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プロローグ 「自助努力には限界があります」
第十話 「後始末」
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人が一人死んだ。その事実に心が激しく動揺する反面、努めて冷静であろうとする自分がいることに気が付いて少し驚く。
事実、取り乱したところで死んだ浩太が生き返るわけでもないし、案外追いつめられると人はこういう反応を示すのかもしれない。
そして俺は色気も何もあったもんじゃないなと苦笑しつつも、まずは布団のシーツを捲りながら行方不明になっている下着を探す作業を始める。
なぜなら別の何かをして一度気持ちをリセットした方が、より心が落ち着くと思ったからだ。
それで下着を探しながらベッドを見て思ったんだが、真ん中がオネショをしたみたいにしっとりと湿っていることに気が付く。
まあ、これは昨夜浩太に大量に噴かされた潮の痕跡であって、原因は決して俺ではなく……わ、悪いのは浩太なんだからねっ!
見つけた下着を穿きながら、肌のベタつきが若干気になる。昨日の夜は、かなり激しかったからなぁ。
前の俺なら日常的に汗を掻いていたので気にもならなかったが、体が変わると気持ちも色々変わるね。デブで単に体温が高かったんだろうって? 失敬な新陳代謝が良かったと言ってくれ。
それで何だかんだで途中まで何とかしたい気持ちはあったが、この状況下でシャワーを貸してくれとも言いにくいので最終的には仕方がないと割り切る。
「結衣ちゃん、着替え終わった?」
「あー…はい」
こちらを振り向く前に声をかけてくれたということは、一応着替え中であることに気を遣ってくれているのだろう。
まあ、もう最後までやっちゃった仲だし、ぶっちゃけそんなに気を遣わなくてもいいんだけどね。
悠翔は髪の毛を整えているこちらの様子を横目で確認しつつ椅子から立ち上がると、プリンタから出力の終わっていた地図をとって渡してくれる。
それにしても、ここが悠翔の自宅だったのは不幸中の幸いだった。
非常事態にも関わらずいきなり途方に暮れる事も無かったし、パソコンも自由に使うことができたため、こうやって最寄りの駅までの地図をプリントアウトしてもらうこともできた。
地図を受け取りつつ俺はベッドの方に視線を向け、
「有難うございます…あの、これって…」と、潮やら何やらで濡れまくりのシーツを指さす。
昨日悠翔はソファで休んだようだから、この状況に気が付いていないかもしれないし念のため言っておこう。
しかしこれって見た目からして、明らかにやんちゃが過ぎちゃいましたって感じが満載だよな。
そもそも幼さの残る未成年で且つ、男を全く知らないであろう純潔の乙女に対して、ここまで激しくすることはないだろうにと元同性ながらもちょっと引いてしまう。若さゆえの過ちというやつか。
もし俺が普通の女の子だったら、確実に人生のワースト記録ナンバー1の惨状だぞこれは…まあ、元男の俺的にシチュエーションとしては嫌いじゃないけどね。
すると悠翔は一瞬苦い顔をしてから、
「結構、濡れちゃってるね。すぐに取り替えておくよ」と、さらりと告げる。
まあ、普段の状況であればその対応は限りなく正しいのだが、死人が出ている今の状況だとそれって警察が来た時に証拠隠滅とかを疑われないか?
しっかり確認をしたわけではないが、シーツに処女喪失時の血痕がついてたりしたら――。
取り替えたシーツが回収されて血液反応検査をされた場合を仮定すると、それはそれで何かを隠したのではと誤解を生むだろう。
だからつい俺は気になって、余計な口出しをしてしまう。
「あの、あんまり現場は触らない方が…」
「……でも…結衣ちゃんは、嫌じゃない?」
「えっ?」
何が嫌なんだろうかと一瞬考えてしまうが、確かに自分の破瓜の血痕やら潮の痕跡が通報で駆け付けた男の警察官に調べられると思うと――。
なるほど。生理的には少しだけ嫌悪感を感じる。きっと悠翔なりに気遣ってくれたのだろうと思い至る。
だから俺は仕方がないなという表情で、
「んーまぁ確かに……でも、大丈夫ですよ」と、苦笑しながらも大人の対応を見せてやる。見た目は未成年だけどな。
しかしこの場で性行為があったと警察が知れば、捜査の手は俺の所まで及ぶかもしれないなと思う。
殺害動機としても特に三角関係のもつれは十分に考えられるのだから、何らかの対策は考えておく方が無難だろう。
「ゴメンね…結衣ちゃん」
悠翔が本当に申し訳なさそうに謝ってくる。それは色々なものに対する謝罪なのかもしれない。
だが、死人に鞭打つつもりもないが、むしろ謝らなきゃならないのは浩太の方だろう。調子に乗って中出しした挙句に、勝手に死んだりするから残された人間がその後始末で大変だ。
まあ、死因がわからない以上は本人が死んじゃってるわけだし、腹上死じゃない限り浩太が一番の被害者であるとも言えるんだけどね。
その後は悠翔とお互いのメールアドレスを交換して、何かあった時だけ連絡が取れるようにする。
そして別れの挨拶もそこそこに、俺はそのまま自宅へと帰途に就いた。
帰り道悠翔からもらった諭吉さん二名をしまう場所がなかったので、途中で安物のポーチとトートバッグだけは購入した。
女ものの服って、ポケットが少なくてホント不便だな。
そしてそれ以外の事は、気持ちが動揺していたこともあってほとんど何も覚えていない。
懐かしの我が家、もといゴミ屋敷に帰還して俺は頭の中の整理を始める。
まず、空腹感はいつまで続いていたか――。
それは、昨日の夜までだ。今も空腹感は特に感じていない。
そして、空腹感の解消に気が付いたのは今朝であり、その間になにがあったかと言えば、それは言うまでもなくエッチな行為だ。
つまり、エッチな行為をすれば、永遠に続くノドの渇きと空腹感という苦痛からは解放されるということだ。
そしてもし、この仮説が正しいのならなんて淫乱な体なんだとガックリくる。
そして、次に気になったのが浩太の死因――。
浩太は悠翔と違って、本番行為でゴムを使わなかった。腹上死や持病や何かでなければ、俺が原因で浩太が死んだ可能性もある。
エッチな行為自体は渇きや空腹感への対処としての実験ができそうだが、ゴム無し本番行為の検証は正直言ってあまり試したくない。
もしヤッた相手が死ぬようなことがあれば単純に殺人だし、今回みたいに確実に警察沙汰になるしな。
事実、取り乱したところで死んだ浩太が生き返るわけでもないし、案外追いつめられると人はこういう反応を示すのかもしれない。
そして俺は色気も何もあったもんじゃないなと苦笑しつつも、まずは布団のシーツを捲りながら行方不明になっている下着を探す作業を始める。
なぜなら別の何かをして一度気持ちをリセットした方が、より心が落ち着くと思ったからだ。
それで下着を探しながらベッドを見て思ったんだが、真ん中がオネショをしたみたいにしっとりと湿っていることに気が付く。
まあ、これは昨夜浩太に大量に噴かされた潮の痕跡であって、原因は決して俺ではなく……わ、悪いのは浩太なんだからねっ!
見つけた下着を穿きながら、肌のベタつきが若干気になる。昨日の夜は、かなり激しかったからなぁ。
前の俺なら日常的に汗を掻いていたので気にもならなかったが、体が変わると気持ちも色々変わるね。デブで単に体温が高かったんだろうって? 失敬な新陳代謝が良かったと言ってくれ。
それで何だかんだで途中まで何とかしたい気持ちはあったが、この状況下でシャワーを貸してくれとも言いにくいので最終的には仕方がないと割り切る。
「結衣ちゃん、着替え終わった?」
「あー…はい」
こちらを振り向く前に声をかけてくれたということは、一応着替え中であることに気を遣ってくれているのだろう。
まあ、もう最後までやっちゃった仲だし、ぶっちゃけそんなに気を遣わなくてもいいんだけどね。
悠翔は髪の毛を整えているこちらの様子を横目で確認しつつ椅子から立ち上がると、プリンタから出力の終わっていた地図をとって渡してくれる。
それにしても、ここが悠翔の自宅だったのは不幸中の幸いだった。
非常事態にも関わらずいきなり途方に暮れる事も無かったし、パソコンも自由に使うことができたため、こうやって最寄りの駅までの地図をプリントアウトしてもらうこともできた。
地図を受け取りつつ俺はベッドの方に視線を向け、
「有難うございます…あの、これって…」と、潮やら何やらで濡れまくりのシーツを指さす。
昨日悠翔はソファで休んだようだから、この状況に気が付いていないかもしれないし念のため言っておこう。
しかしこれって見た目からして、明らかにやんちゃが過ぎちゃいましたって感じが満載だよな。
そもそも幼さの残る未成年で且つ、男を全く知らないであろう純潔の乙女に対して、ここまで激しくすることはないだろうにと元同性ながらもちょっと引いてしまう。若さゆえの過ちというやつか。
もし俺が普通の女の子だったら、確実に人生のワースト記録ナンバー1の惨状だぞこれは…まあ、元男の俺的にシチュエーションとしては嫌いじゃないけどね。
すると悠翔は一瞬苦い顔をしてから、
「結構、濡れちゃってるね。すぐに取り替えておくよ」と、さらりと告げる。
まあ、普段の状況であればその対応は限りなく正しいのだが、死人が出ている今の状況だとそれって警察が来た時に証拠隠滅とかを疑われないか?
しっかり確認をしたわけではないが、シーツに処女喪失時の血痕がついてたりしたら――。
取り替えたシーツが回収されて血液反応検査をされた場合を仮定すると、それはそれで何かを隠したのではと誤解を生むだろう。
だからつい俺は気になって、余計な口出しをしてしまう。
「あの、あんまり現場は触らない方が…」
「……でも…結衣ちゃんは、嫌じゃない?」
「えっ?」
何が嫌なんだろうかと一瞬考えてしまうが、確かに自分の破瓜の血痕やら潮の痕跡が通報で駆け付けた男の警察官に調べられると思うと――。
なるほど。生理的には少しだけ嫌悪感を感じる。きっと悠翔なりに気遣ってくれたのだろうと思い至る。
だから俺は仕方がないなという表情で、
「んーまぁ確かに……でも、大丈夫ですよ」と、苦笑しながらも大人の対応を見せてやる。見た目は未成年だけどな。
しかしこの場で性行為があったと警察が知れば、捜査の手は俺の所まで及ぶかもしれないなと思う。
殺害動機としても特に三角関係のもつれは十分に考えられるのだから、何らかの対策は考えておく方が無難だろう。
「ゴメンね…結衣ちゃん」
悠翔が本当に申し訳なさそうに謝ってくる。それは色々なものに対する謝罪なのかもしれない。
だが、死人に鞭打つつもりもないが、むしろ謝らなきゃならないのは浩太の方だろう。調子に乗って中出しした挙句に、勝手に死んだりするから残された人間がその後始末で大変だ。
まあ、死因がわからない以上は本人が死んじゃってるわけだし、腹上死じゃない限り浩太が一番の被害者であるとも言えるんだけどね。
その後は悠翔とお互いのメールアドレスを交換して、何かあった時だけ連絡が取れるようにする。
そして別れの挨拶もそこそこに、俺はそのまま自宅へと帰途に就いた。
帰り道悠翔からもらった諭吉さん二名をしまう場所がなかったので、途中で安物のポーチとトートバッグだけは購入した。
女ものの服って、ポケットが少なくてホント不便だな。
そしてそれ以外の事は、気持ちが動揺していたこともあってほとんど何も覚えていない。
懐かしの我が家、もといゴミ屋敷に帰還して俺は頭の中の整理を始める。
まず、空腹感はいつまで続いていたか――。
それは、昨日の夜までだ。今も空腹感は特に感じていない。
そして、空腹感の解消に気が付いたのは今朝であり、その間になにがあったかと言えば、それは言うまでもなくエッチな行為だ。
つまり、エッチな行為をすれば、永遠に続くノドの渇きと空腹感という苦痛からは解放されるということだ。
そしてもし、この仮説が正しいのならなんて淫乱な体なんだとガックリくる。
そして、次に気になったのが浩太の死因――。
浩太は悠翔と違って、本番行為でゴムを使わなかった。腹上死や持病や何かでなければ、俺が原因で浩太が死んだ可能性もある。
エッチな行為自体は渇きや空腹感への対処としての実験ができそうだが、ゴム無し本番行為の検証は正直言ってあまり試したくない。
もしヤッた相手が死ぬようなことがあれば単純に殺人だし、今回みたいに確実に警察沙汰になるしな。
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