら、一緒に見て周りませんか?」
「う、うぇ、マジすか? 俺、落ち着いて選べなさそうなんっすけど…」
「淫プロの仲じゃないですか…そんなの、今さらだと思いますけど…」
「あぁー…まあ、そうっすね」

 俺たちが二人で商品を見るようになると、男性客の視線が今度は秋彦あきひこへと向けられるようになる。
 基本的に、最初は驚愕きょうがく、次に軽蔑けいべつまたは嫌悪、そして最後に怒りの順で変遷へんせんしていく。あはは。あぁこれ面白いわ。
 何であんな可愛い女の子が? から始まって、最後はリア充爆発しろって雰囲気が良く出ていていいね。
 そんなわけで、秋彦あきひこも非常に居心地が悪そうにしている。まあ、せいぜい頑張って俺の盾になってくれたまえ。
 うんうん。シールドがガリガリ削られている感じだね。ナイスディフェンス!

「あ、これなんか女の子、可愛い感じだし、面白そうですよ」

 俺は一冊のエロ同人誌を取って秋彦あきひこに渡す。某、漫画の祭典にも常連でブースを出展している、大手の同人サークルのものだ。
 このサークルのものは、確か俺も何冊か持っていたはずだ。

「あっ! これ俺、前回出展の時に買いそびれてたやつっすよ!」
「え、ほんとですか? おー良かったですねっ!」

 その表紙の女の子は、ワンピースを胸が露出されるまでめくり上げられていて、パンツの隙間から極太バイブを突っ込まれているという激しい構図で、童顔なのにアヘ顔で、その印象から受ける背徳感が半端ない。
 そう言えば、ツーサイドアップで、今日の俺の髪型と一緒だな。

 秋彦あきひこは、繁々しげしげと表紙を見てから、
「なんだか…ひなさんに似てますね…この娘…」と、ポツリとそんな事を言ってから、しまったという顔をする。

 エロ漫画の女の子に似ているなんて言われたら、普通の女の子は嫌な感じがするのかね。
 俺的には、表紙の女の子はすごく可愛いので、似ていると言われても逆に嬉しいけどな。

 そして、シドロモドロになりながら、取り繕うように、
「あ、いえ。べ、別に変な意味とかじゃないっすからねっ!」と、ややツンデレ気味に言い訳を始める。

 …どうてもいいけど、お前いろんな属性持ってるな。

「そうですか? 私は別に変な意味でも全然気にしませんよー」

 それに対して俺が、にっこりとほほ笑んで思わせぶりな返答をしてやると、秋彦あきひこは今度は耳まで真っ赤にしながらせわしなく目を泳がせ始める。
 こいつの反応って一々が面白いんだよな。だから、なんかつい揶揄からかいたくなっちゃうんだよ。

 俺たちはその後も店内を物色しながら、一通り見て周り、興味が湧いたものを手にとっては確認していく。
 そしてお互いに、これは新人さんかなとか、このシリーズは二次創作が増えたよねとか、他愛もない会話をしながら数冊を選ぶ。
 会計の際、レジのにーちゃんは俺が卑猥ひわいな漫画を購入しても、眉一つ動かさずに対応してくれた。
 流石はプロだ。徹底している。どこかのおデブちゃんとは違うな。

「読み終わったら、今度お互いに交換しましょうよ」
 と、俺は店を出てからホクホク顔で秋彦あきひこに提案する。

「え、ああ、いいっすよー。俺もひなさんの買ってたやつ気になったし……この後、2店目行きますか?」
「うーん。どちらかというと、買ったやつ早く読みたいですかね」
「そうっすよねー…」

 こちらの意見に同意しながらも、秋彦あきひこの様子が暗かったので思わずコテンと首を傾げる。
 腹でも空いたのか? 俺はさっきから、空腹でどうしたものかと悩んでいるが。まあ、なんだかこの空腹感にも慣れてきちゃったし、何とかなるかなぁ。
 俺が不思議そうに見ていると、その視線に気が付いたのか、秋彦あきひこは苦笑いをしながら、もにょもにょと話し出す。

「いや、ひなさんと買い物できて、俺、楽しかったんすよ…」

 そうか。もしかしたら今のお前も、前の俺と同じような境遇で、女の子と一緒に買い物なんて、きっと今まで経験もなかったのだろう。
 しかも、買ったのが自分の趣味のエロ漫画だしな。そりゃ楽しいわなと、心の中でうんうんと頷く。

「だから、もう帰っちゃうのかって思ったら、ちょっとヘコんだっていうか…」
 と、秋彦あきひこは自らの胸の内を吐露とろすると軽くため息をつく。

秋彦あきひこさんの家って、ここから近いんですか?」
「え? あ、ああ。総武線で二駅っすけど」

 突然、名前で呼ばれた秋彦あきひこは、一瞬戸惑ったような表情をしてから応える。

「それじゃあ、これから行きましょうよ? 良かったら家で一緒に読みましょ」

 俺はそんな秋彦あきひこに、まるで悪戯いたずらを仕掛ける子供のように、含み笑いをしながら提案した。
 部屋が汚くても、エロ本が床に散乱してても俺は別に気にならないぞ。自宅が既にその状況だからな。
 まずは奴の家に乗り込んでやってみてやるか。
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